オトシゴロなオトシドコロとは−
大人になると、きれいさっぱり解決できる悩みってほとんどない。だからこそ、納得できる「落としどころ」を見つけるのが、わたしたちらしい悩みとの向き合い方。人生経験豊富な先輩世代と同じ悩みを持つ同世代、2人のアドバイザーから、同じお悩みにちょうどいい落としどころを提案してもらいます。
[お悩み] 何でも先延ばしにしてしまう癖、どうしたら直る?
なんでも先延ばしにする癖があります。引っ越し当日まで梱包が終わらず追加料金を払ったり、結婚式の招待状を返してないまま期限がすぎてしまったり。つい先日も飲み会のお店をギリギリまで予約しておらずどこも満席、結局キャパが広いだけの居酒屋に行きました。周りの人にも迷惑がかかるので、直したほうがいいとわかっていますが、どうしたら直せるのか……。もう直すことはあきらめて、受け入れたほうがいいのかとも思いますが、その場合、日常生活の中で気をつけたほうがいいことがあれば、教えてください。(29歳 会社員)
[先輩世代・精神科医Tomyさんの答え]受け取ったその日に手をつけるのが、一番負荷がかからない!
ー先延ばし癖に密かに悩んでいる人は、結構多い気がします。
まず考えなければいけないのが、ADHDなどの発達障害が原因の可能性はないかということ。ADHDなどの発達障害を抱えている人の中には、先延ばしの特性を持つケースもあるんです。例えば、支払いなどの期限を毎回守れないとか、目の前のことばかりが気になってやるべきことを後回しにしてしまうとか。本人も家族もこれまで気づかずに過ごしてきたということもあります。生活に支障をきたすほどであれば、一度医師の診断をあおいでもいいかもしれません。
ー原因を知らずに悩んでいる人もいそうですね。
そうですね。気になる人は、ぜひ専門機関に相談してみてください。今回は、ADHDなどの発達障害がないという前提でお悩みに答えると、先延ばし癖がある人は、期限を聞かない方がいいですよ!
ー期限を聞かない、とは?
期限が来月だと聞くと、来月にやる仕事だと思ってしまうんですね。締切の少し前に動けばいいと。そうではなくて、渡された瞬間からその仕事に手をつける。結婚式の招待状なんかも、期限を見ないで受け取った日に返信すれば、何の問題もないですよね。
ー確かにそうですが、なかなかハードルが高そう……そもそも、先延ばしにするとどんな問題があるのでしょうか?
今回の相談者のように、余計なお金がかかったり、周りに迷惑をかけたりすることがいちばんの問題。それから無駄にエネルギーを使うこともよくないですよね。仕事の説明を受けて、まだ記憶が鮮明なうちに始めれば労力はかからないけれど、一度寝かせると思い出すところから始めなければいけない。何でもそうだけど、この最初のエンジンをかける部分が、一番負荷が大きいんですよ。車でもパソコンでも、起動する時が大変でしょ。作業も非効率的になるので、さっさとやっちゃう方がいいんです!
ーなるほど! 私も今日から、仕事はもらったその日に終わらせます!
ただ気をつけてほしいのは、無理をしすぎて体調を崩すこと。早く終わらせたいからと、どの仕事も今日中、明日までなんて考えていたら、集中しすぎて自分を追い込んだり、息つく暇がなくなったりしてしまう。私たち精神科医は、患者様から「すごく元気で、何もかもやりたくて仕方ない」という言葉が出るとかえって心配します。ちょっとテンションが上がりすぎていないかな、この後ストンと落ちちゃうんじゃないかなって。
ーでは、ほどよいペースとは一体……?
例えば、締切までに30日間あるとしたら、今日の段階で、3分の1も終われば十分な余裕がありますよね。その日にやり切る必要はありません。どうしてもやる気が起きなければ、手をつけてみるだけでもいいかもしれない。とにかく、仕事を受け取ったときに始める。これだけ守れば、かなり変わってくるはずです。
ー先延ばしも、頑張りすぎもよくないってことなんですね。
一番いいのは、最初に3分の1ぐらいを進めて、その後は少しずつ毎日続けることです。先ほどお話したように、完全に寝かせてしまうと、またエンジンをかけるエネルギーが必要になります。毎日同じ分量を進める必要はないので、ほかの仕事や自分のコンディションと相談しながら進めるのがいいと思います。止めずに毎日続けることが、負荷が最も少なくおすすめです。
精神科医Tomyさんのオトシドコロは?
仕事でもプライベートでも、やるべきことを寝かせると後から余計な負荷がかかる。受け取ったその日にまずは手をつけましょう。改ページ 「同世代・ものすごい愛の答えは? 」