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日本に住んでいると、深刻な干ばつを経験することはほとんどないかもしれません。しかし、世界では多くの人が干ばつに苦しんでおり、日本でも近年、渇水が頻発しているとされています。干ばつの原因と私たちの暮らしへの影響、どのような対策があるのか、詳しく見ていきましょう。

干ばつとは?

画像: 干ばつとは?

干ばつとは、数ヶ月や数年などの長期間にわたって雨が降らず、水不足の状況になることです。干ばつが起こると農作物が育たなくなり、人々の暮らしに深刻な影響が及びます。また、山火事や砂漠化の原因になることがあります。

干ばつの原因

干ばつの原因は、大きく分けて気候的な要因と人為的な要因の2つがあります。気候的な要因には地球規模での気候変動など、人為的な要因には水の使用量の増加などが挙げられます。

地球温暖化による気候変動

画像: iStock.com/lamyai

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地球温暖化によって世界の平均気温が上がると、従来の気候では起こらなかった異常気象が起こる可能性があります。降水のパターンが変化するため、豪雨や干ばつがこれまでとは異なる地域で起こるとされています。

人口増加による水使用量の増加

画像: 人口増加による水使用量の増加

人口が増え、生態系のバランスを超えて水を使用すると、水資源が枯渇し、干ばつが起きることがあります。日本では人口の減少が問題になっていますが、発展途上国ではこの先、人口の増加が予想されており、干ばつの発生が懸念されています。

地形や地理的要因による降水量の少なさ

画像: 地形や地理的要因による降水量の少なさ

亜熱帯地域などでは、地理的な条件によって降水量が少なく、干ばつや砂漠化が起きるケースがあります。赤道を中心とした熱帯地域では雨がよく降りますが、雨を降らせた後の乾燥した空気は亜熱帯地域に流れます。このため、亜熱帯地域には雨が少なく、乾燥しやすい特性があります。サハラ砂漠やアラビア砂漠、オーストラリア砂漠などは亜熱帯地域の砂漠です。

干ばつが進むとどうなる? 環境や社会への影響

干ばつが起きると、私たちの暮らしに深刻な影響が出ます。経済・環境・社会の3つの面から干ばつの影響を見ていきましょう。

経済面への影響

画像: 経済面への影響

干ばつになって農作物が育たなくなると、経済面では次のような影響が出ます。

・農作物の収穫減少

干ばつによって農作物が育つのに必要な水が不足すると、生育不良になって収穫量が減少し、農作物の価格が高騰して経済活動に打撃を与えます。国連砂漠化対処条約(UNCCD)COP16に合わせて発表された報告書報告書「干ばつの経済学(Economics of droughts)」によると、2000年から2019年にかけて、干ばつによる世界経済の損失は年間3070億ドル(約47兆5850億円)と推計されています。

・水運の利便性低下

河川では船舶による貨物の輸送が行われますが、干ばつによって水位が下がると、船舶が航行しにくくなり、貨物の輸送が困難になります。2024年には米国のミシシッピ川の水位が下がり、トウモロコシやコーヒー豆などの農作物の水運に深刻な打撃があったと報じられています。

・水力発電量の低下

水力発電とは、水が高いところから低いところへ落ちる力を利用して電気をつくる方法です。河川の水を使って発電するため、干ばつによって水量が減ると、水力発電による発電量も低下する可能性があります。南米のブラジルやエクアドルでは、干ばつによって水力発電用のダムが運転を停止したため、水力発電量が減少したとされています。

参考:JIRCASウェブサイト 「干ばつの経済学

環境面への影響

画像: iStock.com/Boonyachoat

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干ばつが進行すると、さらなる自然災害を引き起こしたり、長期にわたる干ばつによって砂漠化が進んだりすることがわかっています。

・自然災害の発生

干ばつによって土壌の水分が蒸発して乾燥が進むと、森林火災が発生しやすくなり、被害も深刻化する傾向があります。2025年1月に米国カリフォルニア州で発生した大規模な火災では、米国海洋大気局が、要因の1つに干ばつの長期化があると述べました。

・砂漠化の進行

干ばつと聞いて、砂漠化を思い浮かべる人もいるでしょう。砂漠化が起こる理由には、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。砂漠化の原因や対策については世界中で研究が行われていますが、要因の1つに長期の干ばつがあると考えられています。

・生態系への影響

もともと森林や草原だった場所が干ばつになると、その地域の生態系へも影響が出ます。植物が育たなくなることで、それを住処やエサとしていた動物も生きられなくなるからです。生態系へ影響が及ぶことで、干ばつがさらに深刻化する負のループに陥ってしまう可能性もあります。

社会面への影響

干ばつがもたらす社会への影響は、貧困や飢餓、紛争など極めて深刻なものです。

・貧困や飢餓の発生

干ばつによって農作物が育たなくなると、農業を生業としている人々は収入を得られなくなり、貧困に陥る可能性があります。もともと暮らしていた土地が干ばつに見舞われ、別の土地を探して移動を余儀なくされるケースもあるでしょう。貧困が深刻化し、飢餓や栄養不足のリスクが高まります。

・水不足による紛争

水資源は人々の暮らしに欠かせないものです。そのため、干ばつになると貴重な水資源をめぐって争いが起きることがあります。日本でも大正時代にかんがいや排水工事が進むまで、水をめぐる「水争い」が起きていたという記録があります。

日本の干ばつの現状

画像: 日本の干ばつの現状

国土交通省によると、2023年は例年と比べて秋の降水量が少なく、全国各地で渇水が起きたということです。特に、西日本の太平洋側では、秋としての小雨・多照が1946年以降の観測史上第1位でした。

関東北部や北陸地方、西日本などではダムの貯水率が低下しました。琵琶湖では、18年ぶりに水位が-75cm以下となり、滋賀県長浜市にある「奥の州」が陸続きになりました。

そのため、国土交通省は、東北から沖縄まで渇水対策会議などを設置し、渇水対策本部を開設するなどして早期の渇水対策に努めました。

世界の干ばつの現状

画像: 世界の干ばつの現状

世界でもさまざまな地域で深刻な干ばつが起きています。干ばつに国境はないため、多くの人々が干ばつによる打撃を受けています。

アフリカ

アフリカ南部では、エルニーニョ現象によって史上最悪の規模の干ばつが起こりました。農作物が不作になったことで、約2700万人が深刻な飢餓に陥っているとされています。2024年には、レソト、マラウイ、ナミビア、ザンビア、ジンバブエの5ヶ国が緊急事態を宣言しました。

アメリカ

カリフォルニア州などがある米国の西海岸側はもともと、温暖で雨が少ない乾燥した気候です。しかし、近年は、深刻な干ばつでトウモロコシや大豆、米などの農業生産に影響が出ています。雨が少ないことから飲用水の調達にも苦労しており、2023年には廃水を飲用水に変えることを認める法案が承認されました。

中東地域

国連によると、中東地域では気候変動による干ばつや紛争の影響によって、飢餓などの食糧危機が拡大しているとされています。また、こうした危機的な状況にある国々は年々増加の傾向にあるとしています。

中国

2024年は、世界規模でのエルニーニョ現象や地球温暖化が進行したことによって、中国では豪雨による洪水などの被害が発生しました。その一方で、4〜6月にかけては、例年と比べて干ばつが多く発生したとされています。

ヨーロッパ

欧州委員会は2022年、記録的な高温が続く中で、欧州の約半分の地域が干ばつに見舞われているとして「少なくとも過去500年で最悪の状況」と表明しました。農作物の不作だけでなく、発電所にも影響が及び、オランダでは燃料輸送に支障があったとされています。

日本で行われている干ばつ対策

画像: 日本で行われている干ばつ対策

水不足によって被害が生まれないように、日本では次のような対策が行われています。

水源確保・節水

日本は水道水の約76%を河川や湖などから調達しています。世界的に見ると、日本は水資源に恵まれていますが、河川の流量は季節によって変動します。安定的に水を使うために、ダムなどのさまざまな水資源開発施設を設けています。

また、水を使う側でも節水の意識を向上させることが大切です。そのため、1年で水の使用量がもっとも増える8月1日を「水の日」、8月1~7日を「水の週間」として、水の大切さを考えるためのイベントなどを行っています。

雨水・再生水の利用

日本では1950年代から雨水の利用が進められてきました。1978年に福岡県で深刻な渇水が起こったことをきっかけに、雨水をトイレ用水や散水などに活用する取組みが全国へ広がりました。

日本政府の干ばつ地域への支援

日本は砂漠化対処条約に署名しており、砂漠化の影響を受ける途上国の支援に取り組んでいます。前述のアフリカの深刻な干ばつで5ヶ国が非常事態を宣言したことを受けて、日本政府は2024年、250万ドル超の緊急支援を行いました。

世界で実施されている干ばつの解決策

世界でも、その土地の特性や状況に応じて、さまざまな干ばつ対策が行われています。

灌漑(かんがい)農業の実施

画像: 灌漑(かんがい)農業の実施

かんがい農業とは、水路やため池などを作って水を調達し、乾燥した地域で農業を行ったり、水不足のときでも降雨に頼らずに農業を行うことです。日本を含む世界では古来よりかんがい農業が行われてきました。国際かんがい排水委員会は、こうしたかんがいの歴史や発展を後世に伝えるため、「世界かんがい施設遺産」を登録しています。2024年10月時点で、世界で20ヶ国177施設が登録されています。

人工的に雨を降らせる

人工の技術によって意図的に雨を降らせることを人工降雨と呼びます。人工降雨の技術では、航空機やミサイルを使って、水蒸気と結びつきやすい性質を持つ物質を雲に散布して雨雲を育てることがあります。中国はこの技術を応用して、2008年の北京オリンピックの開会式での降雨を防いだとされています。

干ばつ・砂漠化対処条約

砂漠化対処条約とは、深刻な干ばつや砂漠化に直面するアフリカの国々などが、対策を実施できるように行動計画を作成・実現するための国際条約です。先進国が支援することも規定されています。日本は1994年に署名し、2024年12月時点で、196の国・地域、欧州委員会が締約しています。

温室効果ガスの削減

画像: 温室効果ガスの削減

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスによる地球温暖化は、気候変動をもたらし干ばつを進めると考えられています。そのため、温室効果ガスの削減に取り組むことは、間接的な干ばつ対策となります。世界では、今世紀末までに世界の平均気温の上昇をできる限り1.5℃以内に抑える、パリ協定の「1.5℃」目標を目指した取組みが進められています。

地球温暖化の原因となる温室効果ガスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

森林の保全と回復

画像: iStock.com/weerapatkiatdumrong

iStock.com/weerapatkiatdumrong

森林を保全して豊かな生態系を育むことで、地中の水分が保たれ、干ばつを抑制する効果があると考えられています。森林の保全は、干ばつの影響を緩和する上で重要な役割を果たします。また、干ばつによって森林火災が引き起こされた場合、森林を再び回復させることも生態系を維持するために大切です。

森林火災のほかにも、人間が原因となって森林破壊が進むことがあります。森林破壊の原因についてはこちらの記事をご覧ください。

干ばつ対策として私たちができること

画像: 干ばつ対策として私たちができること

干ばつ対策として個人ができることには限りがありますが、まずは節水など水資源を大切にすることが挙げられます。水道の蛇口を開けっぱなしにしない、雨水を貯めて庭木に散水するなど、水を無駄にしないことが大切です。

また、「水の日」や「水の週間」などには全国各地で水資源に関するイベントやワークショップなどが開催されることから、これらに参加することで水の大切さを学ぶことができるでしょう。

できることから干ばつ対策に取り組もう

干ばつや砂漠化は世界的な問題であり、日本においても、その影響は深刻です。近年、渇水が頻発しており、水資源の保全と対策は重要な課題となっています。地球温暖化が干ばつを引き起こすことから、CO2などの温室効果ガスの削減に取り組むことも、有効な干ばつ対策だといえるでしょう。省エネや、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入、自動車ではなく徒歩や自転車を利用するなど、できることから取り組んでみましょう。

画像: 干ばつの原因は地球温暖化? 世界と日本の現状や影響、そして私たちにできること

さやぱん

干ばつが私たちの身近な問題であることに、改めて気づかされました。まずは日頃できることから始めていきたいですね!

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