※この記事は2023年4月13日に公開した内容をアップデートしています。
化石燃料とは石油や石炭、天然ガスなどの地下にある燃料資源
そもそも「化石燃料」とは石油や石炭、天然ガスといった地下に埋まっている燃料資源のことを指します。古代に生息していた動物や植物の死骸などが長い時間をかけて変化したものです。
現在、化石燃料は、さまざまな面から私たちの暮らしを支えています。実は、火力発電の燃料、自動車のガソリン、家庭で使われる都市ガスなども化石燃料に由来するものです。私たちの身近なところで幅広く利用されている燃料なのです。
化石燃料の4つの種類
化石燃料には、大きく分けて4つの種類があります。特徴や用途がそれぞれ少しずつ異なるため、一つずつ見ていきましょう。
石油
石油の主成分は炭素と水素の化合物である炭化水素であり、液状である点が特徴です。石油は、いくつもの精製の工程を経てさまざまな用途に利用されています。身近なものとしては、自動車向けのガソリンや軽油、航空機のジェット燃料などの輸送用途のほか、ゴムやプラスチック、化学繊維などの原料にもなっています。
石炭
石炭は、地中に堆積した植物が長い年月をかけて地熱や圧力の影響を受け、炭素分の多い岩石状の物質になったものです。18世紀に起こった産業革命は、石炭を燃料とする蒸気機関によって大きく発展しました。現在、石炭は製鉄の原料(コークス)や、火力発電の燃料として使われています。
天然ガス
古代の動物や植物の死骸などが、地中の地熱や圧力を受けて気体になったものが天然ガス です。天然ガスは、メタンという燃えやすい気体を主成分として、エタン、プロパン、ブタンなどの気体を含んでいます。火力発電の燃料や産業用の燃料、家庭用の都市ガスなどとして利用されています。
メタンハイドレート
メタンハイドレートとは、天然ガスの主成分であるメタンと水分子が結びついてできた氷状の物質です。火を近づけると燃えることから「燃える氷」と呼ばれることもあります。
メタンハイドレートは、石油や石炭と比べて、燃焼する際に排出される二酸化炭素(CO2)が少ないことが特徴です。CO2は地球温暖化の原因になることから、環境にやさしい可能性のある化石燃料としても注目されています。
日本の周辺海域に大量に存在していると考えられていることもあり、現在、メタンハイドレートを利用するための技術開発が進められています。
化石燃料を使う3つのメリット
化石燃料は火力発電の燃料をはじめ、さまざまな用途に幅広く活用されています。化石燃料を利用する3つのメリットについてご紹介します。
①コストパフォーマンスが高い
化石燃料は、ほかの燃料と比べて少ない量でより多くのエネルギーを得ることができます。このように、体積や重量あたりのエネルギーの量が多いことを「エネルギー密度が高い」といいます。逆に、燃料のエネルギー密度が低いと、化石燃料と同じだけのエネルギーを取り出すために、より多くの燃料が必要となってしまいます。このように、化石燃料は比較的少ない資源から大きなエネルギーを生み出すことができるため、コストパフォーマンスが高いというメリットがあります。
②用途が幅広い
前述した通り、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料には幅広い用途があります。例えば、火力発電の燃料をはじめ、自動車や航空機の燃料、家庭で使われる都市ガス、ゴムやプラスチックの材料などです。さまざまな目的に利用できることは化石燃料の強みの一つです。
このように、化石燃料は現在、私たちの暮らしを支える重要な役割を果たしています。多くの場面で、便利で豊かな暮らしを支えている資源の一つが化石燃料なのです。
③貯蔵・輸送がしやすい
化石燃料には、液状の石油から気体の液化天然ガスまでさまざまな形状がありますが、いずれも貯蔵や輸送の方法が確立しています。石油を運ぶ石油タンカーという大型船や、球体をしたLNGタンクという巨大なタンクを見たことがある人もいるでしょう。化石燃料の多くを海外から輸入している日本では、貯蔵や輸送がしやすいという点は大きな利点になります。
こうした背景から、化石燃料は災害など非常時のエネルギー源としても利用されています。例えば、病院や公共施設などの非常用電源として使われる発電機は、重油や液化天然ガス(LNG)などを燃料として使うケースが一般的です。
化石燃料の3つの問題
さまざまなメリットをもつ化石燃料ですが、その一方で課題があることも指摘されています。ここでは、3つの課題について解説します。
①将来的に枯渇する可能性がある
先に述べた通り、化石燃料は大昔の動植物などが堆積し、長い年月をかけて変化してできたものであるため、埋蔵量には限りがあると考えられています。具体的には、2020年末時点で石油はあと54年、液化天然ガスはあと49年、石炭はあと139年で枯渇してしまうのではないかと考えられています。
さらにこの先、発展途上国などを中心に化石燃料の使用が増えるリスクも懸念されています。エネルギー資源が減れば、限りある資源をめぐって世界中で資源の獲得競争が激しくなるかもしれません。化石燃料が枯渇するリスクは、決して軽視できるものではないのです。
②地球温暖化の原因の一つと言われている
化石燃料を燃焼すると、空気中の酸素(O2)と炭素(C)が結びついてCO2が発生します。CO2は、地球温暖化の原因として考えられている温室効果ガスの一つです。そのため、化石燃料の使用によって大気中のCO2が増えると、地球温暖化を進行させてしまうことが懸念されているのです。
地球温暖化に関する国際的なレポートであるIPCC第6次評価報告書によると、温室効果ガスの排出量が非常に多い状態が続けば、2040年までに平均気温の上昇が1.5度を超えるのではないかと問題視されています。
③原油は価格が不安定になりやすい
日本は、化石燃料の多くを海外からの輸入に頼っています。特に、石油の約86%を中東地域から輸入しています。そのため、中東で紛争などが起こって政情が不安定になると、輸入価格が変動するだけでなく、供給量にも影響が及ぶのではないかと懸念されています。
ほかにも、原油価格はさまざまな要因によって左右されます。これまでも、石油危機や新興国における石油需要の増大などから原油価格の高騰が起こったことがあります。近年は原油が投機の対象とされたこともあり、価格が大幅に変動しています。
化石燃料に依存しない3つのエネルギー
いくつものメリットがある一方で課題も残されている化石燃料。昨今では、化石燃料だけに依存しないようなエネルギーのあり方が模索されています。
①再生可能エネルギー
再生可能エネルギーとは、太陽の光や風、熱といった自然界にもともと存在しているエネルギーのことです。こうしたエネルギーは、化石燃料と違ってなくなることがないため、半永久的に使い続けることができます。
再生可能エネルギーの活用方法としては、太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱などを使った発電があります。こうした発電方法では、発電する際に温室効果ガスであるCO2が発生しないというメリットもあります。
その一方で、再生可能エネルギーは化石燃料と比較するとエネルギー密度が低く、発電の効率が劣るというデメリットがあります。
以下のページでは、再生可能エネルギーのメリットや課題について、より詳しく解説していますので、興味のある方は是非チェックしてみてください。
②原子力発電
原子力発電の燃料となるウランは、化石燃料よりさらにエネルギー密度が高いという利点があります。また、使い終わった燃料を再処理すれば、再び燃料として使うこともできます。さらに、原子力発電は発電する際にCO2を発生しないという特徴もあります。
その一方で、日本は今、使用済み核燃料を再処理して、もう一度発電に利用できるようにした「MOX燃料」を海外から調達しています。MOX燃料を輸入に頼らず、国内で加工できるようにするには、いくつかの課題があります。その一つが、再処理工場を国内で運用することであり、現在、青森県の六ヶ所再処理工場で実運用に向けた国の審査や確認などが行われています。
③水素やアンモニアなどの新しい燃料
近年では、燃やしてもCO2を排出しない燃料として水素やアンモニアなども注目されています。こうした新たな燃料を火力発電などに使うことで、CO2の排出量を抑制し、温暖化対策を行うという研究や技術開発が行われているところです。
こうした新たな燃料は、貯蔵や輸送、コストなどに課題があるため、今後の実用化に向けた取り組みが期待されます。
まとめ:化石燃料は便利だが頼りすぎるのはNG
化石燃料は、私たちの暮らしを支える重要なエネルギー源です。安全に貯蔵・輸送する方法が確立されており、さまざまな用途に幅広く使用されています。一方で、資源の枯渇や発電の際に温室効果ガスであるCO2を排出するなどの課題もあるため、昨今では、それらへの対策が模索されています。大切なことは、化石燃料を含むエネルギーのメリットや課題を正しく理解し、バランスよく使うことではないでしょうか。
けいちゃん
自分たちの将来のためにも、エネルギー効率だけでなく環境への配慮なども踏まえて、いろいろなエネルギーを利用していくことが大切ですね!