「ゼロカーボンって、そもそもどういう意味なの?」
「カーボンニュートラルとの違いは?」
ここでは、こういった素朴な疑問にお答えするとともに、「ゼロカーボン」の意味と社会的な役割についてわかりやすく解説していきます。
※この記事は2022年3月29日に公開した内容をアップデートしています。
「ゼロカーボン」とは|カーボンニュートラルとの違いは?
「ゼロカーボン」とは、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすることです。
温室効果ガスとは、二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)といった、地球を温かく保つ働きを持つ気体の総称。こうした温室効果ガスは、電気を作ったり、私たちがガソリン車に乗ったりすることによって排出されます。
この温室効果ガスの排出量をできるだけ減らし、同時に森林などによる吸収量を増やすことで、排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにする。その結果、大気中の温室効果ガスをこれ以上増やさないということなのです。
また、ゼロカーボンと並んでよく聞く言葉に「カーボンニュートラル」があります。厳密な定義がされていないのが実態ですが、この2つの言葉が意味するのは、温室効果ガスの排出量と吸収量をイコールにすること。つまり、ゼロカーボンとカーボンニュートラルは同じ意味なのです。
関西電力では、温室効果ガスの排出量をできる限りゼロに近づけたいという強い気持ちを表すため「ゼロカーボン」という表現で温室効果ガス削減の取組みを進めています。
国の2050年カーボンニュートラル宣言について
国は2020年10月、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。全国の自治体でも、同じ目標を掲げて「ゼロカーボンシティ」を目指すところが増えています。
2024年9月末時点では、大阪府や京都市、東京都をはじめとした1,122自治体がゼロカーボンシティ宣言を行っています。これは日本の自治体の約64%にあたり、毎年増加しています。
参考:環境省
ゼロカーボンが求められている理由
ゼロカーボンが求められている背景として、世界的に地球温暖化・気候変動が進んでいることが挙げられます。世界の平均気温は、産業革命前と比べて1.1℃上昇したとされており、近年、国内外ではさまざまな気象災害が発生しています。気温上昇と気象災害との関係はまだ明らかになっていませんが、気候変動が進むと、この先豪雨や猛暑のリスクがさらに高まる可能性があります。こうしたリスクを避けるために、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスを減らすゼロカーボンが重要になっています。
地球温暖化をはじめとする環境問題については、こちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
ゼロカーボンはどうやって実現するの?
日本で排出されている温室効果ガスの中でも「エネルギーを使うことで発生するCO2」の排出量が全体の84.2%を占めています。この「エネルギーを使うことで発生するCO2」は、「発電由来のCO2」と「非発電由来のCO2」に分けられます。
「発電由来のCO2」は、言葉通り、電気が作られるときに発生するものです。
「非発電由来のCO2」とは「民生(家庭や業務など)」「産業」「運輸」といった発電以外で発生するものを指します。
では、2050年に向けてゼロカーボンを実現するためにはどのような取組みが必要になるのでしょうか?
具体的な取組みの内容について詳しく説明していきます。
参考:国立環境研究所
1.CO2を排出しない発電方法の拡大
ゼロカーボン化のためにまず求められるのは、発電の際にCO2を出さない発電方法の拡大です。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの普及・拡大は、CO2の排出量の削減につながります。また、原子力発電も発電時にCO2を排出しません。地球温暖化防止の観点で、優れた発電方法のそれぞれのメリットを活かしながら、バランス良く活用していくことが求められています。
再生可能エネルギーとは何か、どのような種類があるのかについては、以下の記事で詳しく説明しています。
2.CO2回収技術の活用
近年、排出されてしまったCO2を集めて回収するという画期的な技術も登場しています。こうした技術は「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯留)」や「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、二酸化炭素回収・有効利用・貯留)」と呼ばれるものです。
これらの新しい技術は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすときにCO2を排出してしまう火力発電などと組み合わせることで、大気中へのCO2排出を削減することができます。
参考:経済産業省資源エネルギー庁、環境省
3.家庭で発生するCO2排出量の削減
CO2などの温室効果ガスそのものの排出量を削減することも必要です。特に家庭でできる省エネの取組みは不可欠といえるでしょう。一人ひとりが自分事として捉えるだけで、大きな変化が生まれるはずです。
例えば、冷暖房を適温に保つ、白熱電球をLED電球に変える、IHクッキングヒーターなどを備えた住宅施設の採用など、無理なくできる範囲を意識するだけでも大きな一歩です。
4.産業で発生するCO2排出量の削減
一方で、産業部門の取組みも不可欠です。日本経済団体連合会をはじめとする産業界は、2013年度以降に各業種で策定した温室効果ガス排出削減計画に取り組み、2022年度は2013年度比で20.1%の削減を実現しました。
脱炭素化に取り組む日本企業の数は増加しており、世界でもトップクラスの水準です。今後も国は、大企業だけでなく中小企業への支援強化や、省エネルギー性能の高い設備機器などの導入促進を後押ししていきます。
5.輸送分野の電化
2022年度に自動車や船舶等の運輸に関わるCO2排出量は、2013年度比で14.5%削減の1億9180万トンでした。これまで化石燃料を使っていた輸送の分野においても、電気をエネルギー源とする「電化」へのシフトが求められています。電気自動車(EV)が街中を走る光景も、もう珍しいものではなくなったのではないでしょうか。
船舶では、これまで石油を原料とする重油を燃料にするものがほとんどでしたが、電気で運航する「電気推進船」や再生可能エネルギーを動力とする「電池推進船」という新しい船舶も登場しているのです。
例えば、関西電力は2021年12月、相生バイオマス発電所への燃料の輸送において電気推進船を導入することを決め、輸送における電化を進めています。
また、美浜町レイクセンターでは、日本初となる再生可能エネルギーを活用した「電池推進遊覧船」で三方五湖の絶景を堪能するクルーズを体験することができます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6.森林の保全
ゼロカーボンを実現するためには、温室効果ガスの排出量を減らすだけではなく、吸収する量も同時に増やさなければなりません。CO2を吸収してくれる働きといえば、樹木による光合成です。森林はCO2の吸収源として重要な役割を果たしています。植林を推進することでCO2の吸収量を増やしていくことも大事な取組みなのです。
そこで、2021年に英国で開催されたCOP26では、世界の森林の86%を占める100カ国以上の政府が2030年までに森林の破壊を食い止めるため協力することが合意されました。
ゼロカーボンの実現によって得られるメリット
ゼロカーボンを達成するには、社会全体で取り組まなければなりません。決して簡単な課題ではありませんが、ゼロカーボンを実現できれば社会にとってさまざまな便益があります。
持続可能な社会が実現できる
CO2の排出量を抑えることで、地球温暖化や気候変動に歯止めをかけることができるでしょう。気象災害などのリスクを低減することにつながり、持続可能な社会の実現に近づきます。
企業価値や社会的な評価の向上に繋がる
企業が事業活動によるCO2排出量を抑えてゼロカーボンを達成できれば、環境に配慮した企業姿勢であることを広くアピールできます。それによって、取引先などの関係者から高く評価されることも期待できるでしょう。企業同士は供給網(サプライチェーン)でつながっているため、他の企業へのプラスの影響も予想されます。
ゼロカーボンに向けて個人でできる取り組み
ゼロカーボンというと、スケールが大きくて個人では取り組むことがないと思っている人もいるかもしれません。ですが、私たちの日頃の暮らしを少し見直すだけで、環境に配慮することができるのです。
節電などの省エネを意識した行動を取る
使っていない部屋の電気を消す、冷暖房の温度設定を調節するなど、ちょっとした省エネで電気の使用量を減らすことができます。電気を作る際にはCO2が発生するため、節電するとCO2削減につながります。無理のない範囲で節電や省エネを心がけましょう。
CO2排出量の少ない交通手段を選択する
近い距離であれば徒歩や自転車を利用するなど、CO2排出量の少ない交通手段を選ぶことも効果的です。マイカーではなく、電車やバスなどの公共交通機関を使うこともおすすめです。
リサイクルをはじめとする3Rに取り組む
3Rとは、リユース(使えるものを繰り返し使うこと)、リデュース(ごみを減らすこと)、リサイクル(資源を再利用すること)の頭文字をとったもの。ごみの運搬や焼却には多くのCO2排出量が発生するため、3Rに取り組むことでCO2排出量を減らすことができます。
太陽光発電や家庭用蓄電池を自宅に導入する
自宅に太陽光発電や家庭用蓄電池を導入すると、自宅で作った電気を使うことができます。電力会社から購入する電気を減らすことで、発電によるCO2排出量の削減が期待できます。また、太陽光発電や蓄電池は、非常時には非常用電源となるため、停電時でも安心して電気を使えるようになるでしょう。
食品ロスを意識して食べ残しを減らす
農作物や水産物が食品として私たちの食卓に届くまでには、多くのエネルギーが使われています。そうした食品を食べずに捨ててしまうことは、エネルギーを無駄にしていることに他なりません。また、食品には多くの水分が含まれているため、食品ロスとして処分すると焼却時により多くのエネルギーを必要とします。食べ切れる量を買う、最後まで美味しく食べ切るといった工夫をして、食品ロスを発生させないようにしましょう。
植林やゴミ拾いなどの環境保全活動に参加する
地域によっては、道路や公園、海岸や河川などでごみ拾いを行っていることがあります。こうした催しに参加して環境保全の取り組みを実践することも大切です。自治体や企業が植林などのイベントを行うケースもあるため、地域の情報をチェックしてみましょう。
ゼロカーボンやカーボンニュートラルの取組み事例
日本や世界では、ゼロカーボンやカーボンニュートラルに関するさまざまな取組みが始まっています。
国の取組み・ゼロカーボンアクション30について
日常生活におけるゼロカーボンを目指す行動やそれによるメリットをまとめた「ゼロカーボンアクション30」が国から発表されています。
ここでは、エネルギーの節約や再生可能エネルギーの導入、交通手段のシフトといった8つの分野において、それぞれ具体的な取組み内容を紹介しています。身近なところからゼロカーボンを目指すアクションを始める際に役立つ指針となるでしょう。
参考:環境省
関西電力グループの取組み
関西電力グループでは、あえてカーボンニュートラルや脱炭素ではなく、強い意味を持つ「ゼロ」を使用することで、事業活動に伴うCO2排出を全体としてゼロにするという決意をわかりやすく表現しています。
2021年2月には、「ゼロカーボンビジョン2050」を発表し、2050年までに事業活動に伴うCO2の排出を全体としてゼロにすることを掲げています。
また、2022年3月に、ビジョン実現のための道筋を定めたロードマップを策定しました。
そして、取組みの進捗や世界的な脱炭素化の潮流の高まりを踏まえ、2024年4月には、ロードマップを改定し、ゼロカーボン化に向けた取組みをさらに加速させています。2050年のゴールを目指し、中間地点として2030年の目標を掲げたことをはじめ、「みんなでアクション すすめ、ゼロカーボン!」の合言葉とともに、関西電力グループだけでなく、お客さまや社会の皆さまと力を合わせて、ともに社会全体のゼロカーボン化への歩みを進めたいとの思いを表明しています。
目指すのは「ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー」です。
世界全体で加速するゼロカーボンの潮流
ゼロカーボン、カーボンニュートラル。言葉こそ違いますが、温室効果ガスの排出量をトータルでゼロにすることを目指す点では、日本をはじめ、世界中で、国、自治体、企業の多くが同じ目標に向かいつつあるといえます。
そのような潮流の中で私たち個人としても、ゼロカーボンに向けた取組みをチェックしたり、個人でも参加できる活動に関わってみたりすることで、持続可能な社会の実現に貢献することが大切です。
だいちゃん
地球環境のために、自分たちで何ができるかを考えていきたいですね!