「こうした異常気象は本当に地球温暖化と関係があるの?」と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。また、このような異常気象が今後、頻繁に起こるようになるのではと不安に思う方もいるかもしれません。そこで今回は、異常気象と地球温暖化との関係についてご紹介します。読めばきっと私たちが取るべきアクションがわかるはずです。
※この記事は2022年3月15日に公開した内容をアップデートしています。
異常気象とは? 簡単に解説
まず、「異常気象」といわれる天候状況はどのようなものを指すのでしょうか。
気象庁によると、異常気象とは「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」と定義されています。つまり、ある地域で30年に1回起こる程度のめったにない気象を「異常気象」と呼んでいます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・大雨
・洪水
・台風
・ハリケーン
・熱波
・寒波
・少雨
・干ばつ
地球温暖化と異常気象は関係ないってホント?
「こうした異常気象と地球温暖化との間にはどのような関係があるの?」と疑問に思っている人もいることでしょう。そもそも、地球温暖化とは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスによって地球が温まり過ぎてしまうことをいいます。
なお、地球温暖化のメカニズムについては、以下の記事で詳しく説明しています。
地球温暖化が進んで気温が上がると、大気中の水蒸気量が増えると考えられています。大気中に水蒸気量が増えれば、大雨や大雪といった降水量や積雪量の増加につながる恐れがあります。水蒸気量が増えることによって大気や地表の状態が変化すれば、さらなる異常気象を引き起こす可能性もあるでしょう。
世界中の異常気象の要因となるエルニーニョ現象やラニーニャ現象も、地球温暖化の影響ではないかと指摘する科学者もいます。エルニーニョ現象は太平洋付近の海水温が平年より高い場合に、ラニーニャ現象は平年より低い場合に発生するもので、世界各地に熱波や台風などの異常気象をもたらすことがあります。
また気象庁は、地球温暖化によって世界の平均気温が上がったことで、過去にはなかったような異常な高温などが起こる確率が高まっていると指摘しています。近年は、日本だけでなく世界各地でも異常気象の発生頻度が高まっていて、地球温暖化が「異常気象の発生頻度を増やす」要因となっている可能性があります。
昨今、異常気象が発生した原因に関する研究も増えてきたといわれています。そうした研究が進んでいくことで、新しい事実が明らかになっていくかもしれません。
地球温暖化についてのデータを世界中の科学者が取りまとめた、2021年発表のIPCC「第6次評価報告書」では、地球温暖化の原因が人間の活動であることには「疑う余地がない」とされました。今後、さらに気温が上がると、熱波と干ばつ、大雨や洪水など、いくつかの異常気象が組み合わさった災害が発生する確率が高まることも指摘されています。
IPCCについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:気象庁、環境省、IPCC「第5次評価報告書」
近年の異常気象の事例
近年は、日本を含め世界中でさまざまな異常気象が確認されています。実際にどのような異常気象が起こっているのか、詳しく見ていきましょう。
日本の事例
最近、日本で起こった異常気象としては以下のようなものが挙げられます。
年 | 場所 | 異常気象の種類 | 具体的な被害 |
---|---|---|---|
2018年 | 中国地方 | 大雨 | 死者・行方不明者231名、家屋倒壊、浸水など |
2020年 | 北陸地方 | 寒波 | 家屋倒壊、交通網の麻痺など |
2023年 | 東・西日本の太平洋側 | 線状降水帯による大雨 | 浸水など |
世界の事例
世界各地で大きな被害をもたらした異常気象としては、以下のようなものがあります。
年 | 場所 | 異常気象の種類 | 具体的な被害 |
---|---|---|---|
2018年 | アメリカ カリフォルニア州 | 森林火災 | 約1860万平方kmの森林が消失。1933年以降州最悪の消失面積、死者数 |
2019年 | フランス | 熱波 | 最高気温46.0℃の熱波により、死者が推定1400人以上増加 |
2022年 | フィリピン | 台風 | 4月・10月の台風によって平年の6倍の大雨が降り、死者が推定440人以上増加 |
異常気象による影響
熱波や寒波、豪雨をもたらす異常気象は、私たちの暮らしに多大な影響を与えます。特に、農作物の成長や私たちの健康などにも甚大な被害をもたらしてしまうのです。
・農作物への影響
私たちが毎日食べる米にも、異常気象による品質低下や高温による生育障害が発生しています。
また世界では、大豆や小麦、米、トウモロコシといった穀物の生産量が減る可能性が指摘されています。生産量が減ると、穀物の多くを輸入に頼る日本にも、大きな影響が及ぶと懸念されます。
・健康への被害
熱波や猛暑によって熱中症の被害が拡大したり、これまでにはなかったような感染症が広まったりする危険性も指摘されています。
例えば、デング熱という感染症を媒介するヒトスジシマカという蚊の生息域は、2100年ごろにはヒトスジシマカの生息域が北海道にまで広がると考えられています。
異常気象は増加している?現状と今後の予測
近年、異常気象が増加しているのではないかと感じている人もいるかもしれません。実際のところ、地球温暖化によって異常気象の発生件数は増えているのでしょうか?気象庁のデータを見ながら説明します。
気象庁によると、1時間あたりの降水量が80mm以上などの大雨の発生頻度は、1980年ごろと比べて約2倍に増加していると報告されています。
また、最近30年間(1993〜2022年)の猛暑日(1日の最高気温が35℃以上)の年間日数は平均2.7日ですが、1910〜1939年の30年間は約0.8日でした。つまり、約110年前と比べて、年間の猛暑日が約3.5倍に増加しているとのこと。こうしたデータから、大雨や猛暑日の頻度が増加していることがわかります。
また、環境省が毎年発行している環境白書では、異常気象の将来予測について言及しています。それによると、雨が降る日が減る一方で、1回あたりの降水量が増え、短時間の大雨の発生頻度が増加すると予測されています。日本の多くの地域で積雪量が減る一方で、一部内陸の地域では大雪が増加する可能性も指摘されています。さらに、年間の猛暑日は今世紀末には全国平均で約20日増加すると予測しています。
異常気象対策として私たちができること
国連が掲げる2030年までによりよい世界を目指す持続可能な開発目標(SDGs)には、「13 気候変動に具体的な対策を」という目標が盛り込まれています。気候変動や地球温暖化を防ぐために、私たちにできるアクションをご紹介します。
気候変動や地球温暖化を食い止めることは重要です。しかし、すでに起こってしまっている異常気象などの影響に適応していくことも、同じくらい大切なことだと考えられています。これからは、気候変動の影響に対する「適応策」と、根本からの解決を目指す「緩和策」の2つのアプローチを意識して、暮らしに取り入れていきましょう。
適応策
夏場は、熱中症にならないために、こまめに水分補給をしたり、クールビズを取り入れたりといった対策が有効です。冬場は、衣類を調整して暖房の使用を抑えながら暖かく過ごすウォームビズにもチャレンジしてみましょう。
また、豪雨災害などに備えて、日頃から自治体のハザードマップを家族で確認して、避難所や避難ルートを確認しておくことも大切です。
具体的な適応策としては、以下のようなものがあります。
・クールビズ、ウォームビズ
・ハザードマップの確認
・防災リュックなどの備え など
緩和策
省エネや電化によって、エネルギーの使用量を抑えることが有効な対策だといえます。
具体的な緩和策としては、以下のようなものが挙げられます。
・省エネ
・エコドライブ
・フードロスの削減 など
その他、私たちにできる具体的な方法について、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
温暖化が進めば異常気象が増える可能性も。適切なアクションで対策を
現時点では、昨今の異常気象と地球温暖化とのはっきりした関連性はまだ明らかにされていません。しかし、異常気象の頻度は高まっている状況にあります。
これから私たちにできること。それは、地球温暖化対策のアクションを取ること。小さな一歩と思えることでも、少し意識するだけで、異常気象が発生する頻度を抑えることにつながるのではないでしょうか。
温暖化対策の「緩和策」と「適応策」の両方に取り組み、万が一の異常気象に日頃から備えることも、より重要になっていくでしょう。
だいちゃん
原因や対策を知ることが、一番の備えになるかもしれませんね!