
まなまな
水力発電をゲームで学べるなんて、大人でもワクワクしますよね!どんな思いで作られたのか、詳しく聞いてきました!
今回は、かんでんWITH YOU編集部のまなまなが、ハイドロクラフトのプロジェクトを担う水力事業本部 HpXグループの岩立篤さんにインタビュー。出前教室で子どもたちの心をつかみ、社内イベント「ええやん!Day」では大賞にも選ばれたこのプロジェクトの舞台裏に迫ります。

岩立篤
水力事業本部HpXグループ
HpX(Hydro power Transformation)は、DX推進と新たな価値創造を両輪として、新しい水力の未来を切り拓くことをミッションに掲げるグループ。通称“ハピックス”グループです。
水力×マイクラ。ハイドロクラフト誕生の背景

関西電力の水力事業本部には、DX推進と新たな価値創造の両輪で水力発電の変革を目指す「HpX(ハピックス)グループ」があります。DX技術による業務効率化だけでなく、水力の新たな価値創造もミッションのひとつ。その新たな価値創造側の取組みから生まれたのが、マインクラフトを使った教育コンテンツ「HYDROCRAFT(ハイドロクラフト)」です。
プロジェクトの背景にあったのは、子どもたちへの情報発信の課題でした。水力発電の仕組みや役割を伝える出前教室は以前から行われてきましたが、パワーポイントや模型を使った講義形式が中心。工夫を凝らしてはいるものの、もっと子どもたちの興味を引き出す方法はないだろうか――そんな問題意識から、プロジェクトは動き出しました。

ハイドロクラフト誕生前の小学校での出前授業の様子。
岩立「出前教室のツールにもDXの発想は活かせるはずだと。もっと子どもたちが夢中になれるようなものがつくれるんじゃないかと考えて、新しいツールの制作に取りかかりました」
いくつかの候補の中からマインクラフトを選んだ理由は明快です。世界で最も売れているゲームであり、出前教室で聞いてみると小学生の約8割が「やったことがある」と答えるほどの圧倒的な認知度。さらに、現在は1人1台配布されたタブレットに教育版ライセンスが入っている学校もあり、教育現場との親和性の高さが決め手になりました。
約1年の制作期間を経て、2025年12月にリリース。PC、タブレット、スマホに対応し、マインクラフトの統合版または教育版ライセンスを持っていれば誰でも無料で遊ぶことができます。
ゲームで体験する水力のリアル。その中身を紹介!

ハイドロクラフトの世界で、プレイヤーは「電力会社の新人社員」になります。先輩社員に教わりながらダムや発電所の仕事を体験していく、ちょっとした職場体験のようなコンセプトです。
メインの「クエストモード」には3つのシナリオがあります。大雨時のダム放流ゲート操作、揚水発電所での電力需給バランス調整、そして水車発電機の組み立て。それぞれ異なる角度から水力発電の役割を学べる構成です。このほか、自由にダムを建設できる「クラフトモード」もあり、マルチプレイで友達と協力して作ることもできます。
制作で特にこだわったのが、設備のリアリティと、バーチャル空間ならではの工夫の両立です。例えば放流のシナリオでは、安全のための手順がゲームの中でもポイントを押さえて再現されています。
岩立「放流前にサイレンを鳴らすのは、川の近くにいる方が流されないようにするため。ゲームでもサイレンが鳴ると川岸の人が逃げていくアニメーションを入れて、なぜ鳴らすのかがちゃんと伝わるようにしました」

まなまな
放流ゲートを開ける前の安全確認から、サイレンでの危険告知まで。現場の仕事の流れをそのまま追体験できるのが面白いですね!
また、水車は本来鉄に覆われていて外からは見えませんが、ゲーム内ではその鉄を一部透明にして、中で回転する水車の様子を見られるようにしています。実物では絶対に見られないものを見せられるのは、バーチャル空間ならではの強みです。
岩立さんに個人的な「推しポイント」を聞くと、返ってきたのは少し意外な答えでした。
岩立「電気系社員目線になりますが、配電盤室の外観の再現度の高さがたまらないですね。発電所の運転や停止を司る、人の体でいえば脳みそのような場所なのですが、実物の写真と比べても「まんまやん」と。マイクラはブロックを積むゲームなのでどうしてもカクカクしがちですが、配電盤室は四角い盤が並ぶ場所なので、ブロックでの再現にぴったりだった。完成したハイドロクラフトを見た時、一番テンションが上がったポイントです」
ハイドロクラフトの配電盤と実際の配電盤。岩立さんが驚いたのも納得の再現度です!
「マイクラじゃん!」出前教室での子どもの変化

ハイドロクラフトは完成後すぐに、現場での活用が始まりました。2025年12月にはリリース直前の試行として小学校での出前教室を実施。翌2026年3月には京都にある宇治発電所(愛称:SMBC宇治グリーン発電所)での地域向けイベント、さらに新入社員研修でも水力の導入教材として使われるなど、活用の幅は着実に広がっています。子どもたちの反応は、想像以上でした。
岩立「教室の入口で準備中にマイクラの画面が見えただけで、子どもたちはもう大興奮です。『うわ、マイクラだ!ガチやん!!』って授業が始まる前から人だかりができていました。ゲームという入り口があるだけで、こんなにも強い興味を持ってもらえる。想像以上の反響でした」
宇治発電所のイベントでは、実際の水車の中に入れる体験や機器のデータ取得体験など豊富なメニューがある中、ハイドロクラフトの持ち時間はわずか30分。それでも子どもたちからは「ハイドロクラフトが一番楽しかった」という声が多く上がったと言います。
しかし岩立さんをもっとも感動させたのは、「楽しかった」の先にある反応でした。
岩立「後日、小学校から届いたレポートには、『放流する時にサイレンなどでみんなが安全になれるようにしていたのが印象に残った』『大変なことをして発電してくれていることに感謝したい』と書いてくれていて。ただ楽しいだけじゃなく、僕らが伝えたかったことがちゃんと届いていた。我が子の成長を見るような気持ちで涙出そうになりましたね」

まなまな
ゲームの中で安全を守る仕事の大切さや、電気を作ることへの感謝が自然と芽生えている。ゲームと学びが繋がるコンテンツの力を感じますね。
「ええやん!Day」大賞が広げたプロジェクトの輪

「ええやん!Day」で大賞を受賞し、表彰状を受け取る岩立さん。
そうした活動が社内で一気に注目されるきっかけになったのが、組織風土改革の全社イベント「ええやん!Day」での大賞受賞でした。社内から集まった「ええやん!」なエピソードを従業員投票で表彰するこのイベントで、ハイドロクラフトが大賞に選ばれたのです。
岩立「正直、選ばれるとは思っていなかったのでびっくりしました。ただ、やっぱりマイクラは見た目のインパクトがありますし、世界で一番売れているゲームだけあって、世代を問わず響くものがあるんだろうなと」
完成からエピソード募集までの期間が短かったこともあり、受賞前は社内での認知度が高くなかったハイドロクラフト。それが大賞をきっかけに一変し、出張先で「大賞取ってたやん」と声をかけられるようになったと言います。2025年12月には読売新聞にも取り上げられ、社外への発信にもつながりました。
水力発電の魅力を、もっと多くの人へ届けたい

今後の展開について、岩立さんは「作って満足して止まってはいけない。活用してなんぼ」と力を込めます。出前教室での活用をさらに広げることに加え、地域のコミュニケーション窓口となる部署への売り込みや、商業施設でのイベント出展なども構想中です。
また、ハピックスグループではハイドロクラフト以外にも、水力の魅力を届ける取り組みを進めています。発電所内部をVRゴーグルで見学できる「大井ダム&発電所 VR図鑑」や、ダムにまつわる情報を共有したりダム訪問でデジタルスタンプが獲得できるアプリ「みずいろネット」など、多角的に発信。さらに、ダム内部の点検用空洞は年間を通して温度が一定であることを活かし、日本酒等の熟成に活用するなど、発電以外の価値の発掘にも取り組んでいます。

アプリ「みずいろネット」には、ダム巡りを楽しめるGPSスタンプラリー「ダムポン」など、ユニークなコンテンツがあります。近年人気のダム巡り旅のお供にいかがでしょうか?
岩立「水力は純国産のゼロカーボン電源であり、しっかりとメンテナンスを行えば100年以上の長い間使える非常に良い電源です。でも、あって当たり前になってしまい、再エネの中でも太陽光や風力に比べてなかなかニュースになりにくい。ハイドロクラフトでも、みずいろネットでも、何がきっかけでも良いので水力にもっと興味を持ってもらえたら。子どものころから知ってもらえれば、将来水力に関わる仕事に就く人が出てくるかもしれない。そういう未来を少しでも近づけたいです」

まなまな
ゲームを入り口に、水力発電の大切さを知る子どもたちが増えていく。そんな未来、素敵ですね。水力は「あって当たり前」になってしまっているからこそ、こうやって意識的に魅力を伝え続けることが大切なんだと気づかされました。
ハイドロクラフト 水力発電を解き明かせ!【MineCraft ダム操作体験】
www.youtube.com















