2022年オープン。気になるその概要は?
大阪市北区に位置し、古くから大阪の経済や文化の中心として栄えてきた中之島。
堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲に、美術館、コンサートホール、科学館、国際会議場などの文化施設や歴史的建造物に合わせて、企業の高層ビル群が立ち並び、さらには公園やバラ園まで備えた「水都大阪」のシンボルとなっています。
中之島エリアで象徴的な“ブラックキューブ”と称される大きな黒い立方体が大阪中之島美術館です。
2階までをガラス張りにし、3階以上を黒い外壁で覆うことで、まるで宙に浮いたような印象を与えています。
入場方法は?混雑状況・当日券・チケット予約方法など
さて、注目のスポットということで、気になるのは混雑状況やチケット購入方法です。
取材した平日の午後は、多くの人が訪れていましたが、作品前に行列ができるほどの状況ではありませんでした。
展覧会の初日や最終日など、あらかじめ混雑が予想される日を避ければ、より快適に過ごせると思います。
当日、美術館に着いてからカウンターで当日券を購入することも可能ですが、混雑状況によっては当日券の販売が終了している場合もあります。そのため、事前に日付指定の優先オンラインチケットを、公式チケットサイトやファミリーマートなどにて購入することをおすすめします。
オンラインチケットはQRコードで入場できるため、スマートフォンで完結できるのが便利です。
ハードな見た目と複雑構造の内部。カッコイイ建築が見どころ
さて、それでは早速現地のレポートしていきましょう!
実は、大阪中之島美術館には明確な「正面入り口」がありません。「どこからでも入れるように」との考え方からこのようになっており、南北に階段が用意されています。
階段下から建物を見上げてみると、黒い要塞感がグッと引きたちます。
写真では、街中に突如巨大な黒い立方体が立ちはだかり、威圧感があるように見えるかもしれませんが、実際に建物を目の当たりにすると、異質な雰囲気を醸し出しながらも、不思議と街の景観に溶け込んでいます。
大切にしている概念「パッサージュ」とは
外観のシンプルさに反し、一歩館内に足を踏み入れると、内部は複雑で奥行きを楽しめる造りになっていました。
この構造のテーマになっているのが、設計時の計画条件として取り入れられた「パッサージュ」という概念だそうです。「パッサージュ」はフランス語で「歩行者のための小径」を意味し、1階から5階まで、立体的に積み重ねられたような広々とした吹き抜け空間に、階段やエスカレーターが交差しています。
圧倒的な広さと複雑さをもって私たちを迎え入れてくれるのですが、実は自然と他のお客さんとの動線がぶつからないように計算されていることに気がつきました。複数のエントランスから入場し、2階ロビーを介してエスカレーターで4、5階の展示室へと上がり、観賞後に再度2階ロビーに戻ってくるまでを、まるで一筆書きのようにスムーズに回れるようにしているのです。
学芸員さんおすすめスポットで渾身の一枚を
思わず写真を撮りたくなってしまう象徴的なパッサージュ。でもどこからどう見るのがベストポジションなのか……。そんな人のためにおすすめスポットを学芸員の北廣麻貴さんに教えていただきました。
「4階から階下を望む景色が一番全体を見渡せていいですね」
実際に北廣さんおすすめの場所からいざ階下を眺めてみると、1階と2階を繋ぐ大階段や2階から4階を結ぶ長いエスカレーターなど、折り重なるパッサージュを見渡せる上に、館内を往来する人々の動きもひと目で見てとれます。
老若男女誰でも気軽に集える美術館
老若男女が集う、開かれた空間
「開かれた『パッサージュ』が行き交い、価値あるコレクションやアーカイブ資料を公開できる民主的な美術館」という理念通り、市民が気軽に美術と触れ合える機会を創造しています。
「開かれた美術館」を感じるのが、子供連れのご家族の多さです。芝生広場で子供たちを遊ばせていたら、そのまま美術館に吸い寄せられるように入ってしまっていた! そんな感じで、自然と館内へと導かれているようです。
また、館内には親子休憩室や授乳室も完備されており、小さな子供を連れた家族がフラットに入ってくることができる環境づくりが徹底されています。
もちろんバリアフリー対応で車椅子の方もストレスなく、美術を楽しめるようなユニバーサルデザインになっています。老若男女が集うことができる、現代の美術館の在り方といえますね。
写真撮影自由のオープンな空気
「開かれた美術館」ということでいえば、館内の多くの場所で自由に撮影ができることも特徴の一つです。
来館者の皆さんもスマホから一眼レフまでさまざまなカメラで思い思いに撮影しています。好きな場所で好きなように撮影している人が多いのも、開かれた美術館の特徴かもしれません。もちろん、展示室内などでの撮影禁止エリアの遵守やフラッシュを焚かないなどのマナーはお忘れなく。
特に被写体として人気があるのは、なんと美術館内の「壁」だそう。内壁に使われているレールが並んだように一直線に伸びているアルミスパンドレルという素材が、1階から5階まで繋がることでパッサージュの広さや奥行きを引き立てており、建築好きや写真好きには必見の被写体になっています。
広報の東森麻理奈さんに伺うと、このアルミスパンドレルの太さを、実は少しずつ微妙に変えているんだとか。同じ太さにすると、目の錯覚で真っ直ぐに見えないのだそうです。職人さんが一本一本丁寧に手作業で微調整しながら仕上げるという、考えただけでも気が遠くなるような作業のおかげで、目で見て真っ直ぐになるようつくられているのも隠れたこだわりポイントですね。
大阪中之島美術館では、飾ってある作品のみならず、美術館そのものがアートとして大切に考えられているようです。
ミュージアムショップや、カフェの利用も楽しみのひとつ
館内には、展示エリアの他にも、自由な視点でセレクトしたプロダクトをはじめ、大阪に縁のあるアーティストとのコラボグッズや、ここでしか出合えないユニークなオリジナルグッズを販売されているミュージアムショップ「dot to dot today」が人気になっています。
ここはチケットがなくても入れるエリアにあるので、美術館来訪のお土産としてだけでなく、センスのいいギフトや自分へのご褒美アイテムなどで日常的にも重宝しそうですよね。
また、館内のデンマーク発インテリアプロダクトブランド「HAY OSAKA」や、美と健康のフランス料理「ルレストカール」、美と健康の美味しいカフェ「ミュゼカラト」で、美術館ならではの美食とアートを楽しめます。
注目の展覧会が目白押し
岡本太郎の大回顧展で芸術人生を振り返る(2022年10月2日終了)
大阪中之島美術館ではこの後、注目の展覧会が目白押しです。
2022年7月23日から始まる岡本太郎の大規模回顧展「岡本太郎(仮称)」は特に注目です。1970年日本万国博覧会のテーマ館《太陽の塔》で知られ、今日でも幅広い世代の人々を魅了する芸術家・岡本太郎(1911-1996)。作家の芸術人生を振り返る大規模な回顧展が大阪中之島美術館で開催されます。代表作を網羅しつつ、これまであまり注目されてこなかった晩年の作品なども紹介しながら、その生涯をたどります。2025年に迫った大阪万博を前にふたたび注目される岡本太郎の作品世界に触れる、貴重な機会となりそうです。
特別展 岡本太郎(仮称)
【会期】2022年7月23日(土)〜10月2日(日)
【主催】大阪中之島美術館、公益財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団、川崎市岡本太郎美術館、NHK大阪放送局、NHKエンタープライズ近畿
【会場】大阪中之島美術館 4階展示室
近隣美術館との合同企画展も見逃せない(2022年1月9日終了)
2022年10月22日からは「分化と統合」というテーマを掲げた「すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合」を、隣の国立国際美術館と2館同時開催することがアナウンスされています。
この展覧会では、吉原治良という絶対的指導者を中核にすえ、1950年代から70年代にかけて日本の前衛美術を牽引してきた具体美術協会(「具体」)のユニークな作品が展示される予定です。
かつてその具体美術協会の活動拠点である「グタイピナコテカ」がこの中之島にあったものの、1970年に都市計画による立退きで惜しまれつつ閉館しました。
その後の具体美術協会解散から50年の節⽬となる今、中之島で隣接する美術館同士で、この「具体展」を開催するということは必然だったのかもしれません。
学芸員さんイチオシは「モディリアーニ」展(2022年7月18日終了)
学芸員の北廣さんおすすめの展覧会について伺いました。
注目すべきひとつ目の展覧会は「モディリアーニ ー愛と創作に捧げた35年ー」。
言わずもがなのイタリアの画家、彫刻家で、エコール・ド・パリ(パリ派)の画家の一人に数えられるアメデオ・クレメンテ・モディリアーニの作品が、一堂に会します。
「大阪中之島美術館の所蔵品以外にも海外からも作品を集めて展示しており、パリを拠点に繰り広げられた新しい動向を感じられておすすめです。また、モディリアーニの多様な芸術の土壌を示し、“モディリアーニ芸術”が成立する軌跡をたどるということで、楽しみにされている方も多いのではないでしょうか」
大阪ならではの地域に根ざした企画展「みんなのまち 大阪の肖像」(第2期2022年10月2日終了)
さらに興味深い展覧会が「みんなのまち 大阪の肖像」です。
こちらはそのままズバリ「大阪」をテーマとする展覧会で、絵画、写真、ポスターをはじめとするコレクションを中心に、美術とデザイン両方の側面から大阪を切り取り、「みんなのまち=大阪」の魅力を、広く深く掘り起こす展示になるとのこと。
他の博物館・美術館以外にも、企業などからも出品されるということで、その内容にも期待です。
最後に
美術館というとつい構えてしまう方もいるかもしれませんが、目的は建築でも芝生広場でもショップでもアリ。そんな自由な使い方ができるのが大阪中之島美術館なのです。
スマホもSNSも無かった時代の構想から40年の時を経て、時代に合うよう柔軟に計画を変化させながら、現代にフィットする美術館が誕生しました。これからも市民と共に変化し続ける美術館になっていくことでしょう。2025年に万博を控え、文化・芸術の街としてさらに発展していくことが期待されます。
スポット | 大阪中之島美術館 |
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住所 | 大阪府大阪市北区中之島4-3-1 |
開館時間 | 10:00〜17:00(入場は16:30まで) 月曜日休館(祝日の場合は翌平日) |
電話番号 | 06-6479-0550(代表) |
Web | https://nakka-art.jp |
チケット | https://ticket.nakka-art.com |
こうちゃん
アートも好きですが、構造物の美しさにもひかれてしまいました。