しかし、現状、再生可能エネルギーは課題も多くあります。上手に活用し、さらに普及させるためには、メリットと課題の双方を正しく知っておくことが大切です。この記事を読めば、注目の再生可能エネルギーについての知識がもっと深まるはずです。
※この記事は2022年4月5日に公開した内容をアップデートしています。
※この記事は2022年4月5日に公開した内容をアップデートしています。
再生可能エネルギーとは?わかりやすく解説
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱といった自然界に常に存在するエネルギーのことです。これらは、地球が存在する限り枯渇することはありません。石油や石炭、天然ガスといった化石燃料は資源量に限りがあり、将来枯渇するリスクがあるとされています。再生可能エネルギーの特徴は、枯渇しないこと、どこにでも存在すること、発電の際にCO2を排出しないことです。
再生可能エネルギーの種類についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
再生可能エネルギーの主なメリット
再生可能エネルギーにはいくつかの種類がありますが、その中でも特に普及が進められているものが、「太陽光」「風力」「水力」「バイオマス」「地熱」の5つです。この5つは、日本国内での再生可能エネルギーの普及促進を目的として導入された「固定価格買取制度(FIT制度)」の対象にもなっています。この再生可能エネルギーには、主に、大きく3つのメリットがあると考えられています。
CO2の削減に有効
発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないという点は、メリットのひとつです。
地球温暖化は、世界中にさまざまな影響をもたらしますが、その原因のひとつとされているのが温室効果ガス。私たちの暮らしの中で発生するCO2も、この温室効果ガスの一つなのです。地球温暖化を防止するためにも、CO2をなるべく排出しないような取組みを世界各国が行っています。
2021年11月、地球温暖化を食い止めるという大きなテーマに向けて、世界中の国々が目標を共有した「COP26」では、「世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ1.5℃よりも低く保つ」という約束が取り交わされたのです。
この約束を守るために、世界各国はCO2の排出量の削減目標を立て、削減のための取組みに力を入れているところです。そこで、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーに大きな関心が集まっているのです。地球温暖化についてはこちらで詳しく解説しています。
エネルギー源が枯渇する心配がない
再生可能エネルギーは、自然界に常に存在するエネルギーであるため、エネルギー源が枯渇する心配がないのです。
では将来、枯渇する可能性があるエネルギー源とは何なのでしょうか?それは、石炭や石油、液化天然ガス(LNG)といった化石燃料です。
化石燃料で発電する火力発電についてはこちらで詳しく解説しています。
これから先、技術革新によってエネルギーのリサイクルが可能になったり、枯渇の心配が当面なく、十分なエネルギー生成技術が見込めるような天然資源が発見されたりすれば、この予測が変わることもありえますが、今の状況では現実的とはいえません。
こうした問題を解決してくれる有力なエネルギーのひとつが、再生可能エネルギーです。
参考:BP Statistical Review of World Energy 2021
エネルギー自給率の向上につながる
再生可能エネルギーは、日本国内に存在するエネルギーであるため、普及すれば、日本のエネルギー自給率を向上させることにつながるのです。
エネルギー自給率とは、必要なエネルギーのうち国内でまかなうことのできる割合のこと。実は、日本のエネルギー自給率は、2018年度で11.8%と低い水準にあるのです。日本には資源が少ないので、エネルギー資源の9割近くを海外からの輸入に頼ってしまっています。
エネルギー自給率が低いことは、資源を他国に依存しなければならないため、国際情勢の影響を受けやすくなります。そのため、安定したエネルギー供給に懸念が生じてしまうかもしれないのです。
酸性雨の発生を抑制できる
酸性雨の原因の1つは、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)です。これらは火力発電や工場、ガソリンで走る自動車などから排出されます。もちろん、火力発電所や工場には、排出されたガスをきれいにする装置が取り付けられており、自動車の排気ガスも環境に配慮されています。再生可能エネルギーは、発電の際にこうした物質が発生しないので、酸性雨を防止できると考えられています。
なお、酸性雨は森林資源に大きな影響を与えます。森林破壊の原因や対策についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
再生可能エネルギーの主な課題
再生可能エネルギーには大きなメリットがある反面、課題も存在します。
発電コストが高い
再生可能エネルギーは、発電する際に自然状況に左右されるなどの理由から、安定して大量のエネルギーを作ることができません。
また、単位あたりでどれくらい発電できるかを表す「エネルギー密度」が低く、広大な土地が必要になるため、発電電力量当たりの建設費が高くなります。
そのことから、発電するためのコストが火力発電などの既存のエネルギーと比較すると高くなってしまいます。
コラム:エネルギー密度とは?
太陽光発電や風力発電で多くの電気を作るためには、広い土地が必要となります。
例えば太陽光発電では、郊外などに、太陽光パネルがずらっと並んでいる光景を目にしたことがあるかもしれません。
広さの確保以外にも「日射量」「発電所から距離が離れる大規模消費地へ供給するための送電容量の確保」などさまざまな条件を検討する必要があります。
関西電力の発電所を例にとって説明しましょう。堺太陽光発電所は、約21万平方メートルの面積で1万kWの電気を発電することができます。一方で、LNGの火力発電所である堺港発電所は、面積は約10万平方メートルですが、200万kWの電気を作ることができるのです。単純に1平方メートルあたりの面積で比べると、発電出力が約400倍も違うことがわかります。
このように、単位あたりでどれくらい発電できるかを表すのが「エネルギー密度」です。
発電量が自然環境に左右される
自然の力を利用する再生可能エネルギーですが、逆にいうと、発電量が自然環境に左右されてしまうという課題があります。「バイオマス発電」などはこの制限を受けませんが、天候などの条件が大きく影響する「太陽光発電」や「風力発電」は発電ができないこともあります。
例えば、太陽光発電は、夜の間は電気を作ることができません。また風力発電も、無風の状態では電気を作れません。
このように、再生可能エネルギーによる発電は自然環境に左右されるため、貯めることができず、電気を私たちが利用するタイミングに合わせて必要な分だけ発電量を確保することが難しいのです。このような需要と供給のバランスを保つ難しさは、再生可能エネルギーの課題となっています。
発電所を建設する適地が少ない
国土に山地が多く十分な広さの土地を確保しにくい日本では、発電設備を設置できる適地が少ないことも普及の難点になっています。
例えば、風力発電に適した条件は、常に一定以上の強い風が吹き続けることです。しかし、日本ではそのような適地は山間部に集中しており、開発しづらいのが現状です。また、地熱発電では、適した場所が温泉などの施設がある地域と重なることもあります。
全国どこでも再生可能エネルギーによる発電が行えるかというと、そうではないのです。
エネルギーの変換効率が低い
エネルギーの変換効率とは、簡単にいうと、投入したエネルギーに対してどれくらいのエネルギーが利用できるかを表したものです。太陽光発電のエネルギー変換効率(発電効率)は、一般的に約20%、風力発電は約20〜40%とされています。これに対して、火力発電は約40〜50%と、比較的高いことがわかります。こうしたエネルギー変換効率をいかに向上させるかも、再生可能エネルギーの課題の1つだといえます。
再生可能エネルギーの課題への解決策
さまざまなメリットがある一方で、課題も抱えている再生可能エネルギー。こうした課題を解決するために、どのような対策が取られているのか解説します。
蓄電システムの開発
需要に合わせた発電が難しいという課題に対しては、蓄電システムを一緒に使うことで解決できる可能性があります。
こうした蓄電池を利用して、発電量が足りないときには蓄電池から放電し発電量が余るときには蓄電池に充電するといったコントロールができるようになってきました。
ほかにも、大容量化できたり長寿命であったりと、それぞれメリットが異なる蓄電池が開発されています。用途に適した蓄電池を使用することで、再生可能エネルギーの課題をカバーすることができると考えられているのです。
このように、再生可能エネルギーと蓄電システムを組み合わせて上手に活用すれば、電気の需要と供給のバランスの改善につながるとされています。
発電技術の進化
発電所を建設する適地が少ないという課題に対しても、さまざまな取組みが行われています。
例えば風力発電では、陸上の適地が少ないという課題に対し、海の上に風車を浮かべる「浮体式洋上風力発電」の導入が進められています。
また、より効率的に発電設備を設置する技術や、発電効率を高める技術が進化することで、適地の課題も解消されていくことが期待されています。
日本の再生可能エネルギーの導入状況
そもそも、日本は今どのようなエネルギーをどれくらい使っているのでしょうか?最新の国の資料から読み解きます。
エネルギー自給率
エネルギー自給率とは、必要なエネルギーを国内の資源でどれくらいまかなえているかを示す指標です。2021年の日本の一次エネルギー自給率は13.3%で、他のOECD諸国よりも低い水準にあります。資源の乏しい日本は、化石燃料のほとんどを外国からの輸入に頼っているためです。
発電電力量に占める再生可能エネルギーの比率
前述した通り、再生可能エネルギーは国内にある資源で発電できるため、エネルギー自給率の向上に役立ちます。2022年度の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は、21.7%となっています。近年、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電の割合が増加の傾向にあります。
関西電力グループでは、持続可能な社会の実現に向け『ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー』として、安全確保を前提に安定供給を果たすべくエネルギー自給率向上に努めるとともに、地球温暖化を防止するため発電事業をはじめとする事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロとすることを目標に掲げています。
技術や制度で課題を乗り越え、拡大を目指す再生可能エネルギー
このように、再生可能エネルギーには、CO2を排出しないというメリットや、エネルギー自給率の向上に役立つといったメリットがあります。しかし、その一方で、発電量が自然環境に左右される変動性という乗り越えるべき課題があるのも事実です。
こうした課題を解決するために、蓄電システムなどさまざまな対策が取られています。再生可能エネルギーのメリットと課題の両方を正しく理解し、課題をカバーするような対策とともに導入を進めることが求められているのです。
みかりん
再生可能エネルギーの課題を乗り越えるために、最新の技術や制度など、関西電力ではさまざまな取組みが行われています!ぜひプロジェクト記事についても読んでみてください!