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資源の分別やマイボトルの携帯、てまえどりの実践。そんな日常で取り組める社会にちょっと良い行動をするとポイントがもらえる。関西電力が生み出した社会貢献活動促進アプリ「モアクト」は、企業・団体・自治体の社会課題への取組みをアプリ上でミッションとして発信し、生活者の「ちょっとやってみようかな」を引き出すプラットフォームです。関西電力は2026年7月1日に「株式会社モアクト」を設立し、事業を開始しました。立ち上げから携わり、代表取締役社長に就任した小山陽平さんに、事業の舞台裏を聞きました。
画像1: 行動変容の社会インフラ企業を目指して。関西電力発スタートアップ・「株式会社モアクト」の挑戦

小山陽平
株式会社モアクト 代表取締役社長
関西電力の事業創出部門でソーシャルグッドアクションアプリ「モアクト」の立ち上げを担当。2024年11月のベータ版リリース以降、サービスの実証・改善を推進し、2026年7月1日の新会社設立に伴い代表取締役社長に就任。

報われない「頑張り」への気づき

画像1: 報われない「頑張り」への気づき

節電や省エネの還元プログラムの多くは、「ふだんの使用量からどれだけ減らせたか」に応じてポイントなどが還元される仕組みです。そのため、日頃からこまめに節電している人ほど、そもそも減らせる余地が小さく、還元を受けにくい。逆に、それまであまり気にせず電気を使っていた人の方が、いざという時に大きく減らせて、多くの還元を受けやすい。この逆転現象に、小山さんは以前から違和感を抱いていたといいます。

小山「私の家族もかなり節電を頑張っているんですが、実際に還元プログラムに参加してみても、思ったほど恩恵がないんです。『ずっと前から頑張ってきたのに、今から始めた人の方が得するなんて』とこぼしていて。世の中には、みんなが日頃やっている『いいこと』が、なかなか見えず埋もれてしまっているケースがたくさんあるんじゃないかと思ったんです」

普段から頑張っている人にこそ、ちゃんとお得が返ってくる仕組みをつくれないか。そんな発想が、モアクトの土台になりました。

画像2: 報われない「頑張り」への気づき

小山さんはもともと、蓄電池の最適運用など、AIを使って設備側から電力の安定供給を支える仕事に携わっていました。太陽光発電などを受け入れやすくするための業務です。

転機となったのは2022年の夏ごろ。社内で、家庭や生活者を巻き込んだ新規事業を模索する動きが持ち上がりました。当初は家庭用蓄電池の普及のような、エネルギー領域に閉じたアイデアも検討しましたが、それでは参加のハードルが高く、テーマもエネルギーに限定されてしまいます。

小山「やるならエネルギーのことだけに絞るのはもったいない、と考えました」

「徳を積み、得をする」仕組み

画像: 「徳を積み、得をする」仕組み

モアクトの仕組みはシンプルです。社会課題の解決につながる企業・団体・自治体のみなさまの取組みをミッションとしてご紹介。ユーザーは関心のあるテーマからミッションを選んで写真を送るだけ。審査の後、ミッションクリアでポイント(NORM)が貯まり、さまざまなギフトと交換できます。2024年11月の全国リリースから約1年半で、ユーザー数は10万人を超え、ミッションを提供する企業・団体は34、月に1回以上ミッションを実行するアクティブ率は約30%にのぼります(2026年6月時点)。

コンセプトの核にあるのは「徳を積み、得をする」という考え方です。この発想は、名前にも表れており、アプリ名であり社名でもある「モアクト」は、「モア・アクション」に由来しています。

小山「社会に良いことをしながら、自分にもきちんとお得が返ってくる。この両立を掲げたサービスは意外と少ないと思っています。普段からいいことをしていても、報われていないだけ。良いことをしたら報われる社会にしていきたい、というのが一番伝えたいことです」

背景には、社会貢献がどうしてもコストとして扱われがちで、企業の経済的なリターンに結びつきにくいという課題感もあります。

小山「ポイントという仕組みを入れることで、社会に良いことをするとお金が動くようになります。社会課題を解決すればするほど売上が上がる、という循環が生まれるのではないかと考えました」

行動の証明にあえて「写真」を使う、という発想は、実はメンバーの一人の提案から生まれたものでした。当初は電気を消したかどうかをスマート家電などで検知する案も検討していましたが、導入のハードルが高いことが課題でした。そこで出たのが「写真を送ってもらえばいい」というアイデア。スマホで日常の一コマを写真で撮影するということに慣れ親しんだ若手メンバーならではの着想でした。また、節電といった特定の社会課題に限定せず、あらゆる社会課題テーマを対象にしているのも特徴です。

小山「関西電力として生活者に伝えたいことがあっても、コストの壁で上手くできないという悩みは、他の企業や自治体も同じはずです。横断的に扱うほどスケールが効いて、みんなが安く、便利に使える仕組みになると考えました」

もっとも、パートナー企業の開拓もユーザー獲得も、簡単な道のりではなかったといいます。

小山「ユーザーを増やすこととパートナー企業を増やすことは、二大課題でした。モアクトの取り組みに共感してくださる企業はたくさんありました。ただ、社会貢献活動は売上に直結しにくく、実際にはそれ自体が収益になっていない企業がほとんど。共感していただくことと、実際に提携に踏み切っていただくことの間には壁があって、パートナー企業を増やすのは特に難しかったですね」

それでも1社、2社と実績を積み重ね、現在は電鉄、各業種のメーカー、認証ラベル団体、広島県など、幅広い企業・団体・自治体がパートナーに名を連ねています。

1年3カ月の実証を経て、新会社設立へ

画像1: 1年3カ月の実証を経て、新会社設立へ

モアクトの構想が動き出したのは2022年10月ごろ。翌2023年12月には非公開の小規模な実証を実施し、写真による行動証明へのユーザーの反応や、企業の関心度合いを確かめました。その手応えをもとに2024年11月、ベータ版としてアプリを開始し、2025年8月には全国に一般公開。約1年にわたり、ユーザーが増えるか、企業が投資に見合う価値を感じてくれるか、事業として持続可能かという3点を検証してきました。

小山「今年(2026年)の2月ごろに『いける』という見立てが立ち、社内の意思決定を経て、6月に会社設立が正式に決まりました」

画像2: 1年3カ月の実証を経て、新会社設立へ

実証期間中には、印象に残るエピソードも数多くあったといいます。ひとつは、精神的な不調で外出が難しかったユーザーが、モアクトのミッションをきっかけに少しずつ外に出られるようになったという声。また、夏の風物詩である「ひまわりを探そう」というミッションでは、あるユーザーから印象的な感想が届いたそうです。

小山「『昔はどこにでもあったのに、今は車で4、5キロ走ってようやく一輪見つけた。当たり前だったものが、いつの間にか失われていたことに気づいた』という声をいただいて。身近な季節の風景をはじめ、日本の良さを再発見するきっかけになればうれしいですね」

6月30日、「株式会社モアクト」設立に向けた記者発表会を開催

画像1: 6月30日、「株式会社モアクト」設立に向けた記者発表会を開催

2026年6月30日、株式会社モアクトの始動を発表する記者発表会が開かれました。関西電力代表執行役副社長の藤野が登壇し、関西電力グループの経営方針とモアクト事業のこれまでの歩み、新会社設立のねらいを説明。続いて小山さんが新会社のロゴや今後の展望を紹介し、共同研究を行う神戸大学、そしてパートナー企業であるECOMMIT、クラダシ、阪急阪神ホールディングス、TOPPANとのクロストークが行われました。

まだ食べられる食品等をおトクに販売するEC「Kuradashi」を展開するクラダシとの取組みでは、ミッションをきっかけに初めて「Kuradashi」を知ったという参加者が大半を占めるなど、これまでリーチできていなかった層との新しい接点が生まれたことが紹介されました。

画像2: 6月30日、「株式会社モアクト」設立に向けた記者発表会を開催

小山「『買った・買わなかった』で終わらないのが、モアクトの特徴だと思っています。認知や理解の接点を大きくつくれたことに加え、購入した人としなかった人の行動の違いまで見えてきた。クラダシさんとの取組みは、モアクトが目指す『知る→共感→行動→続ける』というサイクルを体現するものでした」

翌7月1日、「関西電力の社員」から「株式会社モアクトの代表取締役社長」となった小山さんは、次のように語ります。

小山「一人ひとりの行動は小さくても、積み重なれば社会は変わる。その思いで発想したサービスです。モアクト自身が誠実であり、信頼される存在であり続けることを大切にしながら、皆さんの小さなエネルギーを、企業や自治体の社会課題解決の取り組みとつなげていきたいと思っています」

AIで広げる、社会の「あたりまえ」

画像: モアクトのマスコットキャラクター「タネクト」のぬいぐるみの他、会社設立を記念して作成したというエコバッグとタンブラー(非売品)。

モアクトのマスコットキャラクター「タネクト」のぬいぐるみの他、会社設立を記念して作成したというエコバッグとタンブラー(非売品)。

新会社としてまず注力したいのは、生活者の行動データをより価値のあるものへと変えていくことだといいます。

小山「単に『やった・やっていない』ではなく、どうすれば消費者に受け入れてもらえるのか、どうすれば負担をかけずに意識や行動を変えられるのか。そこをAIも活用しながら解明していきたいと考えています。仮想のユーザー像である『仮想プロフィール』を用意し、デジタル上でミッションを試してもらうことで、都度インタビューを重ねなくても生活者の心理を追い、サービス改善に生かせる仕組みづくりを進めています」

画像: 大きな窓があり、見晴らし抜群のオフィス。みなさん、和やかな雰囲気でお仕事をされていました!

大きな窓があり、見晴らし抜群のオフィス。みなさん、和やかな雰囲気でお仕事をされていました!

また、少人数の組織だからこそ、AIを積極的に取り込みたいと小山さんは話します。

小山「現在、会社には18人しかいませんが、AIネイティブな組織へと変えていくことで、何倍もの人数がいるような感覚で新しい価値を生み出していきたいです」

10年後に描く未来像は、日常に溶け込んだサービスです。

小山「日本で知らない人がいない、何かしたいと思った時にすぐそばにあるサービスにしたい。地方創生や、昔の回覧板のような地域コミュニケーションの土台にもなりたいですね。夏休みの宿題をミッションとして出せるような、みんなのコミュニケーション基盤を、10年後には実現したいと思っています」

社会に良いことをしながら、自分の得にもつながっていく。そんな新しい「徳積み」の輪が、これからどこまで広がっていくのか。株式会社モアクトの挑戦は、始まったばかりです。

【関連リンク】
モアクト公式サイト

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