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兵庫県の西部・佐用町若州の集落は、2008年に住人がいなくなり廃村状態だった場所。そんな集落が、 2021年にまるごとグランピング施設として生まれ変わりました。その名も「glaminka SAYO(グラミンカ サヨウ)」。全国から集まった建築家がそれぞれつくりあげた4棟の古民家は、どれも異なる個性的な佇まいです。この施設に込められた想いとともに紹介します。

「glaminka SAYO」とは

鳥取自動車道「大原IC」から車で約15分。山道を進むと見えてくる小さな集落が「glaminka SAYO」です。ここで楽しめるのは、リノベーションされた古民家を一棟まるごと貸し切った「グランピング」。グランピングとはグラマラス(魅力的)とキャンピングを組み合わせた造語で、道具などを自前で用意しなくても気軽に楽しめるキャンプ体験のことを指します。

glaminkaでは朝・夕の食材はすでに用意されているので、備え付けのキッチンや囲炉裏などで自由に料理をしてのんびりと過ごせます。昼間は川のせせらぎや鳥のさえずりに耳を澄ませたり、夜は満天の星空のもとで乾杯をしたり焚き火を囲んだり……非日常の空間が広がっている場所が、「glaminka SAYO」なのです。

画像: 「glaminka SAYO」とは

なぜ古民家✕グランピング?

集落をまるごと再生してグランピング施設にする。そんな、ほかにはない取り組みに挑戦したのは、株式会社glaminkaの代表取締役・大西猛さんです。もともとは中学教員だったという大西さん。なぜglaminkaの立ち上げに至ったのでしょうか。

画像: 株式会社glaminkaの代表取締役・大西猛さん

株式会社glaminkaの代表取締役・大西猛さん

「子どもたちと過ごす時間は本当にかけがえのないもので、自分にとって教員は天職でした。しかし、ふと『大人がワクワクしている姿を子どもに見せ続けることも、自分の使命なのではないか』と思ったんです。そこで、かねてからの海外への憧れもあり、いくつになってもやりたいことを叶えて楽しそうにしている姿を子どもたちにも見せたいと考え、カナダへの留学を決めました」(大西さん・以下同)

当初、帰国をしたら教員に戻るつもりだった大西さんですが、海外生活は想像以上に刺激的で、いつしか「みんながワクワクする環境を作る人になりたい」と考えるように。そして、教員時代の採用同期である大野篤史さんとともに「笑顔が生まれる場所づくりをしよう」と、会社を立ち上げることに決めました。

画像: (左から)大西猛さん、大野篤史さん

(左から)大西猛さん、大野篤史さん

「最初の頃はインバウンド向けに一棟貸しの古民家宿を経営してはどうだろという話になりました。でも、普通に宿泊施設をやっても楽しくない。そんなときに、当時はまだ日本で浸透していなかったグランピングに出会いました。古民家って、家の中に釜戸があったり薪でお風呂を炊いたりと、アウトドアな生活に適しているんですよね。そこで、古民家とグランピングを掛け合わせたら面白いことができるんじゃないか、と」

こうして誕生したのが、「glaminka SAYO」に先駆けて2018年に産声をあげた、兵庫県神河町の「glaminka KAMIKAWA」です。この「glaminka KAMIKAWA」は、古民家一棟のみでスタートしました。

廃村がグランピング施設になるまで

「glaminka KAMIKAWA」のほかにはない取組みは瞬く間に注目され、「うちの古民家も使ってほしい」と、さまざまなところから問い合わせが押し寄せました。いくつか物件を見ていくなかで、大西さんと大野さんが二人揃って「ここだ」と感じたのが、現在「glaminka SAYO」が建っている、佐用町の若州(わかす)集落です。

画像: 当時の佐用町の若州集落の様子

当時の佐用町の若州集落の様子

「6つの民家同士の距離感がほどよく離れていて、宿泊施設にするには最適なバランスだと感じました。一棟でも欠けたら意味がない。それほどまでに一つの風景として集落が完成していたのです。大野は『この場所で楽しく過ごしているお客さまのイメージが、鮮明に浮かんだ』と言っていました。私も、この場所なら人の笑顔をたくさん生み出せると確信しました」

「glaminka SAYO」の特徴は、東京、京都、岡山、福岡から集まった建築家たちを中心に、学生を含む30人が4つのチームに分かれて4棟の古民家の再生に取り組んだことです。「glaminka KAMIKAWA」の立ち上げ時は資金がなく、プロの手を借りながら自分たちで改装をしたという大西さんでしたが、そのときに「みんなで楽しみながら作り上げるglaminkaは、まさに『笑顔が生まれる場所づくり』になっている」と感じたそう。だからこそ、佐用町のプロジェクトはチームを作って進めることにこだわったのです。

「自分が改装に関わった場所にはやはり愛着がわきます。参加してくださった方が『ここは自分が作ったんだ』と、うれしそうに人に紹介しているところを見ると、やってよかったという気持ちが湧き上がってきますね」

建築家こだわりの古民家4棟

そんな想いがたっぷり詰まった「glaminka SAYO」の宿泊施設は4棟。デザインした建築会社をそれぞれの施設名に冠しています。

「一つひとつはまったく異なる内装ですが、どの施設も改装する際に出た古材を再利用するなど、古民家の持ち味が消えないように工夫しています。だからなのか『新しいのに古さを感じる不思議な空間』とよく言われます。三世代で遊びに来てくれる方も多く、ご高齢の方は懐かしさも感じてくださるようです」

簡単にはくつろげない家!?「HAZ」

京都の「HAZ建築杜舎」が手掛けた「HAZ」は、床がでこぼこと隆起しているのが特徴。

「川辺や海辺は、石や流木が転がっていて一見するとくつろぎにくいですよね。でも、だからこそ自分の手で座る場所をクリエイトしていく楽しさがあります。訪れる人が自由に空間を利用して自分だけの居場所を作ってほしいという思いから、あえてこんなデザインにしました。それから、寝室の壁には生木をたくさん使い、コンクリートと木の不思議な調和を生み出しているのもポイントです。まるで異世界に来たかのような感覚が味わえます」

画像1: 簡単にはくつろげない家!?「HAZ」

また、HAZの眼前には山がそびえたっていて、窓から外の景色が見えません。そこで、室内にあるテーブルを丸形の鏡にし、そこに空が反射して見えるように設計しました。

画像2: 簡単にはくつろげない家!?「HAZ」

「見えないなら見えるようにしたら良いだけ。glaminka SAYOを作る上では、ネガティブをポジティブに変換させることも意識しています」

自由な発想でスペースをクリエイト!「handi」

東京の「HandiHouse」が手掛けた「Handi」は、大きな開口部が内と外をひとつなぎに感じさせるボーダーレスな空間が広がります。

「近年の建築は階段下の収納スペースを作るなど、余白がないように設計されることがほとんど。でも、handiではあえて“無駄”を作り、他の棟に比べると土間のスペースをかなり広くとっています。余白があることで、お客さま自身が過ごし方を考えられるからです。ダンスをしたり楽器を弾いたり、なかには浴衣やスーパーボールすくいなどを持参して夏祭り気分を味わう方もいました」

画像: 自由な発想でスペースをクリエイト!「handi」

焚き火やBBQ、日光浴以外にも、グランピングにはたくさんの魅力が潜んでいることを感じさせられる空間です。

繭(まゆ)に包まれた優しい空間「YOUBI」

岡山の「ようび建築設計室」が手掛けた「YOUBI」は、かつて養蚕業を営んでいた古民家を改装。糸が人との出会いを紡ぐような場所にしたいとの想いから、屋根裏には繭のモニュメントを作りました。リビングから見上げても、そのインパクトは絶大です。

さらに、リビングを抜けると真っ白な空間が広がります。

「繭の中をイメージし、壁には和紙を採用しました。小窓から差し込んだ光を優しく吸収し、室内全体を柔らかく包み込んでくれる効果があります。また、曲面をもたせた作りになっているので、声がよく響くのもポイントです」

開放感抜群! 木の温もりに触れる「maenomeri」

温かみのある木が特徴的な、福岡の「maenomeri works」が手掛けた「maenomeri」。入った瞬間に木材の香りが出迎えてくれます。さらに印象的なのは、入り口と出口が大きい透明の窓ガラスになっていること。

「圧迫感をなくすために、中から外まで視線が抜けるような設計にしました。方方から日光が降り注ぎ、自然を体感できる空間に仕上がっています」

画像: 開放感抜群! 木の温もりに触れる「maenomeri」

キッチンの壁には古材をモザイク上に貼り付け、さまざまな木の表情を感じられます。最も注目したいのは、土間にある大きな木のベンチ。実は、建築前にmaenomeriの前にそびえ立っていた大木をアレンジしています。

「だいぶ朽ち果てていて、処分したほうが良いのではという話が出ていた木です。ただ、長いこと集落を見守ってきた存在を無駄にするなんて考えられず、ベンチとして採用することにしました。今では家の中で、ここに訪れる人を優しく見守ってくれているはずです」

一味ちがう、極上の古民家グランピング体験を

現在は佐用高校の講師として、地方創生や起業についての講義も担当しているという大西さん。当初に掲げた「大人がワクワクしている姿を子どもたちに見せたい」という想いを、体現し続けています。

「glaminkaに訪れるお客と高校生の交流の場として、野菜の収穫やピザ作りを体験してもらうイベントも開催しています。glaminkaでの出会いをきっかけに佐用町に移住してくれる人が増えることはもちろん、佐用町に住む方々が笑顔になってくれたら、これほどうれしいことはありません」

画像: 一味ちがう、極上の古民家グランピング体験を

それぞれの棟でまったく違う過ごし方ができる「glaminka SAYO」。すべての棟をコンプリートしてもなおリピーターになるお客が多いのは、ただ泊まるだけではない、自由な楽しみ方が無限に広がっているからでしょう。唯一無二のグランピング体験を味わいに、佐用町に出かけてみませんか。

施設名glaminka SAYO
住所兵庫県佐用郡佐用町若州568-1
料金施設利用料29,800円、サービス料8,800円~/1人あたり
(小学生以下は割引あり。金・土・日曜、休前日、年末年始、春休み期間、ゴールデンウィーク、夏休み期間、シルバーウィーク、冬休みは1人あたり1,100〜5,500円が加算されます。詳しくはWEBをご覧ください)
WEBhttps://glaminka.com/sayo/
画像26: 廃村がまるっとグランピング場に。地方再生を助ける、古民家×グランピング「glaminka SAYO」

けいちゃん

魅力的な空間と面白い体験が詰まっていて、ワクワクが止まりません!!

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