エアコンの「送風」とは、風を送って空気を循環させる機能
エアコンの送風機能は、その名の通り、風を送るための機能です。暖房や冷房と違って、取り込んだ空気をそのまま送り出します。暖かい風や冷たい風を送るわけではないので、扇風機やサーキュレーターに似た機能だといえます。
送風機能を使って部屋の中の空気を循環させると、室内温度のムラがなくなり、部屋全体の温度を均一にするのに役立ちます。また、エアコンの吹き出し口の方向を変えることで、扇風機のように風を体に当てることもできます。
暖房・冷房や除湿機能との違いは?
送風機能と暖房・冷房、除湿機能の違いについて説明します。
暖房と冷房には、温風や冷風を出して室内の温度を上げたり下げたりする役割があります。除湿は、室内の水分を取り込んで、湿度を下げる機能です。「ドライ」と呼ばれることもあります。空気には、温度が下がると空気中の水分が減るという性質があります。この性質を利用したのが除湿機能です。
一方で、送風には、室内の温度や湿度を変える働きはありません。純粋に風を送るのが送風機能の役割です。
それぞれの機能の違いは下表の通りです。
名称 | 主な機能 | 温度 | 湿度 |
---|---|---|---|
暖房 | 温風を出して室内の温度を上げる | 上がる | 下がる |
冷房 | 冷風を出して室内の温度を下げる | 下がる | 下がる |
除湿 | 部屋の水分を取り込み室内の湿度を下げる | 下がる (エアコンの機種や機能による) | 下がる |
送風 | 風を送り、室内の空気を循環させる | 変化なし | 変化なし |
送風機能の電気代
送風機能は、暖房や冷房と比べて消費電力が少ないのが特徴です。暖房や冷房では、取り込んだ空気を暖めたり冷やしたりするのに電気を使いますが、送風では、取り込んだ空気をそのまま送り出すだけなので、消費する電気が少ないのです。そのため、送風機能の電気代は、暖房や冷房の電気代よりも少なくなります。
シャープのエアコン(形名:AY-S80X2)を例に挙げると、「プラズマクラスター送風運転」の消費電力が、1時間あたり16.9Wh※であるのに対して、暖房は2,650Wh、冷房は2,900Whとなっています。電気代の平均単価を1kWhあたり31円と仮定すると、1時間あたりの電気代は、送風は約0.5円、暖房は約82円、冷房は約90円です。
※約5畳~20畳相当の試験空間における実証結果
送風をつけっぱなしにした場合の電気代
前述した機種を例に挙げて、1日送風をつけっぱなしにした場合の電気代をシミュレーションします。送風機能の消費電力が1時間あたり16.9Wh、電気代の平均単価が1kWhあたり31円の場合には、1時間あたりの電気代が約0.5円になるため、1日(24時間)の電気代は約12.5円です。
なお、エアコンの消費電力はメーカーや機種によって異なり、電気代の単価は電力会社や契約している料金メニューによってもさまざまです。そのため、ここで紹介した電気代はあくまで目安と考えてください。
送風機能を上手に活用する方法
送風機能には、大きく分けて、①室温の調整、②カビの抑制、③換気という3つの用途があります。それぞれの活用方法とメリットについて、詳しく説明します。
①暖房や冷房と併用して効率的に室温を調整する
例えば、夏の暑い日には、外出先から戻るとすぐに冷房のスイッチを入れたくなってしまうかもしれません。しかし、送風機能で室内の空気を循環させてから冷房に切り替える方が、効率よく室温を下げることができるのです。
その理由は、前述の通り、送風機能には、扇風機やサーキュレーターのように室内の空気を循環させる働きがあるからです。送風機能であらかじめ空気の流れを作っておくことで、はじめから冷房をつける場合と比べて、冷たい空気を効率よく室内に行き渡らせることができるため、電気の使用量を節約できるのです。
暖房についても冷房と同様です。送風で空気の流れを作ってから暖房に切り替えることで、暖かい空気を効率的に室内に行き渡らせることができます。
②カビの発生をおさえる
冷房を使った後のエアコンの内部は、湿度が高くなって、カビが発生しやすい状態になっています。冷房の後に送風で運転すると、エアコンの内部を乾燥させることができるため、カビ対策に有効です。
冷房を使うシーズンの終わりごろに、送風で3~4時間運転し、エアコン内部をしっかりと乾燥させましょう。これだけでカビの発生をおさえる効果が期待できます。
エアコンは密閉性が高い家電のため、どうしても内部にカビが繁殖しやすいという特徴があります。資源エネルギー庁によると、長期間、エアコンを掃除しないで使っていると、異臭やアレルギー疾患の原因になるという報告もあるということです。家庭でできるエアコン掃除の方法や、プロによるエアコン掃除との違いについては、こちらの記事を参考にしてください。
③部屋の換気をする
室内の空気を入れ替えたいときには、窓を開けたまま送風機能を使うことで、効率よく換気することができます。部屋に窓が1つしかない場合には、送風機能を使って換気すると良いでしょう。
送風機能を使うときの注意点
いくつものメリットがある送風機能ですが、使用する際にはちょっとした注意点があります。これらの注意点を踏まえて、送風機能を上手に活用しましょう。
室温は変わらないので、寝るときの送風運転は注意する
前述の通り、送風機能には、温風や冷風を出す機能はありません。そのため、真夏の熱帯夜などに送風運転だけで就寝すると、室温が上がって寝苦しくなってしまう可能性があります。
室温が高い場所に長時間いると、夜でも熱中症になるおそれがあります。気温や体調と相談しながら、冷房と送風を適切に使い分けましょう。
送風だけではカビ対策にならない
エアコン内部のカビ対策としては、送風機能を活用するだけでなく、定期的にエアコン掃除を行うことが大切です。送風運転には、エアコン内部を乾燥させてカビの繁殖をおさえる効果がありますが、発生してしまったカビを取り除くことはできません。
エアコン内部のカビを取り除くには、プロにエアコン掃除を依頼するのがおすすめ。エアコンは精密な機器なので、無理に自分で掃除をしようとすると、かえって故障の原因になることもあります。自己判断でエアコンの分解や内部の掃除をするのではなく、プロにお任せするのが安心です。
送風機能がないときの対処法
送風機能がないエアコンの場合は、温度設定を調整することで送風運転をすることができる場合があります。例えば、室温が30℃以下のときに、リモコンの設定温度を一番高く設定して冷房運転をすると、送風運転になります。また、室温がリモコンの設定温度以下の場合は、冷房運転が自動的に送風運転になります。
上記はあくまで一例です。操作方法はエアコンの機種やメーカーによって異なるため、取扱説明書を確認するか、メーカーに問い合わせてみてください。
送風機能のことを知って上手に使い分けよう
エアコンの送風機能には、空気の循環によって室内の温度を均一にしたり、エアコン内部のカビの発生を抑えたりする効果があることがわかりました。これまで、送風機能を使ったことがないという人も、これを機に送風機能を活用してはいかがでしょうか。暖房・冷房と送風機能を上手に使い分けて、エコな暮らしを心がけましょう。
ゆっぴー
私はこれまで送風機能を使ったことがありませんでした...
これからは、目的に合わせてうまく活用していこうと思います!