今回は、たこ足配線による発熱・発火のリスクと、安全に使うためのポイントを、家電ライターの藤山哲人さんに詳しく聞きました。この記事を読めば、上手なたこ足配線の使い方がわかるようになるでしょう。
藤山 哲人
テレビやラジオ、Webや雑誌などで、面白便利でビックリ家電をご紹介している家電ライター。TBSテレビ「マツコの知らない世界」に番組史上最多の6回出演し、「体当たり家電ライター」と呼ばれている。
https://ameblo.jp/kaden-fujiyama/
https://twitter.com/Fujiyama_Tetsu
たこ足配線が危険な理由
「たこ足配線」とは、1つの壁のコンセントからいくつもの家電の電源をとること。複数のコンセントの差し込み口がある延長コードの「テーブルタップ」や、三角の形をした「三角タップ」をコンセントにつないで使うことも指します。
たこ足配線をすると、1つのコンセントに接続できる家電が増え、より多くの家電を使えるのでとても便利です。しかし、複数の家電を同時に使うと、コンセントが許容できる電気の上限を超えて、テーブルタップなどが発熱・発火してしまうおそれがあります。
テーブルタップを安全に使うためには、コンセントが許容できる適切な電流の範囲で電気を使うことが大切です。
簡単に確認できる計算式を説明する前に、まずはたこ足配線が危険な理由について詳しく解説します。
発熱・発火を引き起こす危険性がある
コンセントには、一度に使える電気の上限があります。テーブルタップにたくさんの家電をつないで、上限を超えて電気を使うと、テーブルタップが発熱・発火するおそれがあります。
発熱・発火の原因①定格電流を上回る使用
一般的な家庭の壁のコンセントは、1箇所あたり15アンペアが上限です。この場合、コンセントの差し込み口の数にかかわらず、差し込み口が2つの場合でも、3つの場合でも、合計15アンペアが上限となっています。
そのため、1箇所のコンセントにつなぐ家電の定格電流の合計が、15アンペアを超えないようにしなければなりません。ただし、家電の中には、電源を入れたときに瞬間的に定格電流を超えて多くの電流が流れるものもあります。例えば、ドライヤーやレーザープリンターなどは注意が必要です。こうした特性を考慮すると、1箇所のコンセントにつなぐ家電の定格電流の合計を13アンペア以内に抑えておくことが理想的です。
ところが、たこ足配線をしていると、どのコンセントにどの家電が接続されているのか、わかりにくくなります。1箇所のコンセントやテーブルタップにいくつもの家電が接続された結果、アンペアの上限を超えてしまい、発熱・発火を引き起こしてしまう危険があるのです。
発熱・発火の原因②トラッキング現象
「トラッキング現象」とは、コンセントとプラグの差し込み口の間に溜まったホコリが湿気を帯びてショートし、プラグが発火する現象のことです。トラッキング現象が起きると、火災につながるおそれがあるため、定期的にコンセント周りのホコリを掃除することが大切です。
また、100円ショップやホームセンターでは、家電の使用中でも使えるコンセントのカバーや、コンセントの差し込み口にシャッターがついたテーブルタップなどを販売しています。こうしたアイテムを使うと、コンセントの内部にホコリが入りにくくなるので、トラッキング現象を防ぐのに役立ちます。
発熱・発火の原因③劣化によるショート
テーブルタップにいくつもの家電をつないだり、テーブルタップにさらに延長コードを差し込んで使ったりすると、コードが引っ張られ、中の電線が切れてしまうおそれがあります。そこからショートして火花が出ることもあるので注意しましょう。
特に、プラグの差し込み口とコードが接する付け根部分は、長く使っているうちにちぎれかけたり、接触が悪くなったりしやすい箇所です。こうした箇所から劣化してショートする危険もあるため、なるべく引っ張らないように使いましょう。
電子機器の故障や寿命短縮のおそれがある
たこ足配線によって、テーブルタップの温度が高い状態にあると、接続された家電が正常に動作しなくなってしまう可能性があります。精密な電子機器であれば、故障したり寿命が短くなったりしてしまうリスクも考えられます。
【コラム】電気火災の件数
総務省が毎年発行している「消防白書」によると、2022年に発生した火災の原因のうち、電気機器による火災は1,960件、電灯電話等の配線による火災は1,494件、配線器具による火災は1,470件となっています。上位の原因は「たばこ」や「たき火」など直接火を使うものですが、電気も出火の原因となりうることがわかります。
【チェックリスト】たこ足配線を安全に使うための対策
たこ足配線のリスクを防いで、テーブルタップを安全に使うためには、テーブルタップやコンセントの電気の上限を計算することが重要です。その他にもチェックすべきポイントがあるので、解説していきます。
①電流の使用量が容量を上回っていないか
テーブルタップを使う際には、つなげる家電の定格電流「A(アンペア)」を合計して、上限に達しない範囲で使うようにしましょう。テーブルタップの上限は、最近は13アンペア程度に設定されていることが多いですが、テーブルタップ本体などに記載してある表記を確認しておくことが大切です。
家電によっては、「W(ワット)」で表記されていることもあります。その場合は、W(ワット)を100で割ることでA(アンペア)に変換することができます。
モーターを使った家電や海外製の家電では、定格電力が「VA(ボルトアンペア)」で表記されることがありますが、VA(ボルトアンペア)はW(ワット)と同様に、100で割ってA(アンペア)に変換し、計算しましょう。
②テーブルタップを8年以上使用していないか
テーブルタップは、一般的な家電と同じように約8年が寿命とされています。多くのテーブルタップ本体には製造年月が印字されていないので、購入した年月日をマジックなどで書き込んでおくとわかりやすいでしょう。8年を超えたテーブルタップは買い替えを検討することがおすすめです。
また、テーブルタップ自体のプラグの刃先が黒くなっている場合も、買い替えどきを知らせるサインだと考えましょう。
③プラグ、コンセントにホコリが溜まっていないか
トラッキング現象を防ぐために、つなぎっぱなしのテーブルタップや家電のコンセント付近にホコリが溜まっていないか、定期的に確認し、清掃するようにしましょう。
特に注意したいのは、冷蔵庫、電子レンジ、テレビやハードディスクレコーダー、ベッドサイドのランプなど、長年コンセントを差しっぱなしで、ホコリが溜まりやすい場所です。年に1回は掃除機でホコリを取りましょう。
④コードやプラグ、コンセントが熱くなっていないか
テーブルタップのコード全体を触ってみて、少しでも熱い部分があったら買い替えのサインです。お風呂くらいの温度ではなく、火傷するくらい熱い場合は、放置しておくと火災になる危険があります。特に、コードの付け根部分は断線しやすく、熱を持っていることがあるため、しっかりとチェックしましょう。
熱くなったコードを放置すると、ビニールが焼けるような異臭がすることがあります。これは、発火前の最後のサインなので、気づいたらすぐに使用をやめ、買い替えるようにしてください。
もしもの火災が起きたときの備え
たこ足配線の発熱・発火が原因で火災が起きてしまったら、初期消火が重要です。もちろん、火災に発展する前にテーブルタップを買い替えるなどして対策しておくことが大切ですが、万が一のときに備えて、必要な対策を紹介します。
消火器や消火スプレーを確認しておく
自宅に消火器や消火スプレーを用意し、また置いている場所を日頃から把握しておくようにしましょう。たこ足配線に限らず、万が一の火災に備えておくことは重要です。
ブレーカーの位置を確認しておく
コンセントの電源をもとから切るには、家庭内のブレーカーを落とす必要があります。ブレーカーが収められている分電盤の位置を知っておくと、いざというときに対処できるでしょう。
また、関西電力では、電気のトラブルに対して無料で駆けつける「はぴeでんきの駆けつけサービス」を提供しています。こうしたサービスを検討しておくこともおすすめです。
まとめ:テーブルタップの使用前には定格電流の計算をしよう
テーブルタップやコンセントを安全に使うためには、使用できる電気の上限を知っておく必要があります。この作業には少し手間がかかりますが、電気を安全・安心に使うためには大切なステップです。今回紹介したたこ足配線の注意点をしっかりと押さえて、正しい使い方を心がけましょう。
自宅のたこ足配線がもしかしたら危険な使い方になっているかもしれないと気づきました、、!すぐに正しい使い方に変えるようにします!