「エシカル」という言葉をご存じですか? ニュースなどで聞いたことがある人もいるかもしれませんが、初めて聞いた人も多いのではないでしょうか。また、「聞いたことはあるけど詳しくはわからない」という人もいることでしょう。そこで今回は、エシカルとは何か、わかりやすく解説します。SDGsとの違いや、エシカル消費が話題になっている理由についても説明しているので、読めばきっと、エシカルについて理解を深めることができるでしょう。
エシカルとは「倫理的」を意味する言葉
エシカル(ethical)とは、もともと「倫理的な」という意味の英語の形容詞です。倫理とは簡単にいうと、人として守るべき道のことを指します。最近では、もともとの意味から派生して、人や地球環境、社会などに対して配慮されているという意味合いで、エシカルという言葉を使うことが増えているようです。
エシカルに関連する言葉に「エシカル消費」があります。消費者庁は、エシカル消費を「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組んだりする事業者を応援しながら消費活動を行うこと」と定義しています。つまり、買い物の際、価格やデザインだけでなく、作られた背景やストーリーに配慮して、できるだけ社会的課題の解決につながる商品を積極的に選ぶという消費スタイルが、エシカル消費なのです。また、人や社会、環境を意識して作られた商品のことを「エシカル商品」といいます。
例えば、商品が作られて役目を果たすまでには、原材料の調達、製造、流通、消費、廃棄といったいくつものプロセスがあります。すべてのプロセスで発生するCO2排出量が少ない商品を選ぶと、地球温暖化の原因とされているCO2の排出量を抑えるのに役立つでしょう。また、商品の原材料の調達において、製造国で生産者の人権が尊重されているかなどを確認して購入することも、エシカル消費だといえます。
SDGs・サステナブルとの違い
ではエシカルは、SDGsやサステナブルと、どのような違いがあるのでしょうか? SDGs(Sustainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」のことであり、2015年に国際連合で採択された17のゴール(目標)があります。SDGsには貧困や飢餓、健康、教育といったさまざまな目標が含まれていて、エシカル消費はそのうちの一つ「ゴール12:つくる責任 つかう責任」に位置付けられています。
一方で、サステナブルとは、英語の“sustain(持続する)”と“able(可能な)”を組み合わせた言葉で、「持続可能な」という意味です。環境への負荷が少なく、将来世代にわたってずっと続けていけるような持続可能なあり方をサステナブルと呼びます。
SDGsを達成するためのサステナブルな取り組みにはさまざまなものがありますが、持続可能な条件の一つがエシカルだと考えるとわかりやすいでしょう。
エシカル志向が必要とされる2つの理由
近年、テレビやニュースなどさまざまな場面で、エシカル志向が重要視されるようになってきました。エシカル消費など、買い物の際にもエシカルかどうかを判断基準にする人も増えているとされています。その背景にはいったい何があるのか、説明します。
①ごみの増加などの環境問題を解決するため
日本では、1年間で東京ドーム約110杯分、4,095万トンものごみが処分されています。これを一人当たりに換算すると、1日890グラムのごみを排出していることになります。世界でもごみは増加の傾向にあり、世界銀行は「緊急対策が講じられなければ、世界の廃棄物は2050年までに現在のレベルより70%増加する」と警告しています。
ごみを処分するには、広大な土地と多くのエネルギーが必要で、環境に大きな負荷を与える恐れがあります。そのため、一人ひとりがごみの減量に取り組み、環境への負荷を減らすことが重要だとされているのです。こうした背景から、買い物の際にマイバッグを持参したり、割り箸や紙ストローを断ったりするエシカル志向が注目されています。
②人権問題や貧困などの社会的課題を解決するため
世界ではまだまだ低賃金で雇われた労働者や子どもが過酷な環境で労働を強制されているという現実があります。それを象徴するのが、2013年にバングラデシュで発生した縫製工場「ラナプラザ」の崩落事故です。過酷な環境で多くの人が労働を求められた結果、建物が倒壊し、1,000人を超える死者を出した世界最悪の労働災害です。
これらの問題は、商品の価格を抑えようとするあまり、違法な労働などによって低コスト化を図っていることが原因の一つだと考えられています。そのため、商品を適切な価格で販売し、生産者や労働者が対等に利益を得られるよう公正な取引を行うフェアトレードなどによって、社会的課題を解決しようという動きが生まれています。エシカル消費の必要性が高まっている背景には、こうした世界全体で社会的課題に対する問題意識があるのです。
エシカル消費3つの分類
エシカル消費は、大きく分けて「人や社会に配慮した消費」「環境に配慮した消費」「地域に配慮した消費」の3つに分類されます。3つの分類それぞれについて解説します。
①人や社会に配慮した消費
生産者や労働者など、関わる人や社会に配慮した消費のあり方です。発展途上国の生産者や労働者といった立場の弱い人にも利益が行き渡る、フェアトレードによる商品を購入することなどがこれに当たります。また、売上の一部を社会活動を行う団体に寄付する商品の購入や、障がいのある人が作った商品の購入なども、人や社会に配慮した消費だといえるでしょう。
②環境に配慮した消費
地球環境への負荷を減らすことを目的に、リサイクルされた商品などを購入することが環境に配慮した消費に該当します。環境にできるだけ負荷が少ない商品を選んで購入する「グリーン購入」が代表例です。また、農薬や化学肥料を使用しない有機農法で作られた農作物を購入することも、環境に配慮したエシカル消費に当てはまります。
③地域に配慮した消費
地域に配慮した消費の代表例は、地産地消です。地域で作られた産品を地域で消費することによって、輸送や保管などに伴う環境負荷を減らすことができます。それに加えて、地域の産業を応援することにもつながります。また、自然災害などによって被災した地域の産品を購入することも、特定の地域に配慮した消費のあり方です。
日常に取り入れやすいエシカル商品の具体例4つ
無理なく暮らしに取り入れやすいエシカル商品にはどのようなものがあるのでしょうか。近頃は、スーパーマーケットなどでもエシカル消費につながる商品がラインナップされていることがあります。ここではエシカル商品の具体例を4つご紹介しますので、ぜひ普段のお買い物の参考にしてみてください。
①エシカル食品
エシカル食品(エシカルフード)とは環境や社会に配慮された食品全般のことで、さまざまな種類があります。例えば、食品添加物や農薬の使用量が少なく健康に配慮された食品や、食品ロスを削減するために規格外の野菜を材料にしている食品などもあります。また、大豆ミートなど動物性の材料を使わずに植物性の原材料のみで作られた食品も含みます。
②エシカルファッション
近年、流行のデザインの衣服を低価格で販売するファストファッションが世界的に広がり、衣料の大量生産・大量消費が進んでいます。しかし、ファストファッションの拡大の裏には、過剰なコストダウンによって、前述のラナプラザ崩壊事故のような悲劇も起こっているという課題が指摘されています。そこで、できるだけ長く着続けることができる素材やデザインであるエシカルファッションが急速に拡大しています。中には、オーダーメードで衣服を作ることで、過剰な在庫を持たないというスタイルの衣服メーカーなども登場しています。
③エシカルグッズ
エシカルグッズとは、繰り返し使用でき、プラスチックごみを減らすのに役立つマイバッグやエコボトル、マイストローなどのこと。これまで使い捨てされていたものを繰り返し使用できるものに変えることで、ごみの発生を抑えることができます。コンビニエンスストアで配られるスプーンやフォークだけでなく、ホテルで使う歯ブラシやブラシなども、使い捨てを控えることが推奨されています。
④エシカルジュエリー
製造や加工の工程で、人や環境に負荷を与えないように配慮されたジュエリーのことをエシカルジュエリーと呼びます。貴金属や宝石は、鉱山などで掘り起こした原材料を加工して作られますが、採掘の際に児童労働や劣悪な環境での労働が行われるなど、社会問題が指摘されることがあります。こうした問題に配慮したエシカルジュエリーには、人工的に作られる合成ダイヤモンドなどがあります。また、古いジュエリーをリサイクルして新たなデザインに生まれ変わらせることも、エシカルジュエリーの一つだといえるでしょう。
まとめ:日々の生活にエシカルを取り入れよう
最近、ニュースなどで話題になることの多いエシカルというキーワード。その背景には、重要な社会的課題がいくつもあることがわかりました。エシカルな取り組みは決して難しいものではありません。エシカル消費をはじめ、マイバッグやエコボトルを持ち歩くこともエシカルなアクションの一つです。日常生活にエシカル志向を取り入れ、無理なく続けられるように心がけましょう。
持続可能な社会のためにも、エシカル志向が重要であることがわかりました!マイバッグやマイストローといったエシカルグッズを使うなど、できることからひとつずつ始めていけるといいですね!