珍しい雲を見つけて「あの雲は何という名前なのだろう」と気になったことはありませんか? 普段、雲の種類や名前を意識することは少ないかもしれませんが、実は、雲の基本的な形には10種類ものバリエーションがあるのです。そこで今回は、雲の種類や特徴、見分け方などについてわかりやすく解説します。雲についての知識が深まって、空を見上げるのが楽しくなるはずです。
雲は上層・中層・下層に10種類ある
まず、雲の種類を大きく分けると、発生する位置が高い方から「上層雲」「中層雲」「下層雲」の3種類があります。お天気の科学と呼ばれる気象学では、空を高い方から順に上層・中層・下層と呼び、上層は高度5,000~1万3,000メートル、中層は高度2,000〜7,000メートル、下層は高度2,000メートル以下 としています。つまり、空のどの高さで発生した雲なのかによって、大まかに上層雲、中層雲、下層雲に分けられるのです。
そこから、形状などの特徴によって、雲の基本的な種類はさらに10種類に分けられます 。これは、「十種雲形」と呼ばれ、国際連盟の専門機関である世界気象機関によって定義された世界共通の類型です。すべての雲は、この10種類のいずれかに当てはまります。
具体的には、もっとも高いところにある上層雲は、巻雲、巻積雲、巻層雲。真ん中の中層雲は、高積雲、高層雲、乱層雲。そして、もっとも低い下層雲には層積雲、積雲、層雲、積乱雲があります。積乱雲は下層から上層にわたって発達することもありますが、雲の種類を考えるときには、このように発生する高さによって整理するとわかりやすいでしょう。
上層の雲3種類
上層にある雲は、巻雲、巻積雲、巻層雲の3種類です。それぞれの雲について簡単に説明します。
①巻雲(けんうん)
巻雲(けんうん)は、地面を筆でサッと掃いた跡のような筋状をした雲です。この巻雲がまっすぐに広がっている場合には、その後、雨が降りやすく、乱れたように広がっていると、晴れになる可能性が高いとされています。
②巻層雲(けんそううん)
巻層雲(けんそううん)は、ぼんやりと空全体に広がる薄い雲のことで、「うす雲」と呼ばれることもあります。太陽の光をさえぎらないほど薄い雲ですが、西から広がっていき空全体を覆うような場合には、次第に天気が崩れることがあります。
③巻積雲(けんせきうん)
巻積雲(けんせきうん)は「うろこ雲」や「いわし雲」などとも呼ばれ、薄く小さな雲が魚のうろこのように連なった形状をしています。形が特徴的なため、見つけやすい雲だといえるでしょう。巻積雲は上空の気温の差によって起きる空気の流れによって発生します。この巻積雲が厚く広がると天気が崩れやすくなります。
中層の雲3種類
空の真ん中である中層にある雲は、乱層雲、高層雲、高積雲の3つです。中には雨をもたらす雲もあり、見分けられるようになると日常生活にも役立つかもしれません。
①乱層雲(らんそううん)
乱層雲(らんそううん)は雨をもたらす雲の代表格。どんよりとした濃灰色の層状で、太陽の光をさえぎってしまうほど分厚い雲です。低気圧が近づいてくると、西の空にまず巻層雲があらわれ、続いて乱層雲が発生して雨を降らせます。お出かけの際に乱層雲を見つけたときには、雨具を準備しておくのが賢明です。
②高層雲(こうそううん)
高層雲(こうそううん)は空全体をもやっと覆う層状をしています。一見、巻層雲に似ていますが、この高層雲は太陽の光をあまり通さないため、空全体がぼんやりと灰色っぽく見えます。高層雲が次第に厚みを増していくと雨になることが多いとされています。
③高積雲(こうせきうん)
高積雲(こうせきうん)は小さな塊状の雲が集まった形状をしていて、「ひつじ雲」とも呼ばれます。巻積雲と似たような形状ですが、巻積雲は上層にあるのに対して、高積雲は中層に発生します。この高積雲は個々の雲の塊が大きくなると、次第に天気が崩れますが、小さくなると晴れることが多いとされています。
下層の雲4種類
高度2,000メートル以下の下層にある雲は、積乱雲、積雲、層雲、層積雲の4種類です。
①積乱雲(せきらんうん)
積乱雲(せきらんうん)は「入道雲」や「かみなり雲」とも呼ばれ、みなさんも馴染みがあるのではないでしょうか。積乱雲が上に向かって白くモクモクと立ち昇る姿は夏の風物詩でもあります。分類としては下層の雲ですが、中には高さ1万2,000メートルの上層にまで到達するものもあります。大気の状態が不安定な場合に発生しやすく、夏の晴れた日には昼ごろに発生して夕立を降らせることもあるため、注意が必要です。
②積雲(せきうん)
積雲(せきうん)は晴れた日によく見られ、ふわふわとした見た目から「わた雲」とも呼ばれています。積雲の上部はドームのような形状をしていますが、下部は水平になっています。雲を形成する水滴の密度が高いため、太陽の光が当たっている部分は白っぽく、そうでない部分は灰色っぽく見え、色の違いがわかりやすいのも特徴です。
③層雲(そううん)
層雲(そううん)は下層に発生する雲の中でももっとも地表近くに発生します。形は灰色の層状で、霧に似ています。また、気象条件によっては、細切れにちぎれて発生していることもあります。層雲が出ると霧雨などが降ることがあります。
④層積雲(そうせきうん)
層積雲(そうせきうん)はいわゆる「くもり雲」と呼ばれる雲です。白色や灰色の大きな雲の塊が集まり、まだら状やロール状になって連なった形をしています。晴れた日にも見られますが、空一面を覆うように広がると雨や雪が降ることがあります。
積・層・巻・乱などの名前からわかる雲の特徴
雲の名前には「積」や「層」などが多く、覚えにくいと感じる人もいることでしょう。実は雲の名前を覚えるにはちょっとしたコツがあります。それは「積」や「層」などの言葉の意味を覚えてしまうことです。
まず、雲の名前に含まれる「積」や「層」は、雲の見た目を表す言葉。名前に「積」がつく雲は形がはっきりとしていて、「層」がつく雲は霧のように形がぼんやりとしています。次に、雲ができる場所を表す言葉には「巻」と「高」があり、「巻」は上層、「高」は中層という意味です。
この2つを合わせて考えると、形がモクモクとした雲は高い方から「巻積雲」「高積雲」「積雲」となり、形がぼんやりとした雲は高い方から「巻層雲」「高層雲」「層雲」となります。また、ぼんやりした形とはっきりした形の中間の雲が「層積雲」です。
天気を崩して雨をもたらす雲は名前に「乱」がつきます。灰色で雨を 降らすぼんやりした雲が「乱層雲」で、モクモクと大きく発達して雷雨をもたらすのが「積乱雲」です。このように、それぞれの言葉の意味を理解すると雲の名前がより覚えやすくなるでしょう。
見かけたら運がいい?珍しい雲5つ
雲の形は自然が作り出すもの。空を眺めていると、稀に珍しい形状をした雲を目にすることができるかもしれません。ここでは、十種雲形の中でも、珍しい形の雲を5つ紹介します。
①穴あき雲
その名の通り、薄く広がった雲の中に1ヶ所だけ穴が空いたようなものが「穴あき雲」です。雲を形成する水蒸気が一部分だけ凍り、それが地表に落ちることでぽっかりと穴が空いてしまいます。秋から冬にかけて、ごく稀に発生します。
②レンズ雲
中央が厚く外側が薄い、凸レンズのような形状をした雲です。強い風が山などの背の高い障害物にぶつかることで発生するため、風が強く吹く場所で時折見られます。
③スーパーセル
スーパーセルは、水平方向が数十キロメートルにも及ぶ巨大な積乱雲です。ゲリラ豪雨の原因の一つとされているうえ、竜巻や突風を引き起こすケースもあるため、注意が必要です。
④ベール雲
積雲や積乱雲などの上部にくっつくように発生するベール状の雲です。まるで白い布がおおいかぶさっているように見えることから名づけられたとされています。
⑤かなとこ雲
夏の積乱雲が発達する過程で、上部が平らに広がったものを指します。金属をハンマーでたたいて加工するための作業台「かなとこ」に似ていることから、この名前がつけられたそうです。通常の積乱雲と違って、強い雨を伴うことは少ないとされています。
まとめ:雲の種類を把握して天気を予測してみよう
普段、何気なく目にしている雲には、実は多くの種類があります。雲の種類や名前がわかると、空を見上げるのが楽しくなるでしょう。そして、中には大雨や竜巻などをもたらす雲もあるので、気象を予測するのに役立てるためにも、雲に関する知識を深めてはいかがでしょうか。
よしおちゃん
雲の名前につく「積・層・巻・乱」などの言葉の意味を理解すると、雲の種類を分類できそうですね!