私たちの暮らしを支える電気を発電する方法はさまざまです。火力発電や原子力発電のほか、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーを利用した発電など、日本でも多様な発電方法が取り入れられています。
そこで、ここでは、主要な発電の種類とそれぞれの仕組みについて、わかりやすくまとめて解説します。さらに、日本では今、どの発電方法がどれくらいの割合を占めているのかについてもご紹介していきましょう。
※この記事は2022年4月26日に公開した内容をアップデートしています。
発電方法の種類
電気をつくる発電方法には、大規模なものから小規模なものまで、さまざまな種類があります。ここでは、日本で活用されている主な発電方法について説明していきます。
火力発電
火力発電は、上図の通り、燃料を燃やして水を温めて蒸気にし、その蒸気の勢いによってタービンを回転させ、発電機を動かすという仕組みで発電しています。高温の蒸気でタービンを回す方式のほかに、燃焼ガスによって回す方式や、この二つの仕組みを組み合わせた方式などがあります。
2022年度は、日本の発電の79.8%を火力発電が占めており、火力発電は国内の電気を支える重要な役割を果たしているといえます。火力発電についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
火力発電のメリット・デメリットについてはこちらの記事で詳しく述べています。石油や石炭、液化天然ガス(LNG)といった燃料の種類や特徴によってもメリットやこれからの課題が異なるため、詳しくは以下の記事をご覧ください。
原子力発電
原子力発電の仕組みを簡単に説明すると、水を熱して作った蒸気によってタービンを回し電気を作る、という工程までは火力発電と同様の仕組みですが、火力発電との違いは、その蒸気を作る方法に違いがあります。火力発電が石炭や石油、液化天然ガスを燃やして熱を作るのに対し、原子力発電では、ウランの核分裂時の熱を利用します。
原子力発電の仕組みやメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
水力発電
水力発電は、上図のように水が高いところから低いところへ流れ落ちる位置エネルギーを使って電気を作る発電方法です。流れる水の力で水車を回し、発電機を回転させることによって電気を作り出します。
水力発電には、大きく分けて「発電方式による分類」と「構造物による分類」がありますが、その分類の中にもさまざまなものがあります。詳しくは以下の記事でご確認ください。
太陽光発電
太陽光発電の仕組みを簡単に説明すると、「太陽電池」を用いて太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みです。
特別な半導体で構成される「太陽電池」に太陽の光が当たると、マイナスの電気を帯びた「電子」とプラスの電気を帯びた「正孔(せいこう)」が、半導体(n型半導体とp型半導体)に集まり、電気の流れが生まれます。この仕組みを使った発電の方法が太陽光発電で、私たちが普段「ソーラーパネル」や「太陽光パネル」と呼んでいるものは、この太陽電池(太陽電池セル)が集まったものを指します。
太陽光発電の仕組みについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
風力発電
風力発電の仕組みを簡単に説明すると、風の力を使って風車を回し、回転するエネルギーを電気に変換する発電方法のことです。燃料などを必要とせず、風が吹けば電気を作ることができます。風力発電の詳しい仕組みや風車の形、大きさなどについては、こちらの記事で詳しく説明しています。ぜひご覧ください。
バイオマス発電
「バイオマス」とは、「生物、生物資源(bio)」と「量(mass)」を組み合わせた言葉で、動植物などから出る生物資源の総称です。具体的には、動物の排泄物や農作物の稲わらや麦わら、サトウキビやトウモロコシといった作物などが含まれます。
バイオマス発電では、こうした生物資源をガス化し、そのガスを燃やすことで電気をつくります。本来であれば捨てられていた生物資源を発電に利用できることから、バイオマス発電は循環型社会の構築や農山漁村の活性化にも役立つと考えられています。
地熱発電
地熱発電とは、簡単に説明すると、地下の地熱エネルギーを利用した蒸気で直接タービンを回し発電する仕組みです。天候などに左右されず、安定したエネルギーとして活用が期待されています。
コラム:再生可能エネルギーについて
こうした主要な発電方法のうち、水力、太陽光、風力、 バイオマス、地熱発電 は「再生可能エネルギー」に位置付けられています。「再生可能エネルギー」とは、将来にわたって使い続けられるエネルギーのことを指します。太陽の光や風などは、地球が活動を続ける限り存在すると考えられており、化石燃料のように資源が枯渇する心配がありません。発電の際に二酸化炭素(CO2)を大気中に増やすことがないエネルギー源とされています。
地球温暖化の原因は、人間活動による温室効果ガスの増加である可能性が極めて高いと考えられています。その大部分を占めるのが、CO2です。CO2は、気候変動を食い止めるために削減することが求められています。国も、2030年までにCO2排出量を2013年と比べて46%削減することを約束しています。
こうした背景があり、発電の際にCO2を増やさない再生可能エネルギーが大きな関心を集めているのです。再生可能エネルギーについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
日本における発電の割合は?
主要な発電方法の種類をご紹介しましたが、日本では今、どの発電方法がどれくらいの割合を担っているのでしょうか?
過去を振り返ると、日本のエネルギー需要が大きく伸び始めたのは1960年代以降でした。それまでは、国産の石炭火力発電でエネルギーの大半をまかなっていましたが、徐々に石油の割合が増えていきました。その後、1970年代の石油ショックをきっかけに、石油に代わるエネルギーとして、液化天然ガス(LNG)や原子力といった資源を活用するようになっていったのです。
そして、日本のエネルギー構造に大きな変化をもたらした2011年の東日本大震災以降、原子力発電の割合は大幅に減少します。2000年には、原子力発電は全体の3分の1以上を占めていましたが、一度2014年にゼロになったあと、世界でもっとも厳しい安全基準をクリアしながら徐々に増加していき、2022年度は6%程度となっています。
こうした原子力発電によるエネルギーの不足分を主に補っているのが、火力発電です。火力発電の占める割合は、東日本大震災前の2000年には全体の約半分ほどでしたが、2022年度の国内の発電量の実績は79.8%と大幅に伸びています。
また、水力発電や太陽光・風力発電などを含む新エネルギー発電は、2022年度には電源構成の約13.8%を占めるようになりました。国は、2030年度までに「石油火力2%程度、石炭火力19%程度、液化天然ガス火力20%程度、原子力20~22%程度、再生可能エネルギー36~38%程度」というバランスを目指しています。
多様な発電方法を組み合わせて電気の安定供給を図る
このように、私たちの生活を支える電気には多様な発電方法があることがわかりました。大規模な火力発電、原子力発電、水力発電や、住宅に導入することもできる太陽光発電など、それぞれに特徴があり、またメリット・デメリットもあります。
電気は暮らしや経済を支えるライフラインの一つであり、安定供給は電力会社にとって 至上命題といえます。多くの発電方法を組み合わせながら、それぞれのメリットを活かし デメリットを補い合うことで、常に電気を安心して使える環境が実現されているのです。
地球温暖化や気候変動といった世界的な課題に対処する必要がある今、発電方法にはこれまで以上に大きな関心が寄せられているといっても過言ではありません。大切なことは、私たち一人一人がそれぞれの発電方法の仕組みやメリット・デメリットを正しく知り、電気をより身近な存在として感じることではないでしょうか。
こうちゃん
地球のために、そして私たち自身の未来ために、いまの自分にできることは何か、どんなことができるのかを考え、行動しましょう!