※この記事は2022年4月19日に公開した内容をアップデートしています。
水力発電とは?
水力発電は、水が高いところから低いところへ流れ落ちる位置エネルギーを使って電気を作る発電方法です。
水力発電の仕組み
では、水力発電の仕組みについてより詳しく見ていきましょう。
まず、ダムに貯められた水は取水口から入って、水路を通ります。この水路を流れ落ちる勢いを使って水車を回します。この水車は発電機とつながっており、発電機が回転することで電気を作り出すのです。水の量が多く、流れ落ちる高さ(落差)が大きいほど、多く発電できます。
水力発電の発電の種類
水力発電の発電方法は、大きく分けて「運用方式による分類」と「構造物による分類」があります。「運用方式による分類」とは水を貯めるかどうかなど発電所の運用方法による分類のことで、「構造物による分類」とはダムの構造など発電所の形式による分類のことを指します。
運用方式による分類
①流れ込み式
河川の水を発電所にそのまま引き込み、発電します。自然の河川の水の流れを活用するため、この「流れ込み式」の水力発電にダムは必要ありません。そのため、建設にかかるコストを抑えられるメリットがあります。
一方で、河川の水をそのまま引き込むという特徴から、降水量の少ない時期には発電 量が減ってしまうという課題があります。
関西エリアでは、京都府の宇治川の水流を使った宇治発電所などがあります。
②調整池式
「調整池」と呼ばれる池に水を貯め、流れる水量を調整しながら発電します。常に発電し続けるわけではなく、短期間の電力需要の増減に合わせて発電量を調整する方式です。
例えば、夜間や週末など電気の使用量が少ないときには、調整池に水を貯めたままにして発電を控えます。
北陸エリアでは富山県の出し平ダムを使った音沢発電所などがあります。
③貯水池式
貯水池式も、調整池式と同様に電気需要の増減に合わせて発電量を調整することを目的とした発電方式です。ただし、調整池式よりも長期間の需要変動に対応することができます。
具体的には、春先の雪どけや梅雨の時期、台風の発生時期など、降水量の多い時期に貯水池に水を貯めておきます。こうして貯めた水を、電力が多く消費される夏や冬に放水して発電するのです。
“くろよん(黒四)”と呼ばれる黒部川第四発電所などもこの貯水池式に該当します。
④揚水式
発電所の高い位置と低い位置のそれぞれに貯水池を造り、上流の貯水池と下流の貯水池の間で水を移動させることで、発電のタイミングをコントロールする方式です。
例えば、電気を使う量が少ない深夜などには、上流の貯水池に水を汲み上げておき、電気が多く使われる昼間に水を流して発電します。
関西エリアでは、兵庫県にある奥多々良木発電所などがあります。
構造物による分類
①ダム式
ダムから水が流れ落ちる落差を利用して発電する方式です。ダムを作るのに適した場所は、川幅が狭くなっていて、両岸の岩が高くきりたったようなところになります。
降水量が豊富なときにはダムに水を貯めておけるため、発電量に応じて、流す水の量をコントロールすることができます。
ダム式は、貯水池式および調整池式の発電方式と組み合わせて利用されることが多いようです。
②水路式
川の上流に、水を堰き止めるための小さな堤を造り、そこから水を取り込みます。こうして取り込んだ水は、長い水路によって適当な落差が得られる場所まで運ばれます。このようにして、適度な高低差があるところから水を流し、発電する方式です。発電するために取り込まれる水量は、川の水量によって増減します。
水路式は、流れ込み式の発電方式と組み合わされることが一般的です。
③ダム水路式
①のダム式と②の水路式を組み合わせた発電方式です。ダムで貯めた水を引き込み、落差が得られる場所で電気を作ります。ダム式と同様に、水量が多いときには、ダムに水を貯めておくことができるため、流す水量をコントロールしやすいのが特徴です。こうしたコントロールによって、電力の需要に応じて発電することができます。
ダム水路式は、貯水池式や調整池式、揚水式の発電方式と組み合わされることが多いで
コラム:黒部ダムは、なぜたくさんの電気を作れるの?
自然豊かな富山県の東部を流れる黒部川には、「くろよん」の愛称で親しまれる関西電力の水力発電所「黒部川第四発電所」をはじめ12もの水力発電所があります。
なぜ、黒部川にはこのようにたくさんの発電所があるのでしょうか。その答えは、黒部川の豊富な水量と急峻な地形にあります。黒部川は、3,000メートル級の山々が連なる「日本の屋根」と呼ばれる立山連峰に位置しています。そのため、上流と下流の高低差が大きく水力発電に適しているとされ、水力発電の開発が古くから行われてきたのです。
水力発電のメリットと課題
それでは、水力発電にはどのようなメリットがあるのでしょうか。また、水力発電が抱える課題への対策についても、わかりやすくご紹介します。
メリット
水力発電は、他の電源と比較して非常に短い時間で発電を開始(3~5分)することが可能です。そのため、電力需要の変化に素早く対応することができる(流れ込み式を除く)というメリットがあります。
また、エネルギーを無駄なく使えることも特長として挙げられます。水を上から下へ流す際に生まれるエネルギーの約8割を電気に変えることができるのです。一般的な火力発電では、エネルギーの約3~4割しか電気に変えることができないことを考えると、効率のよい発電方法だといえるでしょう。
次に、水力発電は、電気を作る際に二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンなエネルギーです。また、発電のための燃料を海外からの輸出に頼ることがなく、枯渇することもありません。
課題と対策
一方で、水力発電には乗り越えるべき課題もあります。その一つが、すでに多くの場所で開発が進められているため、新たなダムを建設できる場所が少なく、建設には膨大な時間やコストがかかる点です。こうしたことを踏まえ、発電に利用されていない既存のダムに発電設備を設置したり、老朽化が進んだ発電設備を新しいものに取り替えたりすることで、発電効率や出力を増加させる取組みが行われています。
また、ダムによって生態系や環境に影響が出ることもあります。そのため、河川環境を維持するために必要な流量を放流したり、魚の上流への遡上を助ける「魚道」と呼ばれる魚 専用の通路を造ったりする など、生態系を壊さないさまざまな工夫を行っています。
エネルギーを効率よく使えるクリーンな水力発電
水が流れる力を効率よく使う水力発電は、エネルギー変換効率が高く、発電の際に CO2を排出しないクリーンな発電方法です。また、水力発電にはダムや水路を活用するものなど、立地や用途に応じたさまざまな方式があることもわかりました。
その一方で、新たなダムを建設できる場所が限られていることから、水力発電所を造るためには、大きな時間や費用が発生してしまう状況であることも事実です。こうした課題に対しては、発電設備のないダムに発電設備を設置したり、すでにある水力発電所の発電効率や出力を向上させたりするなどの対策が進められています。
みなぱん
約130年の歴史がある水力発電も、まだまだ進化を続けています!