実は、火力発電の燃料にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴があります。しかし、どの燃料にも量に限りがあり、将来なくなってしまうおそれがあるのです。
そこで今回は、日本の発電量のうち、火力発電がどれくらいの割合を占めているのか、火力発電の燃料の使用量や種類について説明します。
※この記事は2023年3月15日に公開した内容をアップデートしています。
エネルギーの使用割合と消費量を円グラフで解説
はじめに、日本ではどのような種類のエネルギーが使用されているでしょうか。資源エネルギー庁が定期的に発表している統計データによると、2024年2月末に公表された、2022年度の国内の発電量の実績は次の通りです。
火力発電:使用割合79.8%
日本で使用される電気のうち、もっとも多くを占める発電方法が火力発電で、2022年度の使用割合は79.8%に上ります。
火力発電で使用される燃料の種類は、主に石油、石炭、液化天然ガス(LNG)の3種類です。これらの燃料の種類については、後述で詳しく説明します。
火力発電の仕組みやメリット、課題などについてより詳しく知りたいという人は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
水力発電:使用割合10.0%
水力発電とは、水が高いところから低いところへ流れ落ちる位置エネルギーを活用して電気を作る発電方法のことです。ダムを活用した水力発電は古くから行われており、通称“くろよん”と呼ばれる黒部川第四発電所も水力発電所の一つです。2022年度の使用割合は10.0%となっています。
水力発電には、エネルギーを無駄なく使えることのほかに、3〜5分と非常に短時間で発電できるなどのメリットがあります。水力発電のメリットや課題については、こちらの記事をご覧ください。
原子力発電:使用割合6.4%
原子力発電では、ウランという物質を燃料に使って発電します。電力を安定して供給でき、発電時に地球温暖化の原因と考えられている二酸化炭素(CO2)を発生しないなどのメリットがある発電方法です。2022年度の使用割合は6.4%となっています。
原子力発電がどのような仕組みで電気を作るかなどについては、こちらの記事で詳しく説明しています。
新エネルギー:使用割合3.8%
資源エネルギー庁の統計データでは、太陽光、風力、地熱、バイオマスを使った発電方法を新エネルギーと位置付けています。これらの新エネルギーの使用割合は、2022年度で3.8%となっています。
新エネルギーである再生可能エネルギーの種類や発電方法については、こちらの記事で詳しく説明しています。メリットや課題について知りたいという人は、ぜひチェックしてみてください。
火力発電に使用する燃料の発電量割合
火力発電では主に石油、石炭、LNGといった3種類の燃料を使用します。
2022年度の燃料別の発電実績は、LNGがもっとも多く45.4%、次に石炭が42.2%となっています。もっとも少ないのが石油で3.2%でした。2021年度と比べると、LNGの割合が増え、石油の割合がわずかに減っています。
参考:資源エネルギー庁「統計表一覧 2022年度 発電実績」
資源エネルギー庁「統計表一覧 2021年度 発電実績」
燃料の輸入先
日本は、火力発電の燃料をどこから輸入しているのでしょうか。
まず、石油については、9割以上をサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東からの輸入に頼っています。そのため、中東の情勢が混乱して原油価格が上がると、ガソリンなどと同様に火力発電の燃料価格も上昇してしまうリスクがあります。
また、石炭の約7割、LNGの約4割をオーストラリアから輸入しています。LNGについては、オーストラリアだけではなくマレーシアなどの東南アジアからも輸入しており、比較的、輸入相手国の偏りが少ない燃料だといえるでしょう。
参考:エネ百科「【1-2-04】 日本が輸入する化石燃料の相手国別比率」
火力発電に使われる燃料の種類
効率よく発電するためには、燃えやすく、より多くのエネルギーを得られる燃料を使う必要があります。現在、火力発電所で主に使われている石油、石炭、LNGの3種類の燃料の特徴をご紹介します。
石油
石油は、プランクトンの死がいが何千万年もかけて変化したものだといわれています。海の底に積み重なったプランクトンの死がいは、いつしか海中の土の中に埋もれ、地熱などの影響によって石油へと変化していくのです。
石油には、LNGや石炭に比べて扱いやすく、運びやすいというメリットがあります。しかし、価格がほかの燃料に比べて高いため、2022年度時点では、火力発電の燃料の中で、もっとも利用されている割合の少ない燃料です。
石炭
石炭は、枯れた植物が、長い年月を経て土の中で岩や石のように変化したものです。
日本のエネルギー自給率は2019年度で12.1%と、先進国の中でも低い水準ですが、石炭は国内でも採取することができます。かつては国内にも多くの炭鉱がありましたが、コスト面の問題などから、現在、燃料として利用されている石炭のほとんどを海外から輸入しています。
参考:資源エネルギー庁「2021—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
液化天然ガス(LNG)
大昔の動物や植物の死がいは、土の中でガスに変化します。このガスを汲み上げてマイナス162度まで冷やすと、液体になります。これが、LNGです。
汲み上げたガスを冷やして液体にするのは、体積を小さくするためです。
LNGは、石炭や石油に比べて、燃やしたときに排出される二酸化炭素(CO2)等が少なく、1970年代から利用され始めた比較的新しい燃料です。
燃料ごとの主なメリット・デメリット
石油・石炭・LNGには、それぞれメリットとデメリットがあります。
経済性、調達の柔軟性、環境性それぞれから比較してみましょう。
経済性においては、需要と供給の変動や地政学リスク等によって変動はあるものの、一般的には石炭がもっとも優れており、次いでLNG、石油の順となっています。低コストの燃料を使用する発電所から順に稼働したり、より経済性が高い燃料を調達することで、発電コストを下げることができます。
調達の柔軟性で考えると、貯蔵しやすく契約期間が短い燃料ほど、必要な数量の増減に対して細かく対応することができ、柔軟性が高い燃料といえます。貯蔵しやすい石油は調達の柔軟性が高く、反対に、貯蔵に手間がかかるLNGは調達の柔軟性が低いとされています。
環境への負荷の面から見ると、CO2の排出量が少ないLNGが比較的クリーンな燃料といえます。
これらの燃料は、どれが優れていて、どれが劣っているといったものではありません。どれか一つに絞るのではなく、メリットとデメリットを補い合えるように、バランスよく利用する必要があります。
燃やしてもCO2を排出しない燃料も
現在、火力発電の燃料として主に利用されている石油・石炭・LNGは、排出量に差はあるものの、どれも燃やすことでCO2を排出します。
そこで注目したいのが、燃やしてもCO2を排出しない、水素やアンモニアを用いた火力発電です。日本では、このような燃料を使った火力発電所や、工場から排出されたCO2を回収し、貯蔵または資源として再利用する「CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」といった技術の確立を進めています。
火力発電の燃料は枯渇しないの?
火力発電の燃料は、どれも自然にできたものですが、使う量が作られる量を上回っていれば、いつかはなくなってしまいます。
2019年度末の統計によると、もっとも長い石炭でも132年、石油とLNGについては、約50年で底をついてしまうという試算がなされています。現状のスピードで使用していては、どの燃料も近い将来、なくなってしまうでしょう。
今の安心した暮らしを維持するためには、エネルギー資源の安定的な確保について一人ひとりが意識し、限りある資源を大切に活用していく必要があります。
参考:関西電力「燃料について」
まとめ
火力発電は、日本の電力供給を支える重要な発電方法です。火力発電をおこなうためになくてはならないのが、石油や石炭、LNGといった燃料です。
火力発電所の燃料は、日本や世界のエネルギー事情を反映して移り変わってきました。その中で電力会社は、もっとも効率よく発電できるよう、それぞれの燃料を組み合わせて発電をおこなっています。
今後、燃やしてもCO2を排出しない水素やアンモニアを用いた燃料や、さまざまな発電方法を組み合わせたエネルギーミックスの推進など、限りある火力発電の燃料に代わる選択肢を検討していく必要があります。地球環境に配慮しながら、私たちの生活を維持するために、より良い可能性を探っていきましょう。
みなぱん
それぞれの燃料の特徴を踏まえて、1種類に頼ることなく運用することが大切です!