ここでは、発電のメリットや課題、仕組みについてわかりやすく解説します。安心安全、便利な生活を、次の世代までつなげていくために、日本で行われている火力発電について知識を深めましょう。
※この記事は2022年3月29日に公開した記事をアップデートしています。
火力発電の仕組み
火力発電が「燃料を燃やして電気を作る発電方法」というのは、多くの人が知っていることでしょう。それでは、どうして燃やすと電気ができるのでしょうか?
簡単にいうと、火力発電では以下のようなステップで電気を作っています。
1.石油や石炭、液化天然ガス(LNG)などの燃料をボイラーで燃やす
2.ボイラー内を通した配管に流れる水を沸かして蒸気を作る
3.蒸気の勢いでタービンを回す
4.タービンが回る力で発電機を動かす
5.発電機が電気を作る
「ボイラー」は水を沸かす機械のことです。また、「タービン」はたくさんの羽根がついた大きな回転式の機械で、蒸気の熱エネルギーを運動エネルギーに変えることができます。
タービンを動かすために使われた蒸気は、その後、冷やされて水に戻り、配管を通って再び熱せられて、蒸気になります。このように、火力発電では水を循環させながら電気を作っているのです。
火力発電の燃料については、別の記事で詳しく説明しています。「もっとよく知りたい!」という方は、こちらをご覧ください。
火力発電のメリット
火力発電は、日本でもっとも多く利用されている発電方法です。これほど広く利用されているのは、それだけの理由があるからだといえるでしょう。火力発電の主なメリットを紹介します。
メリット1 発電量が安定している
電気は基本的に貯めておくことができないので、その都度使う分を発電しなければいけません。ところが、太陽光発電や風力発電といった、自然の力を利用して発電する方法は、天候などによって発電量が左右されてしまいます。
その点、火力発電は燃料を燃やすことで電気を生み出すため、燃料がある限り安定的に発電することができるのです。
メリット2 出力調整が容易である
火力発電は、燃料を増やしたり減らしたりすることで、発電量を調整することができるため、季節や時間帯によって変動する電力消費に柔軟に対応できます。
また、天候などの要因によって太陽光や風力などの再エネ由来の電力が計画通りに発電ができず、供給力が不足して需給バランスが崩れるといった場合でも、火力発電による出力を増加させることで需給バランスを補うことができます。
刻々と変化する電力需要に対応するため、出力の増減を細かく・素早くコントロールしやすい火力発電は大変重要な電源といえるでしょう。
メリット3 エネルギー変換効率が比較的高い
そもそも、火力発電に限らず、電気を作る際は、「別のエネルギーを電力に変える」ということをしています。このとき、どのくらい効率よくエネルギーを変換できるかを示すのが「エネルギー変換効率」です。
こちらは、発電方式別のエネルギー変換効率を示すグラフです。
火力発電は、水力発電の次にエネルギー変換効率が高い発電方法であることがわかります。エネルギー変換効率が高いほど、元のエネルギーから電力に変換される際に失われるエネルギーが少なく、効率的に発電できるのです。
火力発電の課題
国内の多くの電気を作り出している火力発電ですが、課題がないわけではありません。
火力発電の3つの課題と、その課題を解決する方法について解説します。
課題1 二酸化炭素(CO2)等を排出する
燃料を燃やすことで生み出される“CO2”。
火力発電も、石炭や石油、液化天然ガスといった化石燃料を燃やすことで電気を作り出しています。そのため、発電するときには大量の燃料を燃やし、CO2を排出することになります。
以下は、発電方法によるCO2の排出量を示すグラフです。
参考:電力中央研究所「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価」(2016)
グラフを見ると、火力発電はほかの発電方法に比べて、CO2の排出量が多いことがわかります。
地球温暖化の原因は、人間活動による温室効果ガスの増加である可能性が極めて高いと考えられています。人間が排出する温室効果ガスの、大部分を占めるのがCO2です。CO2は海水の温度の上昇や海面の上昇、気候の変化など、さまざまな影響をおよぼします。このような影響を最小限にとどめ、地球環境を守るために、世界中の国々が温暖化対策に乗り出しています。
2023年11月30日から12月13日にかけて、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦・ドバイで開催されました。現在、世界の平均気温は1800年代後半に比べてすでに1.1℃上昇しているとされています。温暖化対策として、産業革命前からの世界の気温上昇を1.5℃に抑える、いわゆる「1.5℃目標」が世界共通の目標です。COP28では、各国のCO2削減の進捗を評価し、CO2排出量を2030年までに43%、2035年までに60%削減し、2050年にカーボンニュートラルを目指すことが改めて確認されました。
火力発電のCO2排出量をおさえる(低炭素化)ため、さまざまな取組みがなされています。例えば、排出されたCO2を地中深くに閉じ込める「CCS」という技術や、分離・貯留したCO2を利用する「CCUS」といった技術の開発が行われています。
課題2 燃料調達の大部分を海外に頼っている
「エネルギー自給率」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは、それぞれの国がどのくらいエネルギーを国内で調達できているかを示すものです。
たとえば火力発電であれば、燃料となる石油や石炭、液化天然ガスといった燃料を国内で調達できる量が、エネルギー自給率につながります。
この表を見るとわかるように、日本のエネルギー自給率は、他の国と比べても非常に低く、日本同様に国内の化石燃料が乏しいとされる韓国よりもさらに下回っています。
日本は電気の多くを火力発電でまかなっていますが、石油や石炭、液化天然ガスといった火力発電に必要な資源は、国内にはほとんどありません。そのため、輸入に頼らざるを得ないという現状があります。
課題3 化石燃料は有限資源である
火力発電の燃料となる石油、石炭、液化天然ガスなどは「化石燃料」と呼ばれているものです。これらはもともと日本にはなく、輸入元の国の燃料資源も、無限にあるわけではありません。
2019年度末の統計によると、現在と同じ量の燃料を使い続けた場合、石炭は132年、石油は50年、液化天然ガスは49.8年で使い切ってしまうといわれています。
今後、これまで発見されていなかった新しい油田、炭田、ガス田が発見されたり、燃料の使用量が減ったりすれば、燃料がなくなるまでの期間を延ばすことはできるでしょう。しかし、それでも燃料が有限であることに変わりはありません。
参考:関西電力 燃料について
課題を補うためには?
課題を補うために考えられるのが、環境への負担が少ない発電方式への切り替えです。火力発電の中でも、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「コンバインドサイクル発電方式」であれば、従来の発電方法よりもエネルギー効率がよく、CO2の排出量も減らすことができます。
コンバインドサイクル発電方式については以下のページで詳しく説明しています。
関西電力の堺港発電所や、姫路第一発電所、姫路第二発電所では、コンバインドサイクル発電方式が導入されています。
火力発電の種類・発電方法
火力発電の種類や発電方法には、以下のようなものがあります。
汽力発電
汽力発電とは、蒸気の膨張力を利用した発電方法です。天領を燃やした熱で高温・高圧の蒸気を作り、この蒸気で蒸気タービンを回転させます。現在、火力発電所の発電方法として一般的な方法です。
コンバインドサイクル発電
前述のとおり、汽力発電とガスタービン発電(燃焼ガスでタービンを回転させる方法)を組み合わせた発電方式です。エネルギー効率がよく、従来と同じ量の燃料でより多くの電気を得ることができます。
ACC発電
ACCとは、「アドバンスト・コンバインド・サイクル」の略。日本語では「改良型コンバインドサイクル」と言います。燃焼温度が1300℃級と高く、よりエネルギー効率や省エネ性能などがよいのが特徴です。
MACC発電
ACC発電のエネルギー効率をさらに高めたものが、MACC(モア・アドバンスト・コンバインド・サイクル)発電です。燃焼温度が1500℃級で熱効率が高く、化石燃料の使用量を減らすことができることから、CO2排出量を抑制できるメリットがあります。
内燃力発電
内燃力発電では、シリンダー内部で直接燃料を燃やし、ガスの圧力でピストンを動かして発電機を回して発電します。他の発電方法と比べて、発電機の起動や停止が素早いという特徴があります。国内の離島の多くで内燃力発電が使用されています。
さまざまな発電方法を組み合わせたエネルギーミックスを推進
これまでに見てきた火力発電の課題を補うために、さまざまな発電方法をバランスよく組み合わせ、それぞれの特徴を最大限に活用した「エネルギーミックス」が進められています。
今後は、環境性、供給の安定性、そして燃料にかかるコスト等の経済性などの観点から総合的に検討し、必要な電力量とのバランスなどを取りながら調整していく必要があるでしょう。
みなぱん
カーボンニュートラルの実現に向けて、火力発電もまだまだ進化を続けています!