NEWS!!

かんでんWITH YOU 公式LINEアカウントが開設されました !

くわしくはこちら
発酵のまちとして知られる長野県 木曽で、「三浦ダム発酵食品プロジェクト」が始まってから早一年。プロジェクト担当者の西村さんからこんなメッセージが届きました。
画像1: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

今度、三浦ダムで熟成させた発酵食品の評価会があるんです。木曽まで味を確かめに来ませんか?

答えはもちろんYES! ダムからの“蔵出し”、そして評価会まで、みかりんが同行してきました。

自然豊かな秘境の地、三浦ダム

待ち合わせの場所は、JR木曽福島駅。新大阪駅からは約2時間半の道のりです。改札を出てすぐ目の前に広がる新緑に、自然と吸う息が深くなってーと、リラックスできたのも束の間……。

画像1: 自然豊かな秘境の地、三浦ダム
画像2: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

じゃあ、行きましょうか! のんびりしている暇はありません。三浦ダムまで車で2時間かかりますからね。

2時間も! 木曽まで来た達成感を味わっていたことは隠して、車に乗り込みます。

木曽郡王滝村、王滝川の最上流部に三浦ダムはあります

駅を離れ、どんどん山深くへ進んでいきます。道は細くなり、車窓から見える景色は緑一色に。無事に帰ってこられるのかな……。不安を覚え始めた頃、ふいに停車したのでダムに到着したかと思えば、ここはどこ?

画像2: 自然豊かな秘境の地、三浦ダム
画像3: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

ここは「自然湖」です。1984年の長野県西部地震によって、王滝川の流れがせき止められてできた天然の湖なんですよ。湖面から突き出ているように見えるのは “立ち枯れ”の木。地震の前までここにあった木が、環境が変わり、枯れてなお根を張っているんです。

神秘的な光景と、自然の偉大さに圧倒されながら、さらに車に揺られること1時間。スマホの電波も途絶えかけたその時、ようやくダムが姿を現しました!

画像3: 自然豊かな秘境の地、三浦ダム

御嶽山の山麓、まさに秘境の三浦ダム。パッと開けた視界に、雄大な景色が飛び込んできました。透き通った青空、穏やかに揺れる水面、心が洗われるようです。

画像4: 自然豊かな秘境の地、三浦ダム
画像4: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

水力発電関係者の中で、東海エリアと北陸エリアは「水力発電のメッカ」と呼ばれてるんです。三浦ダムは一般の方は立ち入れない場所にあるので、あまり知られていないのが残念ですが、建設がはじまった戦前から、今に至るまで関西地域を支える電力源なんですよ。

そんな三浦ダムの内部に、発酵食品が貯蔵されているというのも不思議な話。どんな様子になっているのかワクワクしながら、貯蔵場所へと向かいます。

いざ、ダムの内部へ! 発酵食品を“蔵出し”

貯蔵場所となっているのは、堤防の内部を通る「監査廊」。中に入るとひんやり涼しい。監査廊は1階から3階まであり、少しずつ気温が異なります。このプロジェクトでは、気温と熟成具合の関連性を検証するために、フロアごとに発酵食品を貯蔵しているのだそう。

画像: 貯蔵場所の様子。監査廊は1階 約9℃、2階 約11度、3階 約12℃前後で保たれています。 ※5月21日(取材日)の気温は、木曽福島で最高26.6℃

貯蔵場所の様子。監査廊は1階 約9℃、2階 約11度、3階 約12℃前後で保たれています。
※5月21日(取材日)の気温は、木曽福島で最高26.6℃

貯蔵されている発酵食品は、木曽の地元事業者が作った「日本酒」「ゴーダチーズ」「味噌」。一つひとつ品質を確かめながら運び出していきます。

翌日に開催される評価会のため、車に積んで山を下ります。

画像: いざ、ダムの内部へ! 発酵食品を“蔵出し”
画像6: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

蔵出しに参加した、関西電力と木曽町役場の担当者で記念撮影。評価会が待ちきれません!

ダムで熟成した発酵食品の風味とは? 評価会に潜入!

翌日、木曽町文化交流センターで評価会が開催されました。評価会では、三浦ダム発酵食品プロジェクトに携わる関係者(※)が一堂に会します。そんな中、特別に評価員として席を用意していただきました。

※木曽町役場、王滝村役場、木曽おんたけ観光局、長野県工業技術センター、木曽町地域資源研究所、木曽町地域おこし協力隊、発酵事業者の皆さま(七笑酒造、中善酒造店、H・I・F、小池糀店)、関西電力

画像1: ダムで熟成した発酵食品の風味とは? 評価会に潜入!

場違いでは?
緊張に襲われつつも、木曽町 原町長のご挨拶とともに開会。ここまできたら、全力で評価員の役目を果たしましょう!

画像2: ダムで熟成した発酵食品の風味とは? 評価会に潜入!

今回、評価するのは4事業者6つの発酵食品です。

事業者商品貯蔵方法(比較するサンプル)
中善酒造・中乗さん 特別純米 しぼりたて直汲み(生酒)
・中乗さん 特別純米(火入れ酒)
・1階(約9℃)
・2階(約11℃)
・3階(約12℃)
・三浦合宿所冷蔵庫(約9℃)
各1年間貯蔵
七笑酒造・山笑 純米吟醸(生酒)・1階(約9℃)
・2階(約11℃)
・3階(約12℃)
・三浦合宿所冷蔵庫(約9℃)
各1年間貯蔵
H・I・F・ゴーダチーズ・1階(約9℃)
・2階(約11℃)
・3階(約12℃)
・H・I・F冷蔵庫(約5℃)
各1年間貯蔵
小池糀店・手作り味噌
・極上味噌
・1階(約9℃)
・2階(約11℃)
・3階(約12℃)
・小池糀店(外気温)
外気温で半年間貯蔵した後、それを継続するものと、ダムに貯蔵するものに分けて、さらに半年間貯蔵

事業者の皆さまから商品のご紹介、そして評価のコツをレクチャーしていただき、試飲・試食へとうつります。

中善酒造 「中乗さん 特別純米 しぼりたて直汲み(生酒)」「中乗さん 特別純米(火入れ酒)」

実は、プロジェクトが本格的に始動する前、2019年から三浦ダム貯蔵に取り組んでいた中善酒造。特に火入れした純米酒が人気で、2021年には750本が完売したのだそう。今回は、フレッシュな状態で飲むのが一般的とされる生酒の貯蔵にもチャレンジしました。どのような味わいの違いがあるのでしょうか?

画像8: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

みかりん評価員

中乗さん 特別純米 しぼりたて直汲み(生酒)は口に含むと、どれもフルーティな甘さをほんのり感じました。個人的には、B(ダム1階で貯蔵)がより甘く感じられて、美味しかったです!

【全体の評価はこちら】
中乗さん 特別純米 しぼりたて直汲み(生酒)

高評価ランキング貯蔵箇所
第1位三浦冷蔵庫(約9℃)
第2位ダム1階(約9℃)
第3位ダム2階(約11℃)
第3位(同着)ダム3階(約12℃)

評価コメント(※評価者の主観です)

・比較的、生老香(なまひねか。火入れをしていない生酒を長期にわたり保管すると発生する独特の香りのこと。)は抑えられているが、貯蔵フロアによって生老香を感じ始めるサンプルがあった。
・貯蔵フロアによって甘みや酸味、香りの強さに違いがあった。

中乗さん 特別純米(火入れ酒)

高評価ランキング貯蔵箇所
第1位ダム3階(約12℃)
第2位ダム2階(約11℃)
第3位ダム1階(約9℃)
第4位冷蔵庫(約9℃)

評価コメント(※評価者の主観です)

・保管温度が高いほうが熟成感が増すため、まろやかさを感じるようになってきた。
・生酒と比べて貯蔵フロア毎に味の違いが大きい気がした。

七笑酒造「山笑 純米吟醸(生酒)」

中善酒造に続き、七笑酒造も生酒でのエントリー。日頃から日本酒を熟成させて楽しんでいるという代表の川合さんは、1年間の熟成では、大きな違いは出ないだろうと予想しますが、どのような結果になるのでしょうか?

画像: 真剣な表情で飲み比べる、七笑酒造の川合さん(右)と、中善酒造の南さん(左)。ちなみに南さんの手前にある瓶は、9年間熟成させた日本酒。長い時を経て色が変わっているのが分かります。

真剣な表情で飲み比べる、七笑酒造の川合さん(右)と、中善酒造の南さん(左)。ちなみに南さんの手前にある瓶は、9年間熟成させた日本酒。長い時を経て色が変わっているのが分かります。

画像9: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

みかりん評価員

山笑 純米吟醸(生酒)も、D(ダム1階で貯蔵)がより甘く感じられました。私個人の感想としても、温度が低いところで貯蔵されていたものの味わいが好みでした!

【全体の評価はこちら】
山笑 純米吟醸(生酒)

高評価ランキング貯蔵箇所
第1位ダム1階(約9℃)
第2位ダム3階(約12℃)
第3位ダム2階(約11℃)
第4位冷蔵庫(約9℃)

評価コメント(※評価者の主観です)

・生老香が出始めているが、熟成度合いが適度で良い感じ。
・ダム1階と冷蔵庫で温度が同じにもかかわらず、評価が分かれたのは、ダム熟成が良い方向に進んでいるかもしれない。

H・I・F「ゴーダチーズ」

熟成を楽しむチーズとして有名なのは、パルミジャーノ・レッジャーノのようなハード系(硬質チーズ)。今回選ばれたゴーダチーズは、セミハード系(半硬質チーズ)で、ハード系に比べてやや水分が多いのが特徴。普段は半年間熟成して出荷されているとのことですが、1年間熟成した味わいはいかに……。

画像11: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

みかりん評価員

チーズは、特に味・香りの違いが難しかったです。なんとなく、C(ダム1階で貯蔵)の口どけがなめらかで、A(冷蔵庫で貯蔵)の風味がより濃厚なような……。

【全体の評価はこちら】
ゴーダチーズ

高評価ランキング貯蔵箇所
第1位H・I・F 冷蔵庫(約5℃)
第2位ダム3階(約12℃)
第3位ダム1階(約9℃)
第4位ダム2階(約11℃)

評価コメント(※評価者の主観です)

・第一回の評価会(半年保存)と比べて、ざらつきがなく、口当たりが良くなっていた。
・貯蔵フロアによって旨味を感じるものもあれば、苦みを感じるものもあった。

小池糀店「手作り味噌」「極上味噌」

唯一、ダムでの貯蔵は半年間となった味噌。小池糀店の唐沢さんは「味噌は低温では発酵しないため、外気温で発酵させて酵素が最も活発になったタイミングを見計らってダムに蔵入れしました。酵素がゆっくりと落ち着いていくなかでどのように味が変化するのか楽しみです」と話します。
また、伝統的な“味噌玉製法(※)”で作られた熟成味噌を貯蔵していることにも注目。

※通常の味噌作りでは、蒸した大豆にすぐ糀・塩を混ぜ込む。味噌玉製法では、大豆を丸めた“味噌玉”のみで一度熟成させ、その後に糀・塩を混ぜてもう一度熟成させる。春に仕込み、夏に熟成し、秋から初冬に完成する、日本ならではの四季を利用した伝統的な製法。

画像14: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

みかりん評価員

手作り味噌は、味・香りともにはっきりと違いを感じられました。ダントツでA(ダム1階で貯蔵)とB(ダム2階で貯蔵)が、香りも華やか、濃厚な味わいで美味しかったです!

【全体の評価はこちら】
手作り味噌

高評価ランキング貯蔵箇所
第1位ダム1階(約9℃)
第1位(同着)ダム2階(約11℃)
第3位小池糀 保管(常温)
第4位ダム3階(約12℃)

評価コメント(※評価者の主観です)

・冬の時期はダム内部のほうが温かいため、これが味の違いに影響しているかもしれない。(※味噌は2023年10月に蔵入れ)
・夏を超えたときに、どのような味になっているか気になるところである。

極上味噌

高評価ランキング貯蔵箇所
第1位ダム2階(約11℃)
第2位ダム3階(約12℃)
第3位小池糀 保管(常温)
第4位ダム1階(約9℃)

評価コメント(※評価者の主観です)

・手作り味噌と極上味噌で作り方が異なり、熟成メカニズムも複雑である。その結果、手作り味噌の結果と異なり、ダム1階の順位が低かったかもしれない。

こうして全ての評価が終了! どの食品も想定以上に評価が分かれ、「正直、どれも美味しかったな」と笑いが起こりました。

画像: 小池糀店「手作り味噌」「極上味噌」

熟成は、時間をかけてじっくりと。

長時間にわたった評価会ですが、みんなで出した答えは「結果は3年後」。時が熟成させる味わいを1年間で求めるのは急ぎすぎたのかもしれません。今後も定期的に評価分析を行ない、特産品としての発売を目指すこととなりました。

関西電力 東海支社 小森支社長は「ダムを活用した同様の取組みの中でも、自治体・事業者・研究機関・電力会社が集まり、評価分析まで行なっているところは全国でも珍しい。この取組みで木曽の発酵文化を多くの人に知ってもらい、引き続き地域を盛り上げていくことに協力させていただきたい」 と会を締め括りました。

最後に、事業者の皆さまと木曽町の担当者に今後の意気込みを伺いました。

画像15: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

中善酒造 南さん

日本酒で木曽を盛り上げたくて、これまで雪中貯蔵に横井戸貯蔵とさまざま試してきました。その中でも、三浦ダムでの貯蔵には可能性を感じています。商品名の「中乗さん」は、江戸時代に山で木を伐り木曽川を下って尾張藩まで届けた杣人(そまびと)の名前が由来になっているんですが、同じように三浦ダムからはじまり、中京地区、全国まで木曽の魅力を届けるお酒にできたら……と夢を膨らませています。

画像16: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

七笑酒造 川合さん

日頃から日本酒を熟成させて飲んでいますが、10年20年と経ってようやく熟成の旨味を感じられるんです。今回の評価会では大きな風味の変化は感じられませんでしたが、少しずつ変わっていくのを実感しています。このプロジェクトに結論をつけるのはまだ早い。未来を見据えたお酒作り、特産品作りに取り組めたらと思います。

画像17: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

H・I・F 斉藤さん

そもそもチーズってお世話が大変な食品なんです。だからこそ、三浦ダムでの貯蔵は私たちにとって大きなチャレンジ。不安を感じながらも手を挙げたのは、地域の活性化のためです。他にも、木曽名物の発酵食品「すんき」から菌を取り出してチーズやヨーグルトを作る取組みにも挑戦しているところなんですよ。発酵で木曽をもっと元気にしたいですね。

画像18: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

小池糀店 唐沢さん

味噌は発酵が止まるまでの間に味わいが変化します。うちの味噌の場合、外気温で貯蔵して約1〜3年で発酵が止まる。でも、暗くて冷たいダムの中なら時間のすすみをゆっくりにできるんじゃないか、どんな風味になるんだろうって、職人心が刺激されます。

画像19: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

木曽町役場 寺澤さん

このプロジェクトには多くの課題が残っていますが、事業者をはじめ関係者の皆さまには前向きにご協力いただいて感謝しています。単発のイベントではなく、長く愛される地域の特産品を生み出すために、今後も一丸となってがんばっていきたいです。

―皆さま、ありがとうございました!!

画像20: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

三浦ダムから評価会まで、一緒に行ってみてどうでしたか?

画像21: 秘境のダムから生まれる発酵特産品、その味わいは?試食会に潜入!

三浦ダムは想像以上に秘境の地でした。そこから運び出してきた発酵食品はどれも美味しくて……評価するのが難しかったです(笑)。プロジェクトに携わる皆さまの熱意や木曽への想いを聞いて、胸がいっぱいになりました! 次回の評価会もぜひ参加させてください!

長い時間をかけて発酵食品も地域との関係も“熟成”されていく、三浦ダム発酵食品プロジェクト。今後もレポートを続けていきます!

画像: 熟成は、時間をかけてじっくりと。

RECOMMEND この記事を読んだ
人におすすめ

This article is a sponsored article by
''.