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腸内環境の改善や免疫力アップで大注目、そしてなによりおいしい発酵食。「発酵のまち」として知られる長野県木曽郡で、発酵食のおいしさをさらに引き出す新たな特産品づくりがスタートしました。その鍵を握るのは、なんと「ダム」!? ダムと発酵食、意外な組み合わせの秘密に迫ります。
画像: 関西電力株式会社 再生可能エネルギー事業本部 HpXグループ 西村 凌 水力事業の新たな価値を創出するHpXグループにて、今回の「三浦ダム発酵貯蔵プロジェクト」を統括。

関西電力株式会社 再生可能エネルギー事業本部 HpXグループ 西村 凌
水力事業の新たな価値を創出するHpXグループにて、今回の「三浦ダム発酵貯蔵プロジェクト」を統括。

ダムは “菌が活きる” 天然の貯蔵庫

長野県木曽郡、森林に囲まれた秘境の地に佇む「三浦ダム」。このダムの施設内で、発酵食品を寝かせておいしく仕上げるプロジェクトが始まったようです。

画像: ダムは “菌が活きる” 天然の貯蔵庫

―以前、「かんでんWITH YOU」では富山県のダムで日本酒を熟成させるプロジェクトを取り上げました。そういった取組みが増えているんですか?

西村「確かに、全国のダムで同様の取組みが広がりつつありますね。それは、ダムが一年を通して気温や湿度が安定している“天然の貯蔵庫”だからです。今回の舞台である三浦ダムでも、エアコンやヒーターを使わずに年間10℃前後に保たれています。貯蔵スペースは、ダムが水をせき止めている『壁(監査廊)』の部分。分厚いコンクリートの壁に挟まれたエリアは直射日光や紫外線も当たらないので、飲食料品、特に温度管理が重要な発酵食品の貯蔵に最適なんです!」

発酵のまち・木曽町と三浦ダムの最強タッグで、本気の発酵特産品づくりへ

―発酵食品を秘境のダムでじっくり熟成するって、なんだか物語が生まれそうです。なぜ発酵食品を選んだのでしょうか?

西村「三浦ダムのある木曽が『発酵のまち』だからです。冬になると雪に閉ざされて食物が不足しがちなこの地域では、保存食を作るための発酵技術が磨かれていったと聞いています。冬場の冷え込みと良質な湧水も、発酵食品の製造には最適です。発酵食品に含まれる善玉菌が腸内環境を改善するなど、健康面へのメリットもあり、長野県が全国トップレベルの長寿県となったのも発酵食品のおかげではないかと考えられているんですよ」

―地元を元気づける取組みとして、特産品である発酵食品を取り上げたんですね!

西村「はい、発酵食品づくりを支える地元の事業者さんたちと、ダム施設を活用して地域共創をしようとスタートしたのが『三浦ダム発酵食品プロジェクト』です。木曽の特産品をパワーアップして、まちの財産である発酵産業を一緒に盛り上げませんか? と木曽町役場さんにお声がけして立ち上がりました」

画像: 実は、西村が関西電力に入社して初めて配属されたのも三浦ダムを所管している事業所。「木曽での生活は、たくさんの発酵食品が食卓に溶け込んでいる風景が印象的でした」と振り返ります。

実は、西村が関西電力に入社して初めて配属されたのも三浦ダムを所管している事業所。「木曽での生活は、たくさんの発酵食品が食卓に溶け込んでいる風景が印象的でした」と振り返ります。

日本酒にチーズ、味噌も! 厳選された地域食をダム貯蔵

―ところで、今回のプロジェクトで選抜された食品が気になります!

西村「4件の事業者がプロジェクトに賛同してくださり、『長期熟成でさらにおいしくなる発酵食品』というポイントで一緒にセレクトしたのが、七笑酒造の日本酒(生酒)と中善酒造店の日本酒(火入れ・生酒)、H・I・Fのゴーダチーズ、そして小池糀店の味噌です。チーズや味噌、火入れしていない生酒は酵素が生きているので、上手く熟成させると旨味が増すんです。また、火入れした日本酒は酵素が不活性化されているのですが、ダム貯蔵によってどう変化をするかを調べるために選びました」

画像: 日本酒にチーズ、味噌も! 厳選された地域食をダム貯蔵

西村「実際に、ダム貯蔵を始めたのは2023年4月から。日本酒とチーズを3フロアに分けて貯蔵しました。1階から3階にかけて、貯蔵場所の室温が9℃から12℃と少しずつ上がっているので、それぞれ気温や湿度をモニタリングし続けて、貯蔵に最も適したフロアを調べていきました。そして、半年後の2023年10月に、貯蔵状態と味の変化を確かめる1回目の評価会を実施しました。また、本評価会実施と同じタイミングで、味噌のダム貯蔵もスタートさせました」

画像: 貯蔵の様子

貯蔵の様子

ダムで貯蔵したら本当においしくなった!?

画像: 評価会の様子

評価会の様子

西村「驚くほどフロアごとに味が違いました! フロアの温度差はわずか約3℃、この程度の差なら味には影響しないだろうと思っていたんですよ。ところが日本酒では室温が一番低い1階で、チーズは一番高い3階で貯蔵したサンプルが明らかにおいしくなっていました」

評価会での声(※評価者の主観です)

日本酒(1階)
・のどごしがなめらかで深い味
・ふくらみのある香り
・きれいな甘み

チーズ(3階)
・まろやか
・クリーミー
・穏やかな香り

西村「火入れをしていない生酒は、温度が高くなるほど生老香(なまひねか)というナッツのような独特の香りが生じやすくなります。そのため、通常は0℃前後で保存して早めに飲むよう推奨されていますが、ダムで貯蔵した生酒には生老香がほとんど発生していませんでした。一番低くても約9℃、そこで半年も貯蔵したのに不思議です。一方で、ゴーダチーズの熟成に適した室温の目安は10~13℃です。最も室温が高くなる3階フロアで一番熟成が進んだからおいしくなったのかな、と考えられます」

画像: ダムで貯蔵したら本当においしくなった!?

―そんなに変わるものなんですね!

西村「食品分析評価の専門家からも、香りや味は違うと判定していただきました。ただ、味覚というのは個人差が大きく、私たちがいくら『おいしくなった』と主観で説明しても、購入される方のなかには『本当に?』って思う方もいるかと思います。そこで、貯蔵開始から1年後の2024年4月~5月に予定している2回目の評価会では、客観的な根拠あるデータで本当においしさが向上していることが証明できるといいなと考えています!」

三浦ダム発「じっくり醸した発酵食」を食卓へ

森の奥、秘境でじっくりと熟成される発酵食品たち。その製法のように、三浦ダム発酵食品プロジェクトはじっくり着実に進められます。

西村「今回参加した事業者さんの多くにとって、『ダム貯蔵による熟成』自体が斬新な製法です。中善酒造店には、以前もご協力いただいたことがありますが、それでも1年以上もの長期貯蔵はこれまでに試したことがなく、ノウハウやデータがゼロ状態からのスタートです。まずは3年かけて、事業者さんと確実においしく熟成される貯蔵条件を見つけたいと思います」

―おいしく食べられる日が待ちきれないですね……!

西村「大量生産はできませんから、ごくわずかな限定品になりそうです。販売への道はまだまだこれからですが、ほかでは味わえない木曽の新たな特産品として、ダム愛好家にはもちろんのこと、より多くの方に愛されるお土産やお取り寄せ商品となることを目指したいと思います。

画像: 三浦ダム発「じっくり醸した発酵食」を食卓へ

この『三浦ダム貯蔵製法』が確立したら、ほかにもたくさんある木曽の発酵食品でも貯蔵を試してみたいです。そして他地域のダムにも展開して、各地に伝わる発酵食をダムの力でさらにおいしくした『ご当地ダム発酵食』を広げたいですね」

これまで眠っていた“天然の貯蔵庫”を活用して、木曽の特産品をさらにおいしく熟成する三浦ダム発酵食品プロジェクト、今後の活動にご期待ください!

画像: 三浦ダム発酵食品プロジェクトのみなさん

三浦ダム発酵食品プロジェクトのみなさん

プロジェクトの様子を動画でお届けします。ぜひご覧ください!

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