「原子力発電所」と聞いたら、どんなイメージが浮かびますか? たくさんの機械を使って大量の電気を作るところ……だけど、具体的にはわからないという人も多いかもしれません。そこで今回は、「原子力発電所オンライン見学会」を通じて、原子力発電所の現場の様子をお届けします!
原子力発電を勉強中、新人のみなぱんがレポートします!
「原子力発電所オンライン見学会」って?
関西電力は2022年10月、新たなプロジェクトとして「原子力発電所オンライン見学会」を始めました。この見学会では、関西電力の美浜発電所、大飯発電所という2つの原子力発電所の設備や点検の様子をオンラインで配信します。参加者は自宅などにいながら、まるで現地で見学しているかのような体験ができます。
オンライン見学会の担当者である広報室 エネルギー広報グループ 南に、立ち上げのきっかけから話を聞きました。
原子力発電の仕組みや安全対策について、もっと多くの方に知ってもらいたい!と思ったのが、オンライン見学会を企画した理由です。オンラインなら、実際に発電所を訪れなくても、気軽に参加してもらえるのではないかと考えました。
最近は、リモートワークやオンライン授業も当たり前になってきてますもんね。オンライン見学会ならではの見どころはありますか?
はい!現地の見学では見ることができない設備や点検の様子をお届けします。専門の技術者しか入ることができない原子炉格納容器や使用済み燃料ピットなども見られますよ。
オンラインだからこそ配信できる、盛りだくさんの内容です。また、クイズなどを通じて発電所で働いているスタッフとコミュニケーションをとれるように工夫しているとのこと。「原子力発電ってよくわからない」「発電所の見学会って難しそう」という印象をもっている人も楽しく参加することができそうです。
事前に原子力発電についてもっと深く知っておきたいという方には、こちらの記事がおすすめです!
いざ、オンライン見学会へ!
今回見学するのは、美浜発電所
いよいよオンライン見学会を体験! 今回は、福井県三方郡美浜町にある美浜発電所の様子をお届けします。美浜発電所は、関西電力が初めて建てた原子力発電所。大阪万博が開催された1970年に1号機が運転を開始しました。
万博会場に原子力のエネルギーを送ったことは当時、大きなニュースになったのだそうです。
まず、オンライン見学会のスタッフが取り出したのは、何やら黒くて小さいもの。これは、原子力発電の燃料のウランを焼き固めて作ったウランペレットの実物大模型です。火力発電所と同じく蒸気の力でタービンを回し、電気を作る原子力発電では、蒸気を生み出すのにウランを使用しているのです。
小さなウランペレットから膨大なエネルギーを取り出すことができる原子力発電の仕組みについても、スタッフがわかりやすく説明します。
原子力発電所の安全対策
ところで、「原子力発電は放射線が出るから危ないのでは?」というイメージをもっている人もいるかもしれません。そこで、オンライン見学会では、関西電力の原子力発電所でどのような安全対策が行われているのかについても、お伝えしています。
安全対策の一つは、原子力発電所の「5つの壁」。
① 燃料ペレット
② 燃料被覆管
③ 原子炉圧力容器
④ 原子炉格納容器
⑤ 外部遮へい壁
厚さ20cmの鋼鉄製の壁や、厚さ1mにも及ぶコンクリートの壁などもあり、放射線をしっかりと閉じ込めることができます。
そのほかにも、安全対策は多岐にわたります。2011年の東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生しました。このことから関西電力では、万が一事故が起きてしまっても被害の拡大を防ぐための対策を段階ごとに分け、何層にもわたって行っているのです。
例えば、地震や津波によって発電所が停電してしまっても、必要な電気を供給できるように電源車を配備したり、災害によるがれきを撤去できるようにブルドーザーなどを分散して配置したりしているとのこと。また、竜巻対策のために頑丈なネットやロープも備えられています。
また、1年に何度も防災訓練を行い、対応マニュアルを見直したり、国や自治体などへ情報をスムーズに共有できるように改善したりするなど、常に対応能力の向上が図られています。
一番の見どころ、非公開エリアに潜入!
さて、万全の安全対策が行われていることを学んだあとは、オンライン見学会の一番の見どころ、普段は見ることができない原子炉建屋の内部の見学です。
発電所員がハッチを開けて原子炉建屋に入っていくと、銀色の大きな設備が目に飛び込んできます。これは「蒸気発生器」といって、ここでつくられた蒸気がタービン建屋に送られ、巨大なタービンを回し、電気を生み出すのです。
続いて、発電所の司令塔の役割を担う中央制御室を見学。スタッフが3交代で24時間勤務を行い、発電所を常に安全に運用しています。発電所の運転制御ができるようになるまでには、約10年間もの実務経験が求められます。いかに専門性の高い業務であるかがわかりますね。
たくさんのモニターやコンピューターが立ち並んでいて緊迫感があります。
点検作業もチェック
たくさんの装置や設備のある原子力発電所では、定期的な点検が欠かせません。そのため約1年(13ヶ月)に1回、発電を止め、必要な機器を分解するなどして設備をすみずみまでしっかりと点検しています。それに加えて、発電所員が毎日、異常が発生していないか確認を行なっています。
見学会では、原子炉格納容器の中にある一次冷却剤ポンプと、隣り合わせの建物の中にある充てん高圧注入ポンプを点検する様子を見ることができます。これもオンラインならではの見どころ。
発電所員が、何やら細長い棒を機器にあてています。これは「聴診棒」といい、機器の中の音を確認するために使うものです。細い棒から音が伝わってくるので、異常が発生していないかどうかを知ることができるとのこと。
まるで聴診器みたいですね!
最後のQ&Aコーナーでは「聴診棒では、どんな音が聞こえるの?」といった素朴な疑問をはじめ、さまざまな質問があがり、話がはずんでいました。参加者の方々にも、原子力発電所を少し身近に感じてもらえるきっかけになったようです。
まとめ
暮らしに欠かせない電気を作る原子力発電。冬場の電力ひっ迫時の安定供給源としても期待されていますが、実際に原子力発電所でどのように電気が作られるか、どんな安全対策がとられているかを知る機会は少なかったのではないでしょうか。関西電力では、みなさまの疑問や不安を少しでも解消するために、原子力発電所オンライン見学会の取組みを続けていきます。
現在は、関西電力がエネルギーに関する授業や説明会を実施している小学校〜大学、個別に案内する企業などを中心にオンライン見学会をご案内しています。ぜひ、ご参加ください!
みなぱん
実は、発電所内では、発電所員がすれ違う時に「ご安全に!」と互いに声を掛け合っています。この挨拶は、原子力発電所内だけでなく、関西電力グループのさまざまな現場で使われている挨拶で、「安全最優先」の意識を共有するコミュニケーションです!
それではみなさんも、本日も一日ご安全に!