だいちゃん
子どもの頃に漫画でみた世界が、もうすぐそこに!!
実は、関西電力もこの空飛ぶクルマの開発プロジェクトに参画する一社。その内容をプロジェクトの「中の人」、関西電力eモビリティ事業グループの北垣佑芽乃に、聞いてみましょう。
新しい空の乗り物。そもそも“空飛ぶクルマ”の仕組みは?
―まず、空飛ぶクルマとは具体的にどんなものなんでしょうか?
北垣「明確な定義はまだないのですが、電動で自動運転、自動操縦、さらに垂直に離着陸する、というのが特徴です。新たなモビリティとして世界各国で開発が進んでいて、eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)やUAM(UrbanAir Mobilty)とも呼ばれています。空飛ぶクルマは従来の航空機(飛行機やヘリ)と一線を画した『空の移動革命』を起こすともいわれているんです」
車体は、地域内移動(短距離、小型)に適したマルチコプターと都市間移動(長距離、大型)に適した翼のあるタイプのものがあり、北垣によると、この2種類が主流だそう。
北垣「もう一つの特徴は、地上からの距離です。航空法で高さ制限が定められていますが、飛行機が一番高いところ、次にヘリコプターで、空飛ぶクルマはその次ぐらい。ヘリコプターと、いわゆる撮影用などのドローンとの間で、一番利便性の高いポジションを目指しているんです」
―なるほど、だからタクシーのような使い方がしやすいんですね。
北垣「『空飛ぶクルマ』は、単に新しいサービスとして民間で行われているだけではなく、国を挙げての事業。日本では、2018年から『空の移動革命に向けた官民協議会』を開催したことをきっかけに、経済産業省・国土交通省が2030年の本格普及に向けたロードマップを制定しています」
空飛ぶクルマはなぜ必要?
どんなメリットがある? 開発が急がれる理由
北垣「空飛ぶクルマに期待されているのは、都市部での送迎サービスによる渋滞解消や、離島や山間部での移動手段、災害時の救急搬送などです。地方都市で消滅していく交通インフラの代わりとしての需要もあるといわれています」
―たしかに、山での事故時などには活躍しそうです。でも、純粋に「乗ってみたい!」と思う人は多いのではないでしょうか?
北垣「2021年10月、大阪ベイエリアで実施した『空飛ぶクルマを使ったエアタクシーサービス事業の実証実験』では、こんなアンケート結果が出ています。
『空飛ぶクルマに乗ってみたいと思いますか?』という質問に対して、『乗ってみたくない』と答えた人は0%。『是非乗ってみたい』が65.8%、『できれば乗ってみたい』が29.1%で、94%以上の人が空飛ぶクルマに乗ることに興味を示しているんです」
北垣「特に、『空飛ぶクルマのサービスをどのような場面で利用したいですか?』という質問には、『遊覧飛行・レジャー』の回答が75.3%と飛びぬけて多かったんです。大阪湾での遊覧飛行などのサービスが想定より早くスタートするかもしれませんね」
―それは楽しそう! でも、どうして関西電力が開発に協力しているんでしょうか?
北垣「もちろん、お客さまと社会のお役に立つためです! 特に、空飛ぶクルマの開発を急ぐ背景にあるのが、国が定めている『2050年カーボンニュートラル(=脱炭素社会)』。飛行中に温室効果ガスを出さない電動の空飛ぶクルマに、期待が高まっているというわけです。
私たち関西電力グループでも、この2050年までに、CO2排出を全体としてゼロにすることを掲げていますから、空飛ぶクルマのエネルギーも温室効果ガスを出さないことが必要です」
―なるほど。脱炭素化・ゼロカーボンの大きな流れを受けて、エネルギー分野で空飛ぶクルマの開発に向けて尽力しているわけですね。
安全性とエネルギーの両立。
空飛ぶ自動車を実現化するのに必要なこと
―2025年の大阪・関西万博に向けて、株式会社SkyDrive、株式会社大林組、近鉄グループホールディングス株式会社、東京海上日動火災保険株式会社の5社で共同し、空飛ぶクルマの実現に向けて実証実験に取り組んでいる関西電力。具体的には何をしているんでしょうか?
北垣「今回の実証実験では、空飛ぶクルマが実走した際、飛行する距離に対してどれくらいのバッテリーを消費するのか、その場合の最適な充電量と時間はどの程度必要か、空飛ぶクルマに対する最適な充電方式は……など、エネルギー分野を中心に担当しています。我々の知見や今回の実証データを活かして、空飛ぶクルマの運行に最適な充電量や、充電方法を検討していきたいと考えています」
―バッテリーの性能や充電の効率化はEV(電気自動車)でも今後の課題になっていますよね。
北垣「そうですね。空飛ぶクルマを事業化する上では、バッテリーの減り具合や充電量、運行スケジュールの3つの要素をバランスよく検討していくことが重要だと考えています。当社は、運行計画と飛行距離を勘案して、最適な充電計画を考えていきます。
充電方式については、バッテリー交換式なのか、急速充電器につなぐのかなど、さまざまなケースを想定しながら検討していく必要があります。将来的には、携帯電話と同じように置くだけで充電できるワイヤレス充電ができれば、充電作業を効率化できる可能性がありますし、実際に陸の自動車分野では走りながら道から充電ができる走行中給電の開発も始まっていることから、今後そういったことも展開できないか考えていきたいと思います」
―エネルギー分野の話だけでも、たくさん考えることがありますね。それで、実際のところはうまくいっているんですか?
北垣「実証実験では、大阪湾から海へ向けて空飛ぶクルマの実機体の代わりにドローンを飛ばしてデータを収集したのですが、想定以上に風の影響を受けたんです。揺れに負けない安全性についての追求ももちろんありますが、それだけではなく、風などの天候がバッテリーの消費量に影響するということが課題になります。
今後、空飛ぶクルマを開発していく機体メーカーと連携していきながら、課題の解決に努めたいです。エネルギー分野を中心として、機体に合った充電計画、充電方式などの実現に向けて検討していきます!!」
地球のことを考えた、持続可能なエネルギーの未来
―関西電力は、2019年10月に「eモビリティビジョン」を掲げていて、EV(電気自動車)を中心としたインフラの整備にも取り組んでいます。
北垣「電気自動車は、環境にやさしいだけでなく、いざという時には動く蓄電池として必要な場所に電気を運ぶこともできます。
同様にEV船もあります。関西ベイエリアにおける電気推進船『水上アーバンモビリティ』を進めているのですが、電気船だとエンジンや機関室が不要になるのでお客さまのニーズに合わせた自由な空間設計も可能になります。さらに、においや騒音が少ないので、快適性も向上し、船の使用用途も広がります」
北垣「そして、この空飛ぶクルマ。すべて電気による移動手段が実現化することは、脱炭素につながり、結果として温室効果ガス削減が実現します。通勤も通学も、遊びに行くのも地球にやさしい行動になれば良いですよね。
空飛ぶクルマが、世代を問わずさまざまな方に乗っていただける世界が、実現できればいいなと思います!」
まとめ
まずは、大阪・関西万博という舞台を目標にして、その先の実用性も見据えながら進化する空飛ぶクルマ。まるで映画のようなシーンが現実になる日はそう遠くないかもしれませんね。