行ってみたいけれど、マナーや食べ方に自信がない……という方も多いはず。そこで今回は、マナー講師の高田将代さんに教えてもらいながら「ザ・リッツ・カールトン大阪」のアフタヌーンティーに挑戦してきました。基本のマナーだけでなく、知っておくとスマートな“デキる大人”なポイントまで!しっかり押さえて、アフタヌーンティーを楽しみましょう。

高田将代(たかだ まさよ)
マナーコンサルタント・ふるまいコンシェルジュ
Mエレガンスアカデミー代表
国宝「當麻曼荼羅」を有する奈良の當麻寺に生まれ、茶道、華道など、和の文化に親しんで育つ。その後、グレース・ケリーも学んだフィニッシングスクールに入学。和と洋の幅広い学びを経て、マナー講師となる。日本人ならではの細やかな精神性をいかしたマナーや所作、コミュニケーション術など、美しいふるまいを通して多くの女性の魅力と自信を引き出している。
2021年、なぜか大切にされる女性になるマナーと心得56「オトナ女子のふるまい手帖」を上梓。重版、海外出版となっている。
アフタヌーンティーとは

アフタヌーンティーは、19世紀のイギリス貴族社会で「貴婦人のつまみ食い」からはじまった文化。当時の上流階級では、「イングリッシュ・ブレックファスト」と呼ばれる朝昼兼用のボリュームのある食事と、オペラ観劇などを終えてから食べる遅い夕食の2食がスタンダードでした。
空腹の時間が長い上、女性たちはウエストを縛るコルセットを着用していたため、気分が悪くなる人が続出。それを防ごうと、「紅茶を飲みながら簡単に手で掴めるもの」を午後に食べたのが、アフタヌーンティーのはじまりと言われています。やがて友人を招いてもてなすことで広がり、「女性の社交の場」として発展しました。
本来、正式なアフタヌーンティーとはとても格式が高く、決まり事が多いもの。ですが、現在ホテルなどではカジュアルにアレンジされたスタイルのアフタヌーンティーがほとんどだそうで、日本でも高級ホテルなどで「紅茶とティーフーズ(サンドイッチやケーキなど)」を楽しむことができると人気。年々盛り上がりをみせており、季節の食材を使ったものや、ブランドとのコラボレーションなど、オリジナリティ溢れるアフタヌーンティーを堪能することができます。
アフタヌーンティーのマナーや食べ方を学ぼう!
今回お伺いしたのは、「ザ・リッツ・カールトン大阪『ザ・ロビーラウンジ』」。

「ストロベリーアフタヌーンティ・イン・パリ」(税込6,900円、2021年12月28日〜2022年3月13日まで開催のメニュー。最新のメニューは公式HPで確認してください。)をいただきます。
教えてくださるのは、マナー講師・ふるまいコンシェルジュとして活躍する「Mエレガンスアカデミー」代表の高田将代さん。

2016年から開催している「アフタヌーンティーレッスン」では、知識やマナーだけでなく、美しい所作やアフタヌーンティーの楽しみ方を学ぶことができると人気を集めています。
どんなシーンで楽しむもの?

足を一歩踏み入れるだけで非日常を感じられる、エレガントでクラシックな空間。美味しいティーフーズや紅茶をいただきながらゆったりと過ごす時間は、まさに大人の至福タイム!
家族や知人と大切な時間を過ごしたり、記念日などの特別な日に訪れたりする人が多く、最近では、自分へのご褒美としておひとり様で楽しむ人も増えているそうです。
服装は何が正解?
まず頭を悩ませるのが、服装ですよね。
ドレスアップしなければいけないのかと思いきや、現代のホテルなどでのアフタヌーンティーのドレスコードは「スマートカジュアル」とされているお店が多いです。
女性なら、ワンピースやブラウスとスカート、男性はシャツやジャケットなどです。避けたい服装は、肌の露出が多いものや、ジーンズ、スニーカー。
基本的な考え方としては、「お店に敬意をはらう」ということ。もしわからなければ、事前にお店にドレスコードを問い合わせておくと安心です。
「服装を気にしすぎるよりも、オシャレをしてアフタヌーンティーに行く、ということを楽しんでくださいね」と高田先生。
まずはウエルカムドリンクで乾杯!
お店によって異なりますが、席に着くとまず運ばれてくるのが、「ウエルカムドリンク」。

スマートな乾杯の方法は、
・自分の目の位置の高さにグラスを持つ
・相手とアイコンタクトをしながら、「乾杯!」と少し持ち上げる
「お互いのグラスを当てないこと」が“デキる大人”のポイントです!
ウエルカムドリンクは、紅茶が運ばれてくるまでに飲むのが良いとされますが、無理のないペースで楽しみましょう。
基本のメニューとは
アフタヌーンティーといえばコレ。3段重ねの「ティースタンド」です。


手で食べられるフィンガーフードが中心で、基本のスタイルとして種類と位置が決められています。
・(上)スイーツ
・(中)スコーン
・(下)サンドイッチなどのセイヴォリー(一般的に塩気もしくは辛味のある、甘くない食べ物)
しかし、高田先生によると、最近はこの基本スタイルに「こだわっていない」お店がほとんど。今回も、一つのお皿の中にセイヴォリーとスイーツが混ざり合っていて、スコーンも一番下にありました。
アフタヌーンティーの人気の高まりとともに、オリジナリティを追求するお店が増えているのも理由の一つ。より美しい盛り付けや見栄え、または料理の温度などの兼ね合いで、このあたりの細かいルールはお店によるということが多いそうです。
食器とカトラリーの使い方

ティースタンドの食器はそのまま動かさず、フードを自分の取り皿に下ろして食べるのがマナーです。取りにくい場合は、ティースタンドのお皿を回してもOK。
基本的にすべてのティーフーズは直接手で掴んで良いのですが、持つと手が汚れてしまいそうなものは、ナイフとフォークを使って取り皿に移しましょう。ティースタンドに数人分のフードがまとめられている場合も、ナイフとフォークを使うのがスマートです。
また、取り皿にのせる数は2〜3個が目安。盛りすぎてしまわないように気をつけて!

ティーフーズの食べ方と順番
基本スタイル(ティースタンドの下からセイヴォリー、スコーン、スイーツ)の場合は、下から順に食べるのがマナーとされていますが、先程紹介したように、最近では基本スタイルにこだわらないお店が多いので、食べる順番は自由でOK!
ただし、「コース料理の順番」を意識すると良いとのこと。食事からデザート、味の薄いものから濃いものという流れです。
大きいサイズのものは、一口の大きさに切って食べましょう。
スコーンの食べ方
アフタヌーンティーで必ず登場するスコーン。先生に教わった、押さえておきたいポイントは5つです。
・手で割って食べる(手で割れない硬さの場合はナイフとフォークで)
・必ず上下に割る

・ジャムとクロテッドクリームは全体に塗らず、食べるところにひと口分を塗る

・一口〜二口で食べ切るのが上品に見えるコツ
・温かい状態で提供された場合は、せっかくなので優先して食べる
イギリスではスコーンは神聖なものとされており、ナイフを使わず手で割るのが基本です。テーマやコンセプトによっては硬いものを提供していることもあって、今回はナイフを使っています。ちなみに今回お邪魔した「ザ・リッツ・カールトン大阪」ではフランス人のシェフの方が監修されているのでスコーンはフランス式に硬めになっているのだそうです。
紅茶のマナー
紅茶の飲み方も、必ず知っておきたいポイントですよね。
まずは、ティーカップの扱い方。
ソーサー(カップの下に置かれる置き皿)は持ち上げず、カップだけを持つのが基本です。(ローテーブルでソファ席の場合など、テーブルと椅子の距離がある際はソーサーごと胸の高さに持っていただきましょう)

持ち方は、ハンドルに指をかけないで、つまむように持ち上げるのが美しいとされています。この持ち方、初めは難しく感じたものの、先生に「薬指でハンドルの下側を支える」というコツを教わると安定して持つことができましたよ。

また、反対側の手は添えないことも大切。「手を添える=紅茶がぬるい」という表現になってしまうそうです。さまざまな飲み物の中でも紅茶は、最も熱い温度で淹れるのが美味しいとされています。できるだけ熱々のものを出すのが大切なので、手を添えてしまうと、お茶がぬるいのだとホストに気を遣わせてしまう可能性があります。

スプーンは、カップの奥側に置くと邪魔になりません。砂糖やミルクを入れて混ぜる時は、回すのではなく、カップに当てないように上下に静かに動かしましょう。
紅茶をおかわりする時は、本来はホストが注ぐもの。ですが、テーブルにポットが置かれていれば自分でポットから注いでも、スタッフの方にお願いしてもどちらでもOK!
こんな時はどうすれば?
他にもアフタヌーンティーに関する疑問について、高田先生に答えていただきました。

食べきれなかった場合は?
無理せず残してOK。ただ「とても美味しかったけれど、お腹がいっぱいで」などと、スタッフの方に一言伝えるのがベター。持ち帰りのサービスはしていないお店が多いそうです。
予約なしでも大丈夫?
予約制のお店が多いので、事前に確認しておく方が◎!
一人で行ってもいいの?
もちろん!ただし、お店によっては2名からOKという場合もあるので確認しておくと安心です。
夜に行ってもOK?
名前はアフタヌーンティーですが、夜の時間まで実施しているお店もあります。今回訪れた「ザ・リッツ・カールトン大阪『ザ・ロビーラウンジ』」の時間は19時まででした。
また「ハイティー」と呼ばれる、アフタヌーンティーよりも食事の要素が強いものもあります。夕食時に肉や魚料理とともに紅茶を楽しむ労働者階級の文化。「ミートティー」とも呼ばれ、ハイテーブルでいただいていたからハイティーというそうです。男性でも楽しめると人気なのだとか。
最後に
はじめは非日常の空間にドキドキしたものの、心地よいおもてなし、目も舌も楽しめるティーフーズとドリンク、楽しいお喋りによって、心が解けていくような体験をすることができた、アフタヌーンティー。
「マナーはお互いが気持ちよく過ごすためのもの。必ず守らなければならないという訳でなく、心得ておくことが大切です。アフタヌーンティーを心から楽しんでくださいね」と高田先生。
季節ごとにテーマが変わったり、場所によって特徴があったり、それぞれにオリジナリティ溢れるテーマで実施されているので、ぜひ皆さんもアフタヌーンティーにチャレンジしてみましょう!
取材協力 | 「ザ・リッツ・カールトン大阪『ザ・ロビーラウンジ』」 |
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Web | https://lounge.ritzcarltonosaka.com/afternoontea |

みなぱん
マナーを心得て、アフタヌーンティーで優雅な休日もたまにはいかがでしょうか?