そんな奥深いトイレの世界を、「大阪大学トイレ研究会」のみなさんに案内してもらいましょう。大阪のすごいトイレ情報から、身近だけれど知らなかったトイレの豆知識まで、たっぷりお届けします!
※この記事は2022年8月9日に公開した内容をアップデートしています。写真は公開当時のものです。
大阪大学トイレ研究会
2017年11月発足、現在12名で活動。毎月さまざまなテーマでトイレに関しての勉強会を行うほか、大阪大学内のトイレの設備状況を把握。また、年に3回行われる大学祭への出展や、トイレ専門誌『LET’S BENJOY』を発行するなど、大学内外に向けて精力的に活動中。
Twitter @handaitoilet
お話を伺ったのは、幼いころからトイレが好きだったという、研究会の代表・江崎笙吾(しょうご)さん。一口にトイレ好きといっても、デザインマニアや掃除マニアなどいろんなタイプがいるそうで、江崎さんは機材マニアなんだとか。ついつい、メーカーや型番が気になってしまうそうです。
とにかくすごい! 日本のトイレ市場
日本のトイレは、世界的に見てもトップクラスの綺麗さを誇っており、機能面でもかなり進んでいます。訪日した方々は、保温便座や音姫、ウォシュレットなどの便利な機能に驚くことも多いとか。特にうずを巻きながら水が流れていくトルネード洗浄は日本発祥のもので、少ない水で効率的に便器を洗浄できるため、節水の効果もあるほか、便器全体をしっかり洗い流してくれるというメリットがあるそうです。
近年ではエレクトロニクスと融合し、ますます進化している日本のトイレ。泡で洗浄できるタイプのトイレや、タンク・便器・便座がすべてひとつになった一体型のトイレが登場しています。
海外ではトイレがバスルームと一体になっているところが多く、コンセントがない場合も多いため、なかなか発展していかないのかもしれませんね。
年々快適かつ便利に進化している日本のトイレ。大阪のトイレにも、この10年で大きな変化がありました。
それは、2012年から始まった地下鉄(大阪メトロ)の大規模なトイレ改修によって、よく叫ばれている3K(汚い・臭い・暗い)が払拭されたことです。駅のトイレはできれば使いたくない……というイメージを変えた出来事でした。
中でも、新大阪駅のトイレは鉄道のトイレで初めて「日本トイレ大賞・国土交通大臣賞」を受賞しています。梅田駅はエレガント、難波駅はラグジュアリーなど、駅によってコンセプトが異なるなど、トイレの「空間」も意識して作られました。
また、男女マークがお辞儀をして「ようおこし」と書かれたトイレの入り口も、大阪ならではのユーモアを感じるポイントです。
世界的に見ても、ここまでトイレに重きを置いている国は少なく、日本人がトイレをひとつの安らぎの空間として捉えていることが分かります。
デザインに注目! 面白い個性派トイレまとめ
日本のトイレは、機能面だけではなくデザイン面にもこだわりをもって作られたところが多く、大阪にも個性的なトイレがあります。
昭和の時代にタイムスリップ「梅田スカイビル」の銭湯トイレ
梅田のランドマークとして知られる梅田スカイビル。有名なのは大阪市内を一望できる高さ173mの空中庭園ですが、注目したいのは地下1階にある昭和の街並みを再現したレストラン街「滝見小路」のトイレ。
トイレに入るとすぐに現れる脱衣所のような空間に、タイルでできた富士山の絵を発見!
手洗い場や床には一面にタイルが敷き詰められており、その様子は銭湯さながら。古いトイレを新しくリノベーションすることはあっても、わざわざ昔ながらのトイレに作り直すことは少ないので、非常に珍しいのだそう。
多目的トイレも同様に銭湯風に作られています。タイル張りでレトロさがありながらも便器などは新しいものを導入していて、清潔感があります。
レトロな雰囲気の「滝見小路」で食事をしたあとに、ここのトイレに行くとタイムスリップしたような気分になります。近代的な高層ビルにいることを忘れてしまいそう…。遊び心満載の銭湯トイレ、ついつい靴を脱いで入らないようご注意を!
基本情報
住所 | 大阪府大阪市北区大淀中1-1-88 梅田スカイビル地下1階 |
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開放感抜群! 「あべのハルカス」の天空のトイレ
次にご紹介するのは日本一高い高層ビル「あべのハルカス」のトイレ。まずはエレベーターで16階まで。ここで入場券を購入して58階へ向かいます。
そこにはトイレとは思えないような絶景が広がり、入口からぐっと期待が高まります。通常は目立たないところに作られるトイレですが、ここではむしろトイレが主役。
江崎さんの推しポイントは手洗い場。大きい一枚鏡がガラス窓と向かい合わせでレイアウトされているため、手を洗っている最中も鏡越しに映る窓の外の絶景を楽しめます! なんとも粋な計らい。高層階の展望台ビルならではの開放感あふれるトイレです。
誰が見ても「うわ~、ええやん」と声が出てしまうようなトイレです。トイレからも空の広さを実感できます。チケットを買わないと見られない光景なので、より特別感があります。
基本情報
住所 | 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス58階 |
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川辺に佇む堂島浜の観光トイレ
大阪市役所近くの堂島川に面したトイレは、2021年に観光トイレとして新たに誕生したもの。公衆トイレらしいコンパクトさはありつつ、片流れの屋根の形が特徴的な見た目をしています。
さらに、このトイレは持続可能性に配慮した国産木材を使ったり、多様性に配慮したオールジェンダートイレを用意していたりと、昨今世界が直面しているさまざまな問題にも配慮しているのだそう。
木を基調としたあたたかみのある建物で、男性トイレ、女性トイレ、男女共用トイレは天井が最大約4.3mと広々しています。
男性トイレ、女性トイレ、バリアフリートイレ、男女共用トイレを配置しており、女性トイレにはパウダーコーナーも。男女共用トイレはジェンダーフリーに配慮した個室ユニットで、おむつ替えベッドもあります。
これから国内外からの観光客を迎え入れる大阪の気概を感じます。少し歩けば周辺にはカフェもたくさんあるので、散歩ついでに立ち寄りやすいトイレです。
このトイレは大阪府の宿泊税を活用して作られているんです。観光しているときに「トイレがない!」というのはあるあるなので、こうやって観光トイレが増えていけばいいですよね。
基本情報
住所 | 大阪府大阪市北区堂島浜1-2 |
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グッドデザイン賞を受賞! 「大阪城公園」のレストハウス公衆トイレ
最後に大阪城公園にある個性的な公衆トイレをご紹介します。ひとつのアート作品としても高く評価されているこちらのトイレ。屋根には耐候性のある鋼板を使用しており、自らの重さでたわむようになっているのだそう。
トイレに入ると人間は自然と下を向く傾向にありますが、ここでは自然と視線が上にいきます。見上げると青い空が! 一瞬トイレにいることを忘れてしまいそうな光景です。
オブジェっぽい造形なので、公園にも自然と馴染んでいます。大阪城公園にはさまざまな形のトイレがあるので、訪れる際はぜひ注目してほしいです!
基本情報
住所 | 大阪府大阪市中央区大阪城1-1 |
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大阪大学トイレ研究会が選ぶ大阪のベストトイレ「エディオンなんば本店」
大阪の数あるトイレを見てきた大阪大学トイレ研究会のみなさんが、ここは外せないと声をそろえるのが、エディオンなんば本店の2階、4階、6〜9階にあるトイレです。
これら3枚の写真は、同じ4階にある違う個室のトイレ。一つひとつ異なるメーカーのものが並んでいるんです!
通常、ショールームなどではメーカーごとに実機が展示されていることが多く、家電量販店の販売フロアに展示されていても実際に使用できるところはほとんどありません。しかし、こちらのトイレはいろんなメーカーの便器を設置しているので、実際に使い心地を確かめることができるのだそう。
Panasonic、TOTO、INAXと3メーカーのトイレが設置されています。Panasonicは陶器とは違う有機ガラス系素材の質感、静かな排水音など、家電メーカーならではの設計思想が根付いています。TOTOは陶器の造形・表面仕上げが生む高い性能に加え、水道水から作られる除菌水など高い技術力も誇ります。INAXは節水性、清掃性、洗浄力と、どれも高いスペックを持ちつつ、黒系統のカラーバリエーションもあり、トイレ空間を便器から彩ることができます。三者三様に特徴があるので、ぜひ利き酒ならぬ利きトイレに挑戦してみてください!
基本情報
住所 | 大阪府大阪市中央区難波3丁目2-18 |
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番外編! 梅田&難波・心斎橋駅近の無料で綺麗なパウダールーム
トイレと同じく発展を遂げているパウダールームにも注目してみましょう。ここからは、大阪中心部の無料で使用できるパウダールームをご紹介します。
【梅田エリア】
個室のような空間でゆったりと化粧直しができる「ハービスPLAZA ENT 6階パウダールーム 」
ハービスPLAZA ENTは阪神大阪梅田駅すぐの、エレガントな雰囲気が漂うファッションビル。6階にあるパウダールームはなんとも高級感あふれる設えで、1席ごと仕切られているので、人目を気にせずに化粧直しができます。
パウダールームの周りはエステサロンやネイルサロンなどが集まるビューティーフロアになっており、予定より早く駅に着いてしまった場合などに落ち着いた空間のなかでゆっくり化粧直しができそうです。
女性らしいインテリアにも注目! 「グランフロント大阪南館」
JR大阪駅北側のうめきたエリアにある大型複合商業施設。4つのタワーからなるこの施設には、ファッション、グルメ、雑貨などのショッピングを楽しめる約260もの店舗が入っています。白を基調とした女性らしいパウダールームは、その空間にいるだけでテンションが上がりそう。パウダールーム内に洗面台があるのもうれしいポイントです。
買い物が終わって、ディナーの約束の時間までにささっと化粧直しをするときにぴったり。女性らしい空間なので、自然とテンションが上がりそうです。
基本情報
住所 | 大阪府大阪市北区大深町4-20(南館) |
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営業時間 | 店舗により異なる |
Webサイト | https://www.grandfront-osaka.jp/ |
【難波・心斎橋エリア】
緑に囲まれた空間でメイク直しを「なんばパークス」
南海なんば駅直結の都市型複合施設で、「緑との共存」をテーマにしているため、館内にはいたるところに植物が生い茂っています。そんななんばパークスのパウダールームにはやっぱり緑がたくさん。パウダールームは3階にあります。
友人の待ち合わせまでの時間に身だしなみを整えたいというときに使い勝手の良いスポットです。仕事終わりのディナーの前に立ち寄るのもおすすめ。緑に囲まれながらの化粧直し、気持ちもリセットできそうです。
基本情報
住所 | 大阪府大阪市浪速区難波中2-10-70 |
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営業時間 | ショップ11:00~21:00、グルメ11:00~23:00※一部店舗を除く |
Webサイト | http://www.nambaparks.com/ |
まとめ
デザイン性やロケーション、便器の型番など、さまざまな角度からトイレを見ることで、日本のトイレ文化の奥深さがわかりました。2025年の大阪万博に向けては、会場のトイレを手がける建築家が公募されるなどの動きもあるようです。大阪にはこの先もユニークでダイバーシティなトイレが誕生する予感がします。
たかがトイレ、されどトイレ。わたしたちの日常に欠かせないものだからこそ、楽しく使っていきたいものです。
さっさん
トイレって、四方を囲まれた狭い空間で一人になれるからか、なんとなく気持ちが落ち着きますよね。おでかけ先のトイレに少しだけ注目してみるというのも、おでかけの楽しみを一つ増やすことにつながるかもしれません!