
そらベジガーデンハック
東京農業大学出身。野菜や植物の魅力を伝える専門家として活動し、初心者でも楽しく育てられる家庭菜園のコツを発信している。
BS朝日『有吉園芸』に出演中。著書『おうちで大収穫! 世界一カンタンな野菜のつくり方』が発売中。
植物の育て方だけでなく、その背景や魅力を深掘りし、野菜を「知る・育てる・食べる」楽しさを提案している。
YouTube:https://www.youtube.com/@sora_gardenhack
Instagram:https://www.instagram.com/sora_gardenhack
野菜くずを捨てずに活用する「リボベジ」とは?

リボベジとは、「リボーン・ベジタブル」を略した言葉で、調理に使わないヘタや根といった野菜くずから、もう一度食べられる野菜を再生することです。日本語で「再生野菜」と呼ぶこともあります。
昔から、リボベジは暮らしの知恵の1つとして各家庭で行われてきました。「リボベジ」という言葉を知らなくても、すでに取り組んだことがあるという人もいるかもしれません。リボベジにはさまざまなメリットがあることから、今、再び注目を浴びています。

僕もマンションの自宅でさまざまな種類のリボベジを育てています!実際の成功例や失敗例からご説明します。
リボベジのメリット

リボベジのメリットとしては、まず、経済的な手助けになること。特に最近、いろいろなモノの値段が上がって、野菜や果物など食品の価格も値上がりしています。もちろん、食べる野菜のすべてをリボベジで育てることは難しいですが、一部をリボベジにすることで食費の節約につながるでしょう。
また、リボベジは、限られたスペースでも取り組みやすいので、都会に住む方にもおすすめ。自宅で野菜を育てるため、自然に植物と触れ合うことになります。スーパーに並んでいた野菜や果物も、実はものすごい生命力を秘めていることに驚くでしょう。リボベジに取り組むことがきっかけになって、私たちの食卓に野菜が届くまでの背景や、環境への関心が深まるかもしれません。
自分で育てた野菜には、特別な思い入れが生まれます。手間暇かけて育てた分、愛着もひとしお。苦手な野菜も、自分で育てたものなら、きっとおいしく感じられるでしょう。

「お子さんが自由研究でリボベジに取り組んで賞をもらった」という嬉しいメッセージをいただいたこともあります。
後ほど詳しく説明しますが、リボベジには特別な道具が必要ありません。自宅にあるお肉や魚のトレー、捨てる予定だった卵のパックなどでもすぐに始めることができます。チャレンジするハードルが低いのも、リボベジの大きな魅力です。
さらに、カビが生えたり腐ったりしてしまったピーマン、トマトなどでも、種を取り出して土に植えて育てることができます。傷んでも次の収穫につなげることができるので、食品ロスの削減に役立ちます。
もう一歩進んだ取り組みとしては、使えない野菜クズなどをコンポストで肥料にして家庭菜園で使うと、生ごみの量をさらに減らすことができるでしょう。
リボベジのデメリット・注意点

ヘタや根のある野菜であれば、ほとんどリボベジができます。逆に、リボベジに向かないものは、根がない葉っぱだけの状態のもの。根っこがなければ再生することができないので、キャベツやレタスでリボベジをしたい場合は、芯を使うようにしましょう。また、生姜など暖かい地域を好む野菜は、お住まいの地域によっては難易度が高い場合もあります。
水耕栽培でリボベジをする場合は、毎日水を取り替えて衛生的な状態を保つことが重要です。水を取り替えないままにしておくと、野菜の水に接している面が傷んでしまいます。水が濁ったり、野菜の底面がぬるぬるしたりすると、リボベジに失敗してしまうことも。特に、夏場は水の温度が上がりやすいので、1日1回以上、水を取り替えるようにしましょう。

毎日水換えすれば、ほとんどの野菜でリボベジができます。上級者の方からは、「野菜や果物が増えすぎて困る」といったうれしい悲鳴をいただくことも。
リボベジの始め方・準備するもの
リボベジを始めるのは簡単。切った野菜のヘタや根、浅めの容器、爪楊枝、水さえあれば、すぐにスタートできます。早速、詳しい方法を説明しましょう。
容器はペットボトルやトレーでも大丈夫
まず、底の浅いお皿やトレーを準備します。家にある取り皿や小皿でも構いません。目安として、深さが5cm以下くらいのものが良いでしょう。
次に、爪楊枝です。爪楊枝を使って野菜を水に浮かせた状態にすることで、リボベジの成功率が格段に上がります。ニンジンを例に説明すると、ニンジンのヘタの3ヶ所に爪楊枝を指し、水を張った容器に入れるだけ。すると、爪楊枝が支えになってニンジンが容器の底から浮いた状態になります。このように「3点留め」にすることで、野菜の切り口が底に密着しないので、通気性がよくなってカビが生えにくいのです。

写真提供:そらベジガーデンハック
失敗しないためのコツは、野菜全体を水につけるのではなく、水と接する面をできるだけ少なくすること。野菜は水に触れている面から傷むので、それを防ぐためです。イメージとしては、船のように野菜が水に浮かんでいる状態を作ってあげるとベストです。
土は必要?

リボベジは水耕栽培でできるため、土は基本的に必要ありません。ただ、水だけで育てていると、養分が足りなくなってしまうため、繰り返し収穫するのが難しくなります。何度も繰り返し収穫したい場合や、本格的に育てて収穫量を増やしたいときには、土に植え替えるのが良いでしょう。
再生栽培は野菜の状態も重要
リボベジを始めて1週間程度は、もともとあった外葉などが腐って落ちていくことがあります。腐ったものをそのままにしておくと、水も腐ってしまうので、早めに取り除いて水換えをしましょう。1週間を過ぎて外葉などがなくなると、水換えの頻度を落としても大丈夫です。

野菜は毎日すごい勢いで成長します。水換えのたびに状態をチェックして、成長を実感することも楽しみの1つになりますよ!
リボベジにおすすめの野菜と育て方
初心者にも育てやすい、リボベジにおすすめの野菜を3つご紹介します。
野菜①豆苗

カットした後の豆苗の根を、水を張った肉や魚のトレーやタッパーに入れて育てます。2〜3回は収穫できるでしょう。万が一、失敗しても再チャレンジしやすいので初心者におすすめです。100円ショップなどで、ザルとトレーがセットになった豆苗のリボベジ専用の容器を売っている場合もあります。水換えがしやすいので、こうしたアイテムを使うのも良いでしょう。
野菜②ネギ

太ネギでも小ネギでも育てやすいのでおすすめです。小ネギは、輪ゴムがついたままカットして水につけておくだけで、すぐに伸びて収穫できるようになります。太ネギは根元を数cm残してカットし、爪楊枝をさして育てましょう。
そらベジさんのYouTubeでもやり方を紹介しています。
野菜③ニンニク

写真:そらベジガーデンハックYouTubeより抜粋
外側の乾燥した皮を剥き、1玉丸ごとを爪楊枝で前述の「3点留め」にして、水につけます。数日から1週間でニンニクの芽が伸びてきますが、これも切って食べることができます。ニンニクの芽は、スーパーマーケットなどであまり売っていない野菜。こうした珍しい野菜を食べることができるのも、リボベジの醍醐味です。
こちらもそらベジさんのYouTubeで詳細なやり方を紹介しています。

ニンニクは1玉ではなく、1片からでも育てることができますよ!
リボベジに関するQ&A

よくあるトラブルは?
リボベジでもっとも多いトラブルは、カビが生えたり、腐ったりしてしまうこと。原因は水温にあります。僕の経験から言うと、水温が23℃を超えると傷みやすくなるようです。水が腐ると、野菜の本体もすぐに腐ってしまいます。
そのため、毎日水換えをし、直射日光に当てないことが大切です。「野菜には太陽の光が必要だ」と思うかもしれませんが、リボベジを始めたばかりの野菜は、光があたっても水を吸い上げることができない、いわば赤ちゃんのような状態。直射日光だと刺激が強過ぎるのです。
だからこそ、「3点留め」にして風通しをよくすることが大切。僕は、リボベジをキッチンの換気扇の近くに並べて育てています。夏場は、冷房のある部屋だと水温が上がりにくいのでおすすめです。
始めるのに適した季節や場所はある?
リボベジを始めるなら、だんだん暖かくなる春のシーズンがおすすめです。春は、草木が芽や花をつけるように、野菜にとっても成長の季節です。リボベジで大きく育ったら、5月の大型連休の頃には土への植え替えもできるようになるでしょう。
また、リボベジはキッチンのシンクの近くで育てるのが良いでしょう。毎日の水換えも楽ですし、野菜を持ち運ぶ距離が短い方が、水をこぼしてもすぐに掃除できます。
野菜から根が出て安定して成長するまでは、風通しが良く、水換えが簡単なキッチンで育てることをおすすめします。
1つの野菜で何回リボベジできるの?
1つの野菜を再生して、収穫するのは3〜4回くらいまででしょう。前述の通り、水だけで育てていると栄養が足りず、それ以上の収穫は難しくなります。もちろん、土に植え替えて肥料をあげて育てると、何度でも収穫できるようになります。本格的に野菜を育てたくなったら、ホームセンターなどで野菜用の土を少量サイズで売っているので、活用すると便利です。
カビが生えてきた

写真提供:そらベジガーデンハック 全体の葉っぱがしおれたチンゲンサイ
カビが生えたら、その部分を取り除き、水換えをしっかり行ってください。風通しが良い場所に移動させるのも良いでしょう。もし、全体の葉っぱがしおれてしまったら、芯の部分まで傷んでいる可能性が高く、残念ながら失敗になってしまいます。一部の葉っぱがしおれているときは、その葉っぱだけを取り除けば問題がないケースもあります。

夏場は、1日2回以上の水換えをすると失敗の確率が下がります。
リボベジを育てて環境を考えるきっかけに

野菜を育てることは、初めての方にとっては「ハードルが高そう」、「何から始めたら良いかわからない」と感じるかもしれません。ですが、リボベジは家にある材料ですぐにできますし、ご紹介した野菜はどれも初心者にもおすすめのものばかりです。育てるうちに、可愛く思えてきてどんどん増やしたくなること間違いなしです。

リボベジに取り組むことが、植物や環境に興味を持ってもらうきっかけになると嬉しく思います。まずは気軽にチャレンジしてみてください!

さやぱん
家にある材料で簡単に始めることができそうですね!皆さんもぜひ今日調理した野菜のヘタを使って、リボベジを始めてみてはいかがでしょうか♪