肌寒い季節とともにやってくるのが、やっかいな静電気。洋服を脱いだり、ドアノブなどの金属に触れたりするときに起こる、あの「バチッ」という痛みに困っている方も多いのではないでしょうか。
静電気対策には、前もって行う予防策と、除去するための対策があります。それらに加えて、そもそも静電気とは何か、どういった原因で発生するのかといった仕組みを押さえておくことも大切です。あらかじめ静電気の性質を知っておけば、不快なショックを避けやすくなるでしょう。
※この記事は2022年10月3日に公開した内容をアップデートしています。
簡単にできる体に静電気をためない方法5選
静電気の発生を完全に防ぐのはなかなか難しいことです。ただ、前もって対策しておくことで「バチッ」というショックを減らすことはできるでしょう。ここで紹介する予防策は、簡単に取り組むことができるものばかりですので、ぜひチャレンジしてみてください。
①ゴム底ではなくレザーソールの靴をはく
静電気が起きるのは、電気を帯びている(帯電している)ときです。静電気によるショックを避けるために重要なことは、溜まった静電気を外部へ逃がすこと。一般的な家電製品などでは、アース(接地)によって余分な電気を大地へと逃します。
同じように、私たちも足を通して、大地へ電気を逃がすことができます。しかし、ゴム底の靴をはいていると、電気の流れが遮断されてしまいます。なぜなら、ゴムには電気を通さない絶縁性という性質があるからです。電気を体外に逃がせないままだと、体に電気が溜まり、静電気が発生しやすくなってしまうのです。
靴底には、ゴム底のほかにもポリ塩化ビニル(PVC)というプラスチック素材やポリウレタン(PU)などがありますが、いずれも絶縁性の素材であるため、静電気対策としての効果は期待しにくいでしょう。
そこで、静電気によるショックを予防したい場合は、レザーソール(革底)の靴をはくことをおすすめします。天然の皮革素材であれば、電気の流れを妨げることはないため、大地へと電気を逃がすことができるでしょう。また、木製の靴底も電気を通すため静電気対策としては有効だと考えられます。頻繁に静電気に悩まされているという方は、まず、靴底の素材を見直してみましょう。
②静電気の起きにくい服を組み合わせて着る
衣類の素材には、帯電しやすいものとそうでないものがあります。上図のように、綿や麻、絹といった天然素材のものは、比較的電気を帯びにくいとされています。つまり、静電気の発生を防ぎたいときには、コットンやリネン、シルクといった素材の衣類がおすすめです。
さらに、素材によっては、プラスの電気を帯びやすいものと、マイナスの電気を帯びやすいものがあります。プラスの電気を帯びやすいものは、ナイロンやウール、レーヨンなど。一方で、アクリルやポリエステル、アセテートなどはマイナスの電気を帯びやすいとされています。
静電気が発生するのは、マイナスの電気を帯びた素材とプラスの電気を帯びた素材が擦れ合ったときなどです。例えば、ポリエステルのスカートとナイロンのタイツや、ウールのセーターとポリエステルのブラウスなど、プラスとマイナスの素材を組み合わせた場合には、静電気が発生しやすいと考えられます。
逆に、プラスとプラス、マイナスとマイナスなど、同じ性質の電気を帯びた素材の組み合わせでは、静電気が発生しにくいとされています。電気を帯びにくい素材であるコットンを組み合わせるのも、有効な静電気対策だと考えられます。そのため、静電気を抑えたいときには、ポリエステルのアウターとコットンのシャツを組み合わせたり、セーターやマフラーをウールで統一したりするのもおすすめです。また、アウターだけでなく、ボトムスやミドラー(アウターとインナーの中間)など全身の素材の組み合わせにも注意を払いましょう。
さまざまな素材の衣類を重ね着することが多い冬場。コーディネートの際には、素材の組み合わせにも気を配るとよいでしょう。
③柔軟剤を使用する
静電気が起こる主な原因の一つは摩擦です。そのため、衣類同士が擦れ合うと静電気が起こりやすくなってしまいます。衣類の摩擦を減らすには、洗濯の際に柔軟剤を加えるのが効果的です。洗濯用柔軟剤には、衣類をふんわりと洗い上げるために、界面活性剤という成分が含まれています。
この界面活性剤が繊維の表面をコーティングするため、摩擦を防ぐことができるのです。また、界面活性剤は、空気中の水の分子と結合して電気を外部に流すはたらきを持っています。そのため、洗濯用柔軟剤を使うことで、衣類に溜まった電気を空気中に放出しやすくなり、静電気の発生を防ぐことが期待できます。
とはいっても、静電気を防ぎたいからと多量の柔軟剤を使用するのは禁物。適量を超えて柔軟剤を使ってしまうと、衣類の風合いが変わったり、吸水性が悪くなったりすることが懸念されます。商品のパッケージなどに記載されている用量を守り、適切に使うように注意しましょう。
④肌の保湿を心がける
通常、体に溜まった静電気は、肌の水分を通して少しずつ体外へと放出されています。しかし、乾燥肌の人は肌の水分量が少ないため、静電気を溜めやすい傾向にあるといえます。
上図のように、人間の肌は、表面から表皮、真皮、皮下組織という構造になっています。もっとも外側にある角層には、細胞がぎっしりと積み重ねられ、この間を満たしているのが「セラミド」という脂質の一種。セラミドには、肌の水分を保つ保湿機能やバリア機能があります。さらに、角層の表面は汗や皮脂による皮脂膜で覆われ、水分の蒸発を防いで いるのです。
しかし、乾燥などさまざまな原因で皮脂膜が薄くなると、セラミドに蓄えられていた水分が失われやすくなります。肌の水分量が減るとともに、静電気が放出されにくくなり、体に静電気が溜まっていきます。その結果、ドアノブなどに触れた際、溜まった静電気が一気に放電され「バチッ」という痛みが起きてしまうのです。
こうした背景から、肌を乾燥から守ることは、静電気の発生を予防することにもなります。肌を乾燥させないためには、入浴の際に体をゴシゴシと強く洗いすぎないことや、湯船の温度は40℃以下にするといった対策が大切です。また、手洗い後には、ハンドクリームなどを塗ってこまめな保湿を心がけるとよいでしょう。
⑤家の中を加湿する
体に溜まった静電気は、空気中の水分を通しても放電されます。湿度の高い状態では、静電気が自然と放電されやすいのですが、空気が乾燥するとそれが難しくなります。そのため、乾燥した季節や空間では、静電気が体内に溜まりやすいのです。このように、秋や冬に静電気が発生しやすい理由には、空気中の水分量が深く関わっているのです。
したがって、部屋の中を加湿して空気中の水分を補うことは、静電気の予防策として効果的です。加湿器を利用するほか、洗濯物を室内に干したり、水の入ったコップを置いたりして、静電気が逃げやすい環境をつくるようにしましょう。
すぐにできる静電気を逃す方法4選
これまで述べた予防策にいくら気を配っていても、「バチッ」という静電気のショックは思わぬときにやってきます。そのため、静電気に頻繁に悩まされているという方には、予防策に加えて次のような除去対策がおすすめです。
①金属以外に触って静電気を逃がす
もっとも簡単な対策方法は、ドアノブなどの金属に触れる前に、壁などに触って体に溜まった静電気を逃がすこと。ポイントは、コンクリートや木材といった金属以外の材質に触れることです。特に、木材にはわずかに水分が含まれるため、静電気を逃がす効果が期待できます。
②金属には手全体で触る
静電気の発生を心配するあまり、おそるおそる指先だけで金属に触っていませんか。実は、これも静電気のショックを受けやすい行為なのです。指先だけで金属に触れると、電気の流れる箇所が一点に集中し、急速な放電が起こりやすくなってしまいます。
そこで、静電気が心配な場合は、思い切って手のひら全体で触れるようにしましょう。できるだけ広い範囲で触れることで、静電気の音や痛みによるショックを軽減しやすいと考えられます。
③静電気除去・防止スプレーを使う
市販されている静電気の除去・防止スプレーを利用するのも有効な対策の一つ。こうしたスプレーにも、洗濯用柔軟剤と同様に界面活性剤が含まれています。このはたらきで空気中の水分を取り込み、静電気を逃がしやすくするのです。
静電気除去・防止スプレーは、その手軽さも大きな魅力。静電気でスカートが足元にまとわりつく際なども、静電気除去・防止スプレーを吹きかけるだけで改善できるでしょう。お出かけ前などに衣類にスプレーしておくと、静電気の心配を軽減できます。
④静電気除去グッズを使う
ドアや車などに貼り付けるタイプの静電気除去プレートなども販売されています。キーホルダータイプやおしゃれなブレスレットタイプのものなど、ラインナップも豊富。ネットショップのほか、100円ショップなどでも安価に手に入れることができるでしょう。使用場所に合わせて利用してみてはいかがでしょうか。
そもそも静電気とは?
そもそも、私たちの身の回りのものは、すべて電気を持っています。通常は、プラスとマイナスの2種類の電気をバランスよく持っているのですが、摩擦などによってバランスが崩れることがあります。このバランスが崩れた状態のことを「静電気」と呼びます。
一例を挙げると、雷も、もとは雲の中に溜まった静電気です。雲の中で氷の粒がぶつかり合うと、静電気が発生します。雲が電気を溜められなくなり、地面に向けて逃がそうとする際に起こるのが、落雷なのです。
静電気は電気的にバランスが崩れた状態ですので、本来のバランスがよい状態に戻ろうとする傾向にあります。この戻ろうとする動きこそが「放電」であり、私たちが感じる「バチッ」という現象です。私たちが触れることで静電気が放電を起こし、それによって流れた電流に触れ、痛みを感じるのです。
日常生活のささやかな悩みのように思われる静電気ですが、場合によっては、電子機器や装置の誤作動、火災を招くなどの恐れがあります。実際に、静電気で発生した火花に引火し、火災に発展したケースなども報告されています。このような危険性があることも知っておくと、静電気対策の重要性がよく理解できますね。
静電気が起こる原因3つ
「静電気は摩擦によって発生する」と考えている方は多いかもしれません。しかし、摩擦のほかに、接触や剥離も静電気の発生原因だとされています。静電気が起こる3つの原因について、詳しく説明します。
①接触帯電
プラスの電気を帯びたものとマイナスの電気を帯びたものは、触れ合うだけで静電気が発生します。摩擦ではなく接触だけで静電気が生まれるのは意外かもしれませんが、プラスチック製の下敷きの上に置いた紙が取りづらいといった経験はないでしょうか。まさに、これが「接触帯電」なのです。
②摩擦帯電
ものが擦れ合うことで静電気が発生することを「摩擦帯電」といいます。例えば、衣服を脱ぐときに発生する静電気は、服と体が擦れ合うことで生まれます。また、車のシートと体が摩擦することで静電気が発生し、車から降りてドアを閉めるときに「バチッ」と放電することもあります。
③剥離帯電
接触しているものを引き剥がすときに発生するのが「剥離帯電」です。例えば、食品用のラップを引き出す際のことをイメージしてみてください。芯に巻き付けてあるラップが剥がれるときに発生するのが剥離帯電にあたります。ほかにも、台紙からシールやフィルムなどを剥がす際に剥離帯電が発生することもあります。
静電気体質ってあるの?
静電気を溜めやすい人のことを「静電気体質」と呼ぶことがあります。しかし、実際のところ、いわゆる静電気体質に対する科学的な根拠はないようです。ただし、肌が乾燥していると、自然放電が妨げられて静電気を体外に逃がしにくくなりますので、乾燥肌の人の方が静電気を感じやすいということはあるかもしれません。
また、静電気の起こりやすい素材の衣服を着ていたり、部屋が乾燥したりしている場合なども、静電気によるショックを受けやすくなってしまいます。静電気を感じることが多いという方は、こうした条件に当てはまっていないかどうか振り返ってみるとよいでしょう。
まとめ:静電気は予防と除去で対策しよう
静電気対策には、予防と除去が効果的であることがわかりました。日頃から肌をしっかりと保湿しておくなどの予防策は、空気が乾燥する前から取り組むのがよいでしょう。また、金属に触れる前に壁などを触って静電気を逃がす、金属には手のひら全体で触れるといった除去対策を習慣にすれば、静電気のショックを上手に避けられるかもしれません。
ここでご紹介した静電気対策は、取り組みやすいものばかりです。今年こそ静電気の「バチッ」という痛みから解放され、快適に過ごせるよう、実践してみてください。
よしおちゃん
静電気が気になる寒い季節は、特にしっかり対策して、快適に過ごしたいですね。