本記事では、知っているようで知らない雷の発生の仕組みについて、わかりやすく解説します。
また、「雷が発生しやすいのはいつなのか」「落雷しやすいのはどういった場所なのか」といった雷の知識を持っていれば、外出先などでも雷から身を守ることができるでしょう。
※この記事は2022年5月24日に公開した内容をアップデートしています。
雷が発生する仕組みを簡単に解説!
まず、雷が発生する基本的な仕組みは、次の4段階です。イラストを用いて詳しく解説します。
1. 湿った空気が上空にのぼり、雲が発生する
そもそも、雷は雲の中で発生するものです。そこで、はじめに雲がどうやって発生するのかを簡単にご紹介します。
太陽が海や地面の水を温めると、水が蒸発して水蒸気になります。その水蒸気は空気中のちりと混ざり、「上昇気流」となって上空にのぼっていきます。天気予報などでよく耳にする「上昇気流」とは、地上にある空気が何らかの原因によって上昇することを指します。
上空は地表付近よりも温度が低いため、ちりに水蒸気がつき、水や氷の粒ができます。この小さな水や氷の粒がたくさん集まり、雲が発生するのです。
2. 雲の中で氷の粒がたくさん発生する
雲がさらに上昇すると温度がどんどん低くなり、周囲の温度が氷点下に達することもあります。そのため、雲の中の氷の粒もますます大きくなっていきます。
氷の粒がある程度大きくなると、上昇気流よりも重力のはたらきを強く受けるようになります。つまり、大きくなった氷の粒は、自身の重さのために浮いていることができなくなって下降するのです。
3. 氷の粒がぶつかり静電気が発生する
こうして下降する氷の粒同士がこすれ合うことで、静電気が発生します。このとき小さな粒は正の電荷(+)、大きな粒は負の電荷(-)を帯びます。そして大きな粒の方は重たいため、雲の下の方へ移動し、小さな粒は上昇気流によって上へ移動していきます。
そうすると、雲の下の方では負の電荷(-)が、雲の上の方では正の電荷(+)がたまっていきます。また、雲の底に集まった負の電荷によって、地面は正の電荷(+)を帯びるようになります。
4. 雷が落ちる
雲にたくさんの電気がたまっていき、最終的に、雲はためられなくなった電気を地面に向けて逃がそうとします。このとき、雲の下部の負電荷(-)が地面の正電荷(+)に放電を行います。この現象が「落雷」です。一方で、地面ではなく雲の上部の正電荷(+)に向けて電気を放つことを「雲放電」といいます。
1回の雷が持つ電気のエネルギーは莫大で、電圧にすると約1億ボルトといわれています。私たちが家庭で使う電気の電圧は約100ボルトですので、この100万倍に相当します。落雷によって大きな被害が発生するのもうなずけるほどの威力だといえるでしょう。
なぜ雷はゴロゴロと鳴る?
雷が鳴ると、ゴロゴロという低く大きな音が発生します。
この音は、雷の通り道である空気が突然熱せられ、膨張することによって発生するものです。本来、空気は電気を通さない性質を持っていますが、雷の持つエネルギーがあまりにも巨大なため、空気を引き裂いて地面に到達しようとします。このときに発せられるのが、あのゴロゴロという音です。
雷が通るときに周りの空気がどれくらい熱くなるのかというと、一瞬で約30,000℃にまで達するとされています。これは、約6,000℃とされる太陽の表面よりも約5倍も高温なのです。
凄まじいエネルギーを持った雷が、周囲の空気を熱し圧力を高めるため、空気は一気に膨張します。この衝撃が空気に伝わって、私たちの耳には「ゴロゴロ」という音に聞こえます。すぐ近くで落雷があると「バリバリ」と激しく聞こえますが、遠くの雷の音はいろいろなものに反響するため「ゴロゴロ」と聞こえるのです。
雷にも種類がある!?
実は、雷と一口にいっても、さまざまな種類があるのです。中には、上空ではなく地表付近で発生する雷もあります。多様な5つの雷をご紹介します。
熱雷(ねつらい)
夏などに地表付近が太陽によって熱されると、上昇気流が発生します。この上昇気流によってできた積乱雲による雷が「熱雷」です。夏の夕立の多くが、この「熱雷」によるものだとされています。
界雷(かいらい)
季節の変わり目によく発生するのが「界雷」です。季節の変わり目には「前線」が発生することがあります。前線とは、暖かい空気と冷たい空気が接することによって生まれるもので、前線近くでは、暖かい空気の中にある水蒸気が、冷たい空気によって冷やされることで雲ができやすくなります。
界雷は、この前線付近で形成される雷雲によって発生する雷のことを指します。寒冷前線の近くで、冷たい空気が暖かい空気を押し上げる上昇気流によって発生することが多いとされています。
渦雷(うずらい)
「渦雷」とは、台風などの発達した低気圧の中心付近で発生する雷のことです。低気圧の中心には、周囲から流れ込む気流によって通常より強い上昇気流が発生することがあります。渦雷は、この上昇気流によって発生します。
低気圧は気温が高いほど勢力を長時間維持するため、低気圧の移動に伴って渦雷の被害が広範囲に及ぶこともあります。
火山雷(かざんらい)
「火山雷」とは、火山の噴火によって生じる上昇気流による雷です。噴火によって放出される水蒸気だけでなく、噴石同士がぶつかってできた静電気によっても発生することがあります。
参考:AGU「Charge mechanism of volcanic lightning revealed during the 2010 eruption of Eyjafjallajökull」
冬季雷(とうきらい)
「冬季雷」とは、冬に発生する雷のことです。夏に多い雷が冬に発生するのは世界的にも珍しい現象であるとされており、日本では、秋田県から鳥取県などの日本海沿岸の地域で多く発生しています。
大陸からの冷たい季節風と、暖かい海流との温度差によって水蒸気を多く含む雷雲が低空に発生し、雪とともに落ちる雷です。
夏の落雷と異なり、冬季雷は地面から空に向かって上向きに放電されることがあるのが特徴です。冬季雷のエネルギーは夏の雷より大きく、ときには夏の雷の100倍以上のエネルギーを発することもあるといいます。
雷が落ちやすいのはどんな場所?
屋外で雷が鳴ったときのために、覚えておきたいのは雷が落ちやすい場所。どのような場所に雷が落ちやすいのかを解説します。
高いところ
雷雲の近くに高いものがあると、雷はその高いものに引き寄せられて落ちやすいという性質があります。こうした特性を利用し、雷を導くのが避雷針です。避雷針は、落雷による電流を地面に逃すため、建物の地中深くまで導線が設置されています。日本では今、原則として、高さ20mを超える建物には避雷針などを設置することが法律で定められています。
周囲に高いものが何もない場所
グラウンドやゴルフ場、屋外プールなどの周囲に高いものがない場所や、山頂や尾根などでは人に落雷する可能性が高くなります。こうした場合には、建物や屋根のある自動車の中などに素早く避難するようにしましょう。
雷から身を守るには?
雷は前述の通り、高いところや高いものが何もない場所に落ちやすい性質があります。もし、屋外にいるときに雷の音が聞こえたり雷の光が見えたりしたら、まずは建物や車の中などの安全な場所に早めに避難してください。
屋外を移動するときは、近くの電柱や煙突、大きな木などにはなるべく近づかないようにし、傘をさしている場合は、かがむなどして傘の先をなるべく低くするように心がけましょう。
広場やゴルフ場など、周囲に高いものが何もない場所や、山頂などの高い場所にいるときはできるだけ低い姿勢で、すみやかに安全な場所に避難するようにしてください。
建物や乗り物の中は、電気が壁を通して地面に吸収されるため安全ではありますが、電気器具や金属から感電する可能性もあります。感電リスクを避けるため、電気器具や天井、壁などから1m以上離れると良いでしょう。
さらに、雷の発生が予想されるタイミングや場所をあらかじめ知っておくことも大事です。気象庁の「ナウキャスト」というWEBサイトでは、雨雲や雷雲、竜巻などの発生状況を発信しています。こうしたWEBサイトを参考にすることも、雷から身を守るための有効な対策だといえます。
【コラム】雷で電気製品が壊れる!?
落雷があった場所やその近くでは、短時間ですが「雷サージ」という大きな電圧や電流が発生することがあります。この雷サージが電線や通信線を通して住宅の中に流れてくると、家電製品を壊してしまう可能性があります。
特に、近年は家庭で使う家電製品の数や種類が増え、インターネット回線とつながっている機器も多くなっています。そのため、雷サージが発生すると被害が及ぶ範囲が大きくなると考えられます。
雷サージを完全に防ぐことは難しいのですが、雷をブロックする保護機能付きの電源タップを利用することが有効とされています。こうした製品を活用し、雷が本格化するシーズンを迎える前に対策しておくと良いでしょう。
まとめ:雷が発生する仕組みを知って正しく身を守ろう
自然現象である雷は、莫大なエネルギーを持ちます。雷が落ちやすい場所や条件を知っておくことは、身を守るうえでとても大切です。
また、落雷が多く予想されるシーズンには、気象庁などが発信するWEBサイトをこまめにチェックしておくのも有効でしょう。雷の特性や雷サージの可能性を正しく知り、必要な対策を取って安全に過ごせるように心がけましょう。
みなぱん
私もこのように記事を書くことで、身を守る方法だけでなく、パソコンや電子機器にも雷対策をすることの重要性を改めて感じました!