後半では先輩社員も交えて、電力の安全・安定供給への取組みや火力発電所の未来について語ります。残暑の厳しいこの季節、エアコンが欠かせない日々が続いていますが、「電力不足は大丈夫?」と気になる方も多いのではないでしょうか。若手社員が活躍する姫路第一発電所の取組みに、ぜひ注目してください!
巨大な発電設備を安全に動かし続ける|発電課・嵐
1955年の運転開始後、時代に先駆けた発電システムの導入や出力を高める取組みを積み重ねてきた姫路第一発電所(通称:姫一)。今では、発電設備2ユニットが稼働しています。
そんな発電所のなかで、入社3年目の嵐は、発電設備の運転監視や起動停止操作、現場での巡視点検などを担っています。さっそく働く様子を覗いてみましょう!
嵐「こちらは5号機で、発電機やタービンなどが組み込まれています。姫一に配属されてすぐ、この巨大さと細かな設備の多さに驚いたのを覚えています」
嵐「巡視点検では、設備トラブルに繋がる些細な違和感や変化を見逃さないように、発電ユニットを一つひとつ細かく確認するようにしています。決められた点検業務をただ事務的にこなすのではなく、わずかな異常も見逃さないよう丁寧に進めています」
万全の点検をしていてもトラブルへの備えは重要です。トラブルが発生した際、どのように対処するのでしょうか。発電所全体を監視・制御する中央制御室を案内してもらいました。
嵐「ここでは発電ユニットの運転監視や起動停止操作を遠隔で行っています。トラブルが発生すると警報が発報するので、現場に駆けつけて設備の状態を確認します。警報の内容によっては各部署から先輩や仲間たちが集まり、分担して原因究明・解決策検討・事象の解決、と進めていきます。ただ正直に言うと、警報を聞くたび胸のバクバクが止まりません……(汗)。慣れようにも、トラブルが起きないことには経験できませんし、そもそもトラブルが頻繁に起こるような現場ではないですから。そのような、いざ! という時に役立てるように、シミュレーター設備で訓練するなどして備えています」
嵐「また、トラブルを未然に防ぐ取組みもしています。『PI System(パイシステム)』という情報管理システムを導入して、さまざまな運転に関するデータを組み合わせて分析できる独自のシステムを構築しました。その活用によって、人間の五感では見つけることが難しい、ごくわずかな変化をキャッチできるようになりました」
身体も頭脳もフル回転させて、発電所の安全・安定運転を支える嵐。働く上で、一番大切にしていることを尋ねてみました。
嵐「会話が一番大切です。元々話すことが大好きなんですけど、コロナ禍入社で先輩たちと会う機会も少なく不安で……。その反動なのか、コロナ禍が収束し、身近で働けるようになってからはめちゃくちゃ会話してます(笑)。直接指導していただけることがありがたいですし、チームワークも強まっていると思います」
発電所の隅々まで知り尽くして守る|保修課・石井
次に訪ねたのは、入社2年目、保修課の石井。保修課では、発電設備のうち、電気設備の点検や修繕を行うほか、トラブルの原因究明や再発防止にあたります。また、定期修繕工事や新たなテクノロジーの導入検討を推し進めるのも大きな役割の一つ。発電全体の設備、技術への理解が求められる業務です。
石井「私たち新人が、まず初めにやることって何だと思いますか? それは、現場を隅々まで見て、各設備の役割とそれぞれの関係性を徹底的に頭に叩き込むことなんです」
石井「トラブルが起きた際に、その原因箇所に“アタリ”をつけられたら初動対応が早くなります。さらに、次はどこへ影響が出るか? ほかの発電所でも同様の事象が起こりうるか? と予測して情報連携することで、姫一だけでなく関西電力の火力発電所全体でトラブルや事故を減らすことができます。こうした対応を可能にするためにも、設備がどのように連携されているか隅々まで理解することが私たちには必要なんですよ」
石井「これから、各装置を構成する電動機や防災に関する監視装置などいくつかの設備をメインで任せてもらえるようになりました! 一人前と認められたようで嬉しいです。今まで以上に責任を持ってしっかり管理したいと思います」
持ち前の探究心も発揮し、発電所内を隅々まで調べ尽くす石井。取材時には自ら現場の案内役を買って出てくれました。広大な発電所内の移動は、入り組んだ通路や長い階段があり一苦労。汗が止まらない撮影クルーを横目に、石井は一糸乱れず頼もしい笑顔。「姫一は緑に囲まれているので、キツネやタヌキも出るんですよ(笑)」と豆知識まで教えてくれました。
夏場の電力不足を防ぐ! 供給力を確保する火力発電所の役割
ここからは、嵐と石井、それぞれの先輩社員である安水と栗田も交えてインタビューを。夏場にも電力不足を起こさないための供給力確保に向けた取組みや、火力発電所の未来について聞いてみました!
―夏場や冬場の電力需要はどんどん高まっているように感じますが、そうしたなかで火力発電はどういった役割を担っているか解説をお願いします。
栗田「現在、電力供給のベースには原子力発電があり、電力需要がピークになる時間帯に合わせて火力発電を動かしています。電気は需給と供給を一致させる必要がありますので、電力が不足しないように、火力発電は必要な時に運転できるようにしておくことが一番の役割になります」
―原子力発電だけでなく、再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電など)の活用も増えていますが、それだけでは対応しきれないのでしょうか?
栗田「太陽光や風力は天候によって発電量が大きく左右されますから、需要に合わせた供給力を常に確保しようと思うと、火力発電の稼働が欠かせないんです。自然に左右されずに電力を供給する、という最後の砦のような部分を任されているのが、火力発電だともいえますね」
―安定供給を実現するために、姫路第一発電所で行っていることを教えてください。
石井「保修課の立場から言うと、トラブルに即座に対応できる備えが大切ですね。修理に必要な部品がすぐに手に入らないこともあるので、先読みしてあらかじめ準備しておくようにしています」
栗田「年数が経っている設備は、定期点検のサイクルを早めたりもするよね。同じことをやっているだけでは良い状態を保てないので、早めに対策を打たないといけません」
嵐「日々の監視や点検を怠らずトラブルの兆候を見逃さないことが、供給力確保に繋がるのだと思っています。現場を歩いてみないと分からないことはたくさんあるので、五感を働かせて早めに見つけるよう努めています」
火力発電所の未来はどうなる? 日本が抱える課題や若手への期待
―火力発電は二酸化炭素(CO2)を排出することで環境に悪いという印象を持たれている方もいると思います。2050年のカーボンニュートラル実現を目指す上で、火力発電の未来をどのように考えていますか?
栗田「発電量が調整しやすいという火力発電のメリットは、天候によって発電量が左右されやすい再生可能エネルギーのデメリットをカバーするために今後も必要とされ続ける、というのが私の考えです」
石井「私、実は、火力発電からエネルギーの未来を変えたいと思って関西電力に入社したんです。高校の修学旅行でカンボジアに行ったときに、街中の電線が何十本も絡まり合っているのを見て衝撃を受けたことがきっかけで、大学でもエネルギー問題を研究していくうちに『火力発電にはこれから大きく変革していく可能性があるんじゃないか?』って思って。例えば、水素燃料をはじめとしたCO2を排出しない火力発電の方法も変革の一つですよね。火力発電をなくす・なくさないではなく、どのように進化させていくべきか、大きな夢を抱いています」
―火力発電そのものはあり続けるけれども、あり方は変わっていくだろう、ということですね。その他にも、未来の火力発電所に必要なものはありますか?
嵐「そうは言っても、僕は、火力以外の発電方式が主力化していく時代の流れがあると感じます。労働人口も減っていくので、火力発電の現場においても人手不足は大きな問題になっていくのではと……。その対策として、現場の巡視点検にロボットなどが活用できるようになっていくと良いですね。ほかの発電所では採用されているみたいです」
安水「姫一だと、先ほどお見せしたPI Systemが人の手を助けてくれていますね。ロボットと働く未来か……嵐くんはおしゃべり好きだけど、同僚がロボットでもやっていける?」
嵐「ロボットとおしゃべりするので平気です(笑)」
―いずれロボットが活躍する未来が来ようとも、人間らしい働きぶりは欠かせないものだと思います。先輩方から見て、若手ふたりの成長はいかがですか?
安水「嵐くんは自分で考えて動いてくれるので、チームメンバーもその頑張りにすごく助けられています。自分自身の3年目を振り返っても、こんなに動けていなかったな、というくらいの働きぶりを見せてくれています。とても頼もしいですよ」
嵐「嬉しいです! 先輩方がどんな仕事でも自分から率先して動くような方たちで。それをすごく尊敬していて、僕も負けじと動かなければと思っています」
―率先して行動できる若手社員がいると、現場全体の士気も上がりますよね! 栗田さんから見た石井さんはいかがですか?
栗田「仕事を吸収しようという姿勢を感じますし、すごく向上心が高いです。基本的なことですが、笑顔と挨拶がしっかりできているのも良いところですね。姫路第一発電所では“心理的安全性を向上するポジティブなコミュニケーション“に取り組んでいるのですが、それを体現されてます。これからも笑顔で突き進んでいってほしいなと思います」
石井「ありがとうございます。栗田さんをはじめ先輩方は私にとって先生のような存在で、本当にいつも助けられているなと感じます」
―最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。
嵐「日々の業務の中で少しでも何かを得よう、そして、職場の役に立ちたいと思い、プロフェッショナルを目指して頑張っています。まだまだ分からないことが多いですが、身近に電気のある当たり前の日常を守るため、さまざまな経験を積み重ねながら火力事業の第一線である火力発電所で誇りをもって業務に取り組んでいきたいです」
石井「ゼロカーボンに向けて全社一丸となって進んでいる今、火力発電は変革期の真っ只中にある非常に魅力的な電源であると感じています。安全・安定供給への使命感を持って、日々楽しく業務に携わっています。個人的には、私のような女性技術者が今後増えていくことを期待しています。徐々に女性が働きやすい職場が整備されてきており、身近にいる先輩は最前線でご活躍されています。私も1日も早く職場の中心戦力となれるよう、貪欲に知識を吸収していきたいです」
太陽光や風力といった再生可能エネルギーが注目される中、天候に左右されずに電力を供給する“最後の砦”として活躍し続ける火力発電所。その現場を支えているのは、向上心を持った若手社員たちでした。彼らのように心に火を灯した若者がいる限り、エネルギーの未来は明るく照らされていくことでしょう。