「えっ!?」と思われるかもしれませんが、関西電力グループではエビの陸上養殖をしています。2020年に「海幸(かいこう)ゆきのや合同会社」を設立。取り扱っている安心安全な国産エビは、既に高級レストランでも振る舞われているほか、お家でも気軽に食べていただけるよう加工商品の販売もスタートしました。

なぜ、関西電力が“エビの陸上養殖”なのか?知られざるその舞台裏をご紹介しましょう。

画像1: 関西電力がエビの陸上養殖!? 持続可能な水産業とビスクスープの、おいしい関係

関電にはエビに関する技術が。エビの陸上養殖が実現できた経緯

販売中の加工商品のひとつが、濃厚で豊潤な幸えびのビスク。手掛けたのは、六本木でミシュラン2つ星獲得の実績を持つ「Restaurant Ryuzu(レストラン リューズ)」のオーナーシェフ・飯塚 隆太さんです。

仕掛け人である海幸ゆきのや社長・秋田亮とともに、この新しい取り組みについて語ってもらいました。

画像: 海幸ゆきのや社長・秋田 亮

海幸ゆきのや社長・秋田 亮

秋田「もともと私は、電力資機材調達の仕事が長く、食料分野についてはド素人でした。イノベーションラボという新しい部署に配属されたのですが、そこで新規事業として陸上養殖に着目したんです」

イノベーションラボは、当社グループの存在意義「『あたりまえ』を守り、創る(Serving and Shaping the Vital Platform for a Sustainable Society)」の実現に向け、社会にインパクトを与える事業を送り出すことがミッションです。新規事業を模索する中でもエネルギーなどの中核事業が重なり合うところに、関西電力グループのテクノロジーをはじめとする経営資源をフル活用し、未来に役立つことをしよう! という想いをもって、さまざまなアイデアが交わされています。

秋田「世界の天然漁獲量が減少するなか、養殖に注目が集まっています。海面養殖も素晴らしい技術ですが、異常気象で被害を受けたり、将来的な海域環境への負荷やマイクロプラスチックへの懸念が指摘されたりしています。また、水産業の就業人口も減少しています。これらを一度に解決できるのが、陸上養殖です。

世界的な人口増加によりタンパク質の需要と供給のバランスが崩れる“タンパク質クライシス”解決の一助になるかもしれません。陸上養殖は、気象影響を受けにくく安定生産できるうえ、業務形態が工場勤務に近いので就業者を集めやすく、上手にやれば海の魚も効率的に育てられるのです」

画像1: 関電にはエビに関する技術が。エビの陸上養殖が実現できた経緯

ー水産業の抱える課題だけでなく、人口増加にも関わる話だったんですね。でも、それと関西電力との関係が全く見えません……!

秋田「もともと関西電力では、大阪湾の環境浄化プロジェクトを推進していました。ヘドロを浄化するには光合成細菌が有効なことを発見したのですが、この細菌をエビに与えると成長を促進できることを見つけた研究者がいたんです」

画像2: 関電にはエビに関する技術が。エビの陸上養殖が実現できた経緯

ーそこに目を付けたんですね! 

秋田「そうなんです、社内リソースの活用になるんですよ。そのうえ、養殖ならば水質・温度管理が可能。育った場所や食べた餌などのトレーサブル(追跡)も容易にできるのです。これらの推進には、IoT、DX、リスクコントロールなど関西電力が培ってきた技術の応用も利きます。とはいえ、これだけでGO!とはなりません」

ーたしかに……異業種すぎて、見通しが立ちにくい気がします。

秋田「そこで、新潟で『妙高ゆきエビ』を陸上養殖しているIMTエンジニアリング株式会社と手を組みました。実績ある企業の育成技術を活用し、販路も一部見通せたことで、採算性の解決にも目処が立ちました」

画像: 妙高工場の水槽

妙高工場の水槽

幸えびに注目していたシェフとの偶然の出会い

ーこうしてスタートした幸えびづくり。苦労したエピソードはありますか?

秋田「はじめから大変でした(笑)。タイミング悪くコロナ禍に突入してしまい、外食産業からの需要が低迷。そこでお客さまにもっと届くように、新たなプロジェクトをスタートさせたんです」

画像1: 幸えびに注目していたシェフとの偶然の出会い

秋田「実はコロナ禍以前から、加工商品は考えていて。養殖魚に特化したEC(ネット販売)に強みを持つ『クラフトフィッシュ』というブランドからリリースすることを目指しました。我々のエビを、加工して別の商品にする取り組みです」

ーあえて加工商品にした理由はありますか?

秋田「エビの身を加工する際、頭は切り落とされ廃棄されるケースが多いです。水質や餌にこだわり大切に育てた幸えびは、身はもちろん絶品なんですが、実は頭や殻も安心しておいしく食べていただけるんです。頭や殻にはカルシウムやビタミンEに加え、キチン、キトサン、アスタキサンチンといった抗酸化作用や疲労回復、アンチエイジングに効果があるといわれている物質が多く含まれます。

そこで、何とかこの食品廃棄物を美味しく食べることができないかと考えたんです。その相談をクラフトフィッシュへ持ちかけたところ、提携しているスターシェフである飯塚さんと出会いました」

ーちょっと待ってください!「エビの頭」って商品を誰が買うんですか!?

画像: Restaurant Ryuzu オーナーシェフ・飯塚 隆太さん

Restaurant Ryuzu オーナーシェフ・飯塚 隆太さん

飯塚シェフ「エビの頭そのものをご家庭の料理で活かすのは難しいですよ。こういった甲殻類のスープを取るのはフレンチのテクニックです。そこから着想を得てこの『幸えびの濃厚ビスク」に繋がりました」

秋田「実は飯塚シェフは、新潟出身なんです。もともと提携先の妙高ゆきエビをご存じだったのも偶然の奇跡でした。陸上養殖はSDGsの観点でも注目されていたことから、ぜひ取り組みましょうという話になったんです」

画像2: 幸えびに注目していたシェフとの偶然の出会い

ーそれで、おいしいビスクが出来上がったんですね。

飯塚シェフ「とはいえ、作る人によって味が変わるのが料理の世界。工場に任せるならば再現性の高いレシピを作らなければなりません。何度か試作して、確実なものにしていきました。自分の中では試作を重ねるのは珍しいことで、それだけ想い入れもあります」

アレンジいろいろ。試行錯誤を重ねたレシピの味

飯塚シェフによると、ビスクはフレンチの伝統的なスープなんだそう。甲殻類の頭や殻と、ニンジンやトマト、セロリなどの香味野菜をブイヨンで炊いて、こして旨味を抽出した濃密な味わいが特徴。たしかに、エビは風味を高めたりコクを出したりするのに向いていそうです。

飯塚シェフ「本来ビスクは香味野菜を炒めて煮込むのですが、レシピを工場に提供して作ってもらうとなると、なかなか思い描いた味になりません。よりおいしいものにするための試行錯誤が必要でした。結果、雪下ニンジンのジュースや、臭みを飛ばすオレンジジュースを使用することで、安定して味を再現させることに成功したのです」

画像: アレンジいろいろ。試行錯誤を重ねたレシピの味

秋田「何度か試食しましたが、私の感覚だと最初からおいしかったんです。そこからさらに味を高められていたことに驚きました」

飯塚シェフ「おいしいビスクは、エビのえぐみや臭みを感じません。エビの旨味が濃縮したなかで、塩味との繊細なバランスが求められます。シャバシャバで水っぽいなんてもっての外ですが、一方で煮詰めると苦みも出るので絶妙なラインでの見極めが必要です」

秋田「非常に濃厚ですよね。私はパスタソースにアレンジして楽しみました」

ーアレンジもきくんですね!? その話、詳しく聞かせてください。

飯塚シェフ「そうですね。クリームを入れてパスタソースにしてもいいですし、クリーム少しとバター、オリーブオイルやパルメザンチーズを加えるとさらに濃厚になります。ベースがちゃんとおいしいので、アレンジもききますよ」

飲み飽きずに楽しめる、ティーカップ1杯分の120gでパッケージ化したのもポイントだそう。このように、「幸えびの濃厚ビスク」は考え尽くされた商品なんです!

このSDGsへの取り組みは、持続可能な産業でもある

ーさらにいえば、素材であるエビそのもののポテンシャルも気になります。お客さまからの感想はどうですか?

秋田「おかげさまで味に関しては、ネガティブな声は一切ありません」

ー自信が感じられますね!

飯塚シェフ「添加物不使用、しかも新鮮なまま瞬間冷凍されていて、クオリティは高いですよ。我々の感覚としては『天然信仰』のような、天然の方がいいというイメージが先行しがちですが、そうも言っていられない時が来ることを意識すべきとも感じています」

飯塚シェフも「おいしい」と太鼓判を押す、ゆきのやの幸えび。社会や環境の課題解決に結びついていることを知れば、さらに味わいが深くなることでしょう。

飯塚シェフ「今回のプロジェクトは、雪下ニンジンなど意外な組み合わせを試せたことで、バリエーションや考え方が拡がる刺激的なものでした。廃棄される水産食材が加工商品に生まれかわる取り組みが増えてくれたらいいですね」

画像1: このSDGsへの取り組みは、持続可能な産業でもある

秋田「通常は廃棄物として処理されるエビの脱皮殻にも栄養素が多く含まれます。当社の養殖技術では脱皮殻を新鮮なまま取り出すことができ、これは日本では唯一、おそらく世界でもほとんど例はないと思います。この脱皮殻も加工商品に生まれかわらせたいですね。

上質なエビの身を美味しく食べていただくのはもちろんですが、他社ができない、お客さまが気づいていないところにも実は価値があると思っているんです。これを新たな『あたりまえ』として創造していきたい。

エビの生産は、もっと大きな社会課題解決のための第一歩です。陸上養殖事業の幅も深さも拡げて、水産業のあり方を変え、タンパク質を安定供給し、人々の健康、その先にある持続可能な地球環境にまで貢献する。

こういった世界観の実現を通じ、経営理念の実現に一歩でも近づきたい。そのために、飯塚さんには今後もご協力いただきたいと思います」

画像2: このSDGsへの取り組みは、持続可能な産業でもある

秋田は、この一連の取り組みは環境意識の高い企業からも注目を集めていると、手応えを語ります。実際に、そういった企業の社員食堂でも、幸えびを気軽に食べていただく取り組みを進めています。これを持続させるためにも、SDGsに先進的に取り組み、同時に単純な社会貢献ではなく事業として成立させる必要もある。

サステナブルな社会に向けた取り組み自体が、サステナブルであるべき。海幸ゆきのやは、その理想に向かってさらなるチャレンジを続けます。

画像3: 関西電力がエビの陸上養殖!? 持続可能な水産業とビスクスープの、おいしい関係

だいちゃん

一流シェフも認める「幸えび」、皆さんにもぜひ食べていただきたいです!

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